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"記憶に残る「幕の内弁当」は無い"〜秋元康☓小山薫堂「企画力で勝つ!」(後編)

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10月7日に行われた「新経済連盟」会員交流会での秋元康氏と小山薫堂氏による対談「企画力で勝つ!」。前編に引き続き、後編をお届けする。※ "カルピスの原液を作らなきゃダメだ"〜秋元康☓小山薫堂「企画力で勝つ!」(前編) はこちら

完璧じゃない企画でもやってみようと思うようになった

小山:最初に戻りますけど、僕が思うのは、自分が楽しいか、誰を幸せにするのか、それは新しいのかの3点。毎回、自分が楽しいだけだと、多分ダメだなと思うんですよね。

最近、企画を立てる時、自分に言い聞かせることがあります。"日本最初の天気予報"を思い出すんですよ。今って、天気予報っていったらピンポイントで分かりますね。でも、日本最初の天気予報を調べてみたら、日本全国の天気予報なんですよね。「明日の天気は概ね晴れるが、ところによっては風雨あり」みたいな。でも、天気を予想するという行為があったからこそ、100年経った今、ここまで進化している。

つまり、自分で作り上げなくても、一歩踏み出せることを企画しておけば、後世になって何か役に立つんじゃないかなという風に思うと、最近は、完璧じゃない企画でもやってみようと思うようになったんです。

今までは、完成されてなきゃいけないなとか。それをやったことによって、すぐに結果が分かったり、儲けなきゃいけないということがあったんですけど。最近は、一歩踏み出して、失敗したとしても意味があるんじゃないかなと思うようになりました。

僕が今、自分でやっていて一番おもしろいと思っているのは「湯道」でして。お茶の道が「茶道」で、お風呂に入るというのが「湯道」。

なんで「湯道」をやろうかと思ったかっていうと、フランス人と結婚した僕の知り合いが、旦那を連れて箱根の温泉に行ったんですね。箱根の温泉に行った時、旦那さんに「男湯に入ったら、まずキレイに体を洗ってから湯船に入りなさいよ。日本はそういう国なんだから」って言ったらしいんですよ。そうしたら旦那さんは、男湯に行って、脱衣所で服を脱いだら、その脱衣所にいっぱいシンクがあったので、「これだ」と思って、そこで体を洗ったらしいんです。脱衣所で体を洗って中に入って行ったら、中で洗っている人がいて恥をかいたと。

確かに外国人にとって、あまりにもミステリアス。でも、お湯って、日本にとってものすごい観光資源じゃないですか。飲める水を沸かして、それに人が入るっていう、こんな幸せな国って、地球上で考えた時に、あんまりないですよね。未だに何億人の人がお風呂に入れず亡くなっている。

そういう意味で、「湯道」を始めておけば、400年後に千利休のように"開祖"としての名前が残るんじゃないかなと。それで湯道を始めて、仲間を集めていっているんですよ。

この「湯道」には二つ目的がありまして、一つは子供への教育。「湯塾」みたいなのをやりたくて。銭湯が今キツイ時代に、銭湯の空き時間を使って、人にいかに迷惑をかけずにお風呂に入るかっていうのを教えてもらえるようなことをやったら、おもしろいんじゃないかなと思っていて。学びの場であると同時に、日本の手仕事や伝統工芸を守るためのお道具を開発していく。それをやってみようかなと思って始めました。

齋藤:小山さんが興味を持たれるものって、割と昔からの文化とか、極端な言い方をすると、文化的、スノビッシュ的なところがすごいのかなと。

小山:そういうわけじゃないんですけど。ただいつも自分の中から企画を引っ張りだす時のキーワードは"もったいない"ってことです。自分では"テコ入れ"って勝手に言っているんですけど、世の中のもったいないなと思うものを、僕だったらこうするのになとか。

齋藤:価値の底上げみたいな?

小山:ええ。それを空想・妄想しているうちに、実際に出来るチャンスをもらったりとか、チャンスを見つけることが出来る。その時に、今の伝統工芸とか、みんな一生懸命やっているのに、今ひとつうまくいかないところがあるので。海外の人ともっと分かりやすく、くっつけられないかなと。

記憶に残る「幕の内弁当」は無い

秋元:薫堂君の企画は、さっき言っていたように漢方薬なんですよ。ジワジワ効いてきて、70年後に「湯道って昔、薫堂君が言っていたよね」っていう風になると思うんですよ。でも例えば、「クールジャパン」もそうですけど、伝統工芸を広く海外に紹介しようとしても、何かきっかけがない限り、みんな日本に来ないでしょ。

だから僕は、やっぱりそこに"抗生物質"が必要だと思っていて。まず、それが観たいんだ。それが欲しいんだ。ということを作っていかなきゃいけないと。だから、「寿司ゾンビ」もそうですけど、今、ニューヨークで忍者のミュージカルも作っているんです。それが日本に来るきっかけになってくれたらいいなと。忍者ミュージカルに人が集まるというところから、何かが広がっていく。

これは古舘伊知郎さんに聞いたんだけども、香具師が往来を歩く人達の足を止めるためにどうしていたたかというと、ダミ声で「ヘビが飛ぶよ」って言うんだそうです。そうすると「えっ!?ヘビは飛ばないでしょ?」と思うから、みんな足を止めて「なになに?」と来る。

やっぱり僕が今必要なのは、この「ヘビが飛ぶよ」っていうキーワードだと思う。「ヘビが飛ぶ?」と思った時に、テレビを見たり、Netflixを見たり、Huluを見たり、何かに立ち止まるんですよね。

だから僕は、「ヘビが飛ぶよ」っていうのを常に作らなきゃいけないと思っています。そうしないと、みんなドンドン慣れてきてしまうし、刺激がなくなってしまう。

僕のヒットのポイント、企画のポイントっていうのは、"記憶に残る「幕の内弁当」は無い"っていうことなんですよ。会議をやればやるほど、僕がこの一品で勝負しようと思っても、「いや、それじゃあ、肉を食べられない人どうするんですか。お魚食べられない人どうするんですか」と増えて、結局は、幕の内弁当になっちゃう。だから、一品でいいんだと。

つまり世の中に、梅干しだけの日の丸弁当を出したいと。高級な世界一美味しい梅干しだけの、白いご飯の日の丸弁当なんて出るわけないと思っているところに出すから価値があるんですよ。

そこに「さすがに日の丸弁当の梅干しだけでは、おかずにならないから、お魚入れましょう、お肉入れましょう」って、結局は幕の内弁当。これは全然記憶に残らない。だってみなさんも、今まで食べた幕の内弁当で一番うまかったものなんて、絶対覚えてないですよ。

でも、「あのうなぎ弁当」とか「あの釜飯」とか「あのカレー」とかは、覚えられるじゃないですか。この、"あの"がなきゃいけないと、絶対思っているんですね。例えば『おくりびと』ってタイトルは覚えられなかったり、思い出せなかったりするけれども、「死んだあとの"あの"映画」って"あの"がちゃんとあるんですよ。だから、ヒットするんです。

「あの、秋葉原でいっぱいいるグループ」っていうのがAKB48だったり。僕らの仕事とみなさんの事業とは違うかもしれないけど、コンテンツだと"あの"が付いているか、付いていないかというのは、すごく大きいんですよね。

だから、差別化でいうと、"あのなんとか"っていうのがあるかどうかっていうのは、僕の中で一番大きいかもしれない。

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