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法人税は0%でいい。~資産の9割を高齢者が保有する時代に正しく税金を取る方法~

先日、2016年度の法人税が1.23%引き下げられると報じられた。最近は消費税増税で話題はもちきりだが、もう一つ話題になっているのが法人税だ。2017年度にはさらに引き下げ、現在32.11%の実行税率が20%台になるという。

法人税の引き下げは企業優遇だと極めて厳しく批判されることも多いが、法人税は本来0%であるべきだ。

■法人税が0%でいい理由。


法人税は法人に発生した利益(所得)にかけられ、法人所得税、法人住民税、事業税等も含めたものが一般的に法人税と呼ばれる。利益が出ているのだから税金を取られるなんて当たり前、と思われがちだが、実際には法人に課税する根拠は無い。

法人とは商取引を円滑にするために法的に人格をあたらえられた存在に過ぎない。犬や冷蔵庫とは契約できないのに、会社とは契約が結べる。この違いは会社に「法人」という人格が認められているからだ(契約は本来人間同士でしか結べない)。

しかし、そこに税金をかける必要はない。法人に発生した所得は、いつかは誰かの給料や株主への配当、あるいは消費・投資で消えていく。したがって、個人所得・配当・消費に税金をかければ課税から逃れる事は出来ない。法人税を払った後でさらに税金を掛けるのは二重課税になる。法人に課税すべきか否か、これは決して特殊な話ではなく昔からある税金に関する論争の一つだ。したがって、法人税が低いのは当然、ゼロにするのが最も正しい、というのも一つの考え方という事になる。

金融機関を10社以上渡り歩き、転職に関する本も出している経済評論家の山崎元氏は「会社はオレの事をどう評価しているのか?といった考え方は正しくない。判断を下しているのは『会社』ではなく、人間だ」と指摘する。会社はビジネスを円滑に進めるための器でしかなく、それ自体は実態の無いものであることは明らかだ。

■法人税の収入は10兆円ほど。


法人税収の推移は、バブル期の19兆円をピークにその後は一時的な上昇もあったものの、おおむね下降線をたどり、平成27年度は11兆円を見込む。ここ数年の平均で見ると、10兆円程度だ。これは消費税で言えばたったの5%程度であり、5%消費税を上げれば法人税はゼロに出来る。徴税の手間も考えれば、どちらが経済にプラスか答えはおのずと出るだろう。

経営学者の大前研一氏も20%台の法人税など話にならない、と指摘する。法人税の引き下げで海外からの投資を呼び込むというが、その程度で外国企業が大挙して押し寄せる事は無いという。とかく批判されるが、グローバル企業の節税は徹底している。
「法人税率が12.5%と低いアイルランドに2つの法人(子会社)を設立(ダブル・アイリッシュ)し、さらにオランダ法人を間に挟んで(ダッチ・サンドウィッチ)特許や商標権などの無形資産についてライセンス契約とそれに対する支払いをやりとりする方法で、これにより実効税率は数%から10%前後になる。
安倍政権の法人税減税「意味ないどころか逆効果も」と大前氏 SAPIO2014年7月号

アメリカは日本より法人税が高いじゃないか、と言われる事も多いが、アップル、グーグル、アマゾン、フェイスブックなどにとっては合法的な節税を実行しており、そんなことは関係ないという事だ。

仮に日本が法人税を25%まで下げてもそれはヨーロッパの平均でしかなく、日本が海外企業を呼びたいのなら、香港の16.5%やシンガポール・台湾の17%を下回る、アイルランド並みの12.5%くらいまで下げないと意味が無いという。言葉の壁も考えれば、この指摘は100%正しいと思われる。もし本当に10%程度まで下げるなら、徴税コストを考えればすでに書いたようにゼロでも良いという事になる。

■税金を「どこから」「どのように」とるべきか?


じゃあ税金をどこから取れば良いのか、という事になるが、消費税と資産への課税というのが一つの答えだ。

現在の日本は超高齢化社会で高齢者に「資産」が偏る一方、課税の多くが「所得」に偏る。所得税・法人税・消費税と税収3本柱のうち、所得税の多くは働いている現役世代から、法人税も当然働いている現役世代への課税とほぼ同等だ。そして消費税は広く薄く課税出来るため高齢者にも課税出来るが、現役世代もワカモノも子供も全ての世代に課税される。

その一方で国の支出の多くを高齢者向けの支出が占める。年金・医療には保険料も当然使われているが、これらは実質的に税金と性質はほとんど同じだ。

年金は将来自分が受け取るために積み立てているかのような錯覚を起こすが、実際には賦課方式といって、ワカモノが高齢者のために保険料を払っている状態であり、積立方式とは全く異なる仕組みだ。厚生労働省のHPでもはっきりと「あなたの払った保険料は、現在の受給者への支払いにあてられています」と書かれている。

高齢者と現役世代のバランスが崩れてきた以上、今までのやり方では不公平が拡大し、いつか破たんするのは当然だ。これを正すには資産に課税すれば良い。これは大前氏のほか、経済学者の池田信夫氏も指摘する。

■資産の9割超を60歳以上が保有する。


NHK-Eテレのオイコノミアでおなじみの大竹文雄氏は、日本の金融資産は2014年末で1694兆円、そのうち二人以上の世帯の金融資産は7割以上を世帯主が60歳以上の世帯が保有し、貯蓄から負債を差し引いた純金融資産では9割を超えるという(高齢者の増加はリスク資産を減らす? JCER 2015/5/21)。

ここまで極端な資産の偏りがあるにもかかわらず、高齢者へのまともな課税の手段は消費税しかなく(相続税はお金を受け取る側への税金)、一方で年金・医療で多額の税金が投入され、100兆円を超える社会保障費のほとんどが高齢者に使われている。それならば高齢者自身にもっと負担をしてもらうのは当然という事だ。

最近では下流老人といった言葉が使われているが、年金が確実に減る将来の老人、つまり現在のワカモノからみればほとんどの老人は上流であり、中には貴族や王族といっても良いような恵まれた人もいる。

大前氏は金融資産に1%課税するだけで税収は15兆円になるという。今なら17兆円近くになる。これは現在の法人税と比べて1.5倍以上だ。若くて貯金がゼロ、という人は勤務先の企業に税金がかかるよりよっぽどいい仕組みだと言えるだろう。

この仕組みを導入すれば、複雑怪奇な相続税も不要になる。毎年1%課税されるのなら、誰がいくら持っていようと関係が無く、1%課税ならば誰かが亡くなった時だけを狙いうちにする必要は全くなくなる。タワーマンションの購入やアパート経営、保険の加入など相続税対策に費やされる膨大かつ無駄な手間も消える。

■課税対象はフローからストックへ。


資産に課税をするには大きなハードルを越える必要があるだろう。マイナンバーの導入だけでも大騒ぎになる状態で、国が金融資産を把握してそこに課税をするとなれば現状では到底越えられる壁ではない。無理の一言で片づけられてしまうに違いない。

しかし、現在の所得を中心とした課税は高齢化した日本にとってすでに適正な税体系ではない。大前研一氏は「21世紀にはフローではなく、ストック、つまり資産に税金をかければいい。それが著しい経済成長を終えた老体国に合った税金のシステムだ」という(EUに対抗できる日本づくり SAFETY JAPAN 2007/2/21)。

税金をかけられる場所は、収入・支出・資産の三か所しかない。その中でバランスを取り、公平・中立・簡素という原則を守るべきだ。消費税の引き上げや法人税の引き上げだけに過剰な反応がある状況はハッキリ言って異常の一言だ。

財政・経済については以下の記事も参考にされたい。
■225円のために軽減税率なんていらない。~3400億円はひとり親支援に使え~
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/45902405.html
■年収1100万円なのに貯金が出来ませんという男性に、本気でアドバイスをしてみた。
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/44746902.html
■262億円の大赤字を叩きだしたマクドナルド・カサノバ社長に、一読を勧めたいマンガについて。
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/45414636.html
■家賃はもったいないか? : シェアーズカフェのブログ
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/44793837.html
■1億円の借金で賃貸アパートを建てた老夫婦の苦悩。
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/44769829.html

軽減税率を導入するかしないか、と小手先の話をする前に、税制も含めて今の仕組みがもう高齢化社会に合わなくなってきているのではないか?と根っこの部分から考え直す時期に来ている。日本は高齢国家として世界でもトップランナーとして突っ走っている。後から同じ道をたどってくるであろう他国の反面教師にならないためにはどうすれば良いか、お手本になるような国づくりを考えるべきだろう。

中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長 ファイナンシャルプランナー
シェアーズカフェ・オンライン 編集長
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