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絶対貧困〜日本で工場を運営すると「貧困層」を生みだし、海外で運営すると「貧困層」を救い出すことになるというどうしようもない現実

世界の5人に1人は、1日1ドル以下で生活している
政界の2人に1人は、1日2ドル以下で生活している

先進国では平均年収の半分を下回る人を「貧困」と呼んでいるが、世界にはそれどころではない「絶対的な貧困」が存在しているのである。

アジア、中東、南米で街を歩いていると、道ばたには沢山の子どもや赤ん坊、障害者が施しを受けようと、道ばたの人に手を伸ばしている。
こんな物乞いの人たちと作者自ら一緒に暮らし、その生活の様子、金が回る道筋などを解説したのが本書です。



貧困=悲惨という、大変貧相な形式でしか語れない既存のドキュメンタリーと違い、その生活の様子をユーモラスに描いたり、その経済活動を冷静に描いたりと、非常にバランスが取れた形で解説してるところがこの本の一番素晴らしいところです。

例えば、物乞いの中にもヒエラルキーがあり、
重度障害者 > 軽度障害者 > 赤ん坊 > 子ども > 老人 > 健常者 という順番で一日で稼げる施しの量が変わってくるのです。
従って、重度障害者は路上ではなく屋根のあるバラックで暮らすことが出来、結婚相手も見つかりやすいという非常に生々しい実態も見えてきます。

さらに、この実態を踏まえて様々なビジネスも発生しており、レンタルチャイルドといった、子どもを1日いくらで貸し出すということが恒常化していること。そして、障害者の子どもだとレンタル料が高いといった、冷静すぎるビジネスの実態も見えてきます。

本書では、それと同時に、非常に寂しい生活を送っている路上の物乞いは、レンタルチャイルドに感情移入してしまい離れられなくなることを危惧して数ヶ月に一度子どもを替えるなどというウェットで悲しい現実も伝えるなど、非常にバランスが取れているのです。

この様な物乞いだけでなく、売春や廃品回収、人力車などの貧困ビジネスも、そこには経済の原理原則に則ったルールが形成されており、それに従ってお金が回っているという現実があります。
この様子は、我々先進国と全く変わることがなく、資本金や権力を持っている人が金を稼ぎ、技能や選択肢の少ない人が貧困になるという悲しい現実を突きつけられます。
そして、貧困の底辺にいる人は非常に選択肢が少なく、それ故に1日1ドル以下といった絶対貧困に追い込まれるわけです。

それを考えると、先進国の人間が恵まれているのは選択肢が多いことです。

ほとんどの人が日本語を喋れ、文字を読み書きでき、計算が出来るため、店員や事務職などの仕事ができます。健康状態が極端に悪い人以外は肉体労働も出来ます。もちろん(やりたくはないだろうけど)売春や物乞いという選択肢もあります。

また、多くの貧困者が、密入国などの手段を使い海外にどんな仕事ができるかも分からないのに出稼ぎに行っていますが、日本人なら予め仕事を見つけた上で合法的に出稼ぎに行くことも出来ます。

「だから日本人は甘えてる」何てことは言いませんが、(私がいつも言っていることですが)世界はだんだん公平に近づいており、この様な「絶対貧困」な人たちが少しずつ豊かになり、先進国の人の選択肢が少しずつ狭まっているのが現在です。

そして、この様な「絶対貧困」の人が最も求めているのは「安定的な雇用」です。
自衛隊がイラクに行った時に、現地人に一番求められたのが「日本の会社の工場を作って雇用を生んでくれ」だったことから分かるように、おそらく日本が彼らのために一番役に立てるのは、工場を作って現地人を雇用することです。

日本で工場を運営しても、そのコスト構造から賃金は低くなり、法律から3年以上の長期の労働契約は出来ません。労働者の確保は購買部の仕事であり、期間工はプライドを喪失し、さらに(相対的に)貧困層と呼ばれるレベルになってしまいます。
日本の経営者が日本で工場を運営すると生み出してしまうのが「貧困層」なわけです。

これに対し、東南アジアに工場を作った場合、生み出されるのは、安定した雇用により「絶対貧困」から抜け出すことの出来た中間層です。
従業員から喜ばれ、国からも喜ばれ、さらに現地での消費を喚起し、自社の売り上げを増大させることも出来ます。

日本国内で工場を運営すると「貧困層」を生み出すのに対し、海外で工場を運営すると「貧困層」を救い出すことが出来るのです。

もちろん、日本企業の工場が海外へ移転することで、そこで働いていた従業員は職を失い、その人に選択肢が少ない場合は「絶対貧困」に陥ってしまうわけですが。

この流れは、現在進行中で起こっていることであり、抗うことが非常に難しい流れです。その現状をより深く理解するためにも、自分が今いるところの下にはどんな生活があり、自分の生活の下落余地があとどれくらいあるのかを知るためにも、この本はお勧めです。

その底なしっぷりに絶望すると同時に、そんな底なし沼の底でも人は生きていけるというものすごく小さな希望も生まれてきます。

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