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橋下氏なのだが、大阪の皆さんがすり寄ろうとしている安倍政権の、原発とエネルギー政策についてはどういう見解をお持ちなのだろうか。

「原発フェードアウトと自然エネルギー立国」と、私達は基本政策で掲げている。万が一の事故リスクを織り込み、使用済み核燃料の最終処分コストも視野に入れると、原発はもはや安全でもなく低コストとも言えない。

英国で新設が予定されているヒンクリーポイント原発は、何と建設費が160億ポンド(2.7兆円)にまで高騰してしまい、投資の回収のために政府が発電された電力を35年間の長期間にわたって高く買い取る保証を行なっている。これ自体、原発がもはや低コストな電力と言えなくなっている証拠のようなものだ。原発プラントを主力事業としてきたGEのイメルトCEOも「原発を経済的に正当化するのはもはや困難」と正直に告白している。

しかも災害列島・日本において原発事故リスクは欧米の大陸国家よりもはるかに高いものと考えざるを得ない。一度、世界最悪レベルの過酷事故を起こしながら、また再び同様の過酷事故を発生させたら、それがどんな原因によるものであれ、日本の国家としての信用が地に墜ちかねない事を肝に銘じなければならない。

そもそも3.11の東電福島第一原発事故は、大規模集中電源に依存する従来の電力システムの脆弱性を露呈させたものであった。福島第一470万kW、福島第二440万kW、いずれも数百万kW級の原発プラントが巨大地震のような災害で稼働停止に追い込まれれば、大都市がブラックアウトしてしまう。実際に計画停電の阿鼻叫喚が起きたのは記憶に新しいところだ。
小規模分散型の電力システムであれば、一つの発電所がダウンしてもその影響は広域に及ばず、他からのバックアップも容易である。「独占企業―大規模集中電源」から「多数企業―小規模分散型電源」へのシフトこそが電力システム改革の本質的意義であろう。

電力自由化を進めると、安全でも低コストでもない原発は、市場メカニズムの中で淘汰されていく事になる。現にシェールガスの登場を一つの契機として、米国では原発からの撤退が相次ぐようになっている。つい先日はマサチューセッツ州のピルグリム原発が稼働停止すると発表された。脱原発運動の盛り上がりによるものではない。「シェール革命」で安価な天然ガスが台頭した事による電力価格の低迷、という純然たる経済合理性の判断で原発の市場からの退出が進んでいるのだ。これがまさに私達の「原発フェードアウト」が指し示している未来像だ。

そして、世界では猛烈な勢いで自然エネルギーへのシフトが進んでいる。風力や太陽光、バイオマスといった自然エネルギーの発電コストは供給量の拡大とともに急速に低減し、技術面でのイノベーションも顕著に進んでいる。その結果、ドイツや英国では風力発電においても太陽光発電においても発電コストが電力価格を下回るグリッドパリティを達成しつつあり、風力発電については政府の補助金を受けなくても他と比べて最も安価な発電手段となった。

米国では自然エネルギーの大幅な導入により化石燃料を使った火力発電所の稼働率が低下し、それが火力発電の発電コストを引き上げ、更にそれが自然エネルギーへのシフトの呼び水となる、という現象が起きつつある。このようなサイクルがひとたび始まると、化石燃料を使った火力発電所が将来にわたって安定的な高い稼働率を維持できるかどうかが不透明となり、火力発電所の設備投資計画にも影響を与える可能性が出てくる。つまりこれは、自然エネルギーの大幅な導入により、従来の規模での「ベースロード電源」が要らなくなる可能性が出てきたという事だ。
(上記については先日、紹介したブルームバーグの記事をKenji Shiraishiさんが抄訳してくださったので、リンクを付けておきます)
http://phdryugaku.hatenablog.com/entry/2015/10/18/133014

日本では自然エネルギーのシェアは2.2%しかない。EUのドイツやスペイン、フランスまでもが20%台に達しつつある中、低い水準と言わざるを得ない。しかもこの水準の電力供給に対して大手電力の保有する送電系統への接続拒否問題が起きており、自然エネルギーの拡大を事実上、抑圧する意図があるのではないかとさえ受け止められている。
風力、太陽光、森林資源や畜産排泄物を利用したバイオマス、海流・潮流・波力、いずれも国産で調達できるものであり、シェア拡大は自給率の向上とエネルギー安全保障に結びつく。時とともに発電コストは低減し、燃料価格は化石燃料と比してゼロに等しい。しかも大都市ではなく地方にこそエネルギー資源があり、小規模分散型の自然エネルギーの電源立地は地方に新たな産業と雇用をあまねく生み出すものともなる。「自然エネルギー立国」こそ「地方創生」の切り札になると私は考えている。

安倍政権により原発再稼働が進められ、原発の新増設も含めて、何事もなかったかのように原発依存に逆戻りする方向性となっているように見える。「原発依存度を可能な限り低減する」との安倍総理の言葉は、魂のこもらない官僚文学の空念仏のようにしか聞こえない。一方で3.11を受けて、曲がりなりにも「2030年代の原発稼働ゼロ実現」という方向性を打ち出したのは民主党政権である。当面の再稼働にどう向き合うかについて意見の相違はあるものの、原発ゼロを目指していく方向性では一致できる。

「原発依存への回帰」を国民の多くは望んでいない。世論調査においても60%が再稼働にも反対と答えている状況だ。<平成の大同団結運動>を経て形成される新しい国民政党は、「原発フェードアウトと自然エネルギー立国」の私達の基本政策を継承し、日本版エネルギーシフトを強力に進めていく事を主要な政策上の対立軸にすべきだと私は考えている。これは大きく言えば日本の国家としての針路にかかわる問題だと思う。

さて橋下氏なのだが、大阪の皆さんがすり寄ろうとしている安倍政権の、原発とエネルギー政策についてはどういう見解をお持ちなのだろうか。府市統合本部エネルギー戦略会議まで設置して、あれだけ一時は声高に叫んでいたのが、今やそれは不問という事なのだろうか。そうすると当時は時流に乗って調子の良い嘘八百を口にしていたという事なのか。単なる罵詈雑言ではなく私は政策論から書いている。党として掲げてきた基本政策に照らしての正統性はおのずから明らかではないかと思う。

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