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中国軍30万人削減 近代化と海空軍強化 - 岡崎研究所

習近平が打ち出した人民解放軍30万人削減計画について、Diplomat誌のティエッツィ編集員が、その目的が軍の効率化・近代化にあると中国当局が公式に認めていること、また、陸から海空重視への転換には抵抗もあり得ることを、9月8日付同誌ウェブサイトで報告しています。 

 すなわち、習近平は、第二次大戦終結70周年記念の大規模軍事パレードの直前(9月3日)の演説で、人民解放軍30万人削減を発表した。習は、兵員削減を人民解放軍の「世界平和維持の高貴な使命を実行」へのコミットメントの一環と位置付けたが、軍事アナリストたちは、この動きは中国の軍事力近代化を推進する一環としての人民解放軍の再編であるとの見方で一致している。

 9月3日の兵員削減の発表は、1980年代以来なされてきた削減と再編の長い歴史に沿ったものである。人民解放軍の規模は、1985年に10万人、1997年に50万人、2003年に20万人、そして今回30万人と、4回削減されている。

 中国国防部の楊宇軍報道官は記者会見で、「兵員削減は世界平和の維持への中国の真摯さと切望を表し、国際的な武器管理と軍縮を進展させようとする中国の行動と責任ある態度を示すものである」と述べたが、なぜ削減がなされるのか更なる詳細を訊ねられると、その回答は、中国の平和へのコミットメントではなく、軍事改革プロセスに焦点を置いたものだった。 楊は「兵員削減を通じ、中国軍は、規模をさらに調整、最適化し、より能力を高め、軍の構造がより科学的になり、中国的特徴を持った近代的な軍事システムを構築することになろう」と説明した。さらに、削減されるのは、時代遅れの武器を装備した部隊、事務職員、非戦闘部局の人員である、と指摘し、「兵員削減は、リソースのプール、軍の情報化のスピードアップと改善に資するであろう」として、中国軍の縮小が中国の国益を守る能力を低下させないことを強調した。楊は、兵員削減は人民解放軍の改革の新しいラウンドの始まりに過ぎず、さらなる改革計画を打ち出していくことになろう、とも言っている。

 新華社の記事も軍の改革という考えを支持し、「軍の構造に揺さぶりを与え、利益を調整する処置が既に動き出しているので、軍のオーバーホールは後戻りできない段階に入った」と述べ、他方、改革のプロセスに抵抗し得る「特殊利益集団」からの脅威についても指摘している。今月5月に発表された中国の新しい国防白書は、中国海軍の役割拡大を求めているが、「陸を海より重視する」との伝統的な考えの変更は、海空に対して優位を享受してきた陸軍の軍人からの抵抗に直面し得る。

 今後2年間、兵員削減がレトリックから現実のものに進展するに従い、新しいよりスリムな人民解放軍を再定義する改革と再編を注視する必要がある、と指摘しています。

出典:Shannon Tiezzi,‘The Real Reason China Is Cutting 300,000 Troops’(Diplomat, September 8, 2015)
http://thediplomat.com/2015/09/the-real-reason-china-is-cutting-300000-troops/

* * *

 30万人の人民解放軍の削減計画の意図についての本論評でのティエッツィの指摘は、妥当であると思われます。

 この削減計画により、全体の予算は削減され、資金の再配分が行われることとなるでしょうが、それでも2017年に削減が完了した後でさえ、兵員200万人を擁する中国解放軍は世界最大の軍であることに変りはありません。

 今後の資金の配分においては、とくに本年5月公表の「国防白書」が述べているように、陸よりも海空に対してより多くの資金が割り当てられるものと考えるべきでしょう。それは海洋膨張主義を目指す中国の優先事項でもあります。

 今回の軍事パレードにおいて、いくつかの注目すべき兵器の機種が展示されました。これらの詳細については軍事専門家の分析が待たれるところですが、中でも注目すべき兵器は、巡航ミサイルを搭載できる第4世代の戦略爆撃機(「轟(H)6K」)が登場したことです。空中で発射できる巡航ミサイルを保有しているのは米露と中国だけとなりました。

 また、初公開された対艦弾道ミサイルの「東風(DF)21D」は海面に近づくと、弾頭の方向を変えて対象艦船に命中出来ると言われ、空母を保有する米軍にとっては看過できない兵器です。

 東シナ海、南シナ海、台湾海峡での有事の際には、これらの兵器が使用可能となることを米、日、台湾、東南アジア諸国などに印象付けるというのが中国の意図でしょう。これら兵器は沖縄やグアムの米軍基地を狙うことが出来るだけではなく、中国に接近する米空母にも対応が可能です。

 振り返れば、1996年、「台湾海峡の危機」の際には、急派された米空母2隻の前に、何もできなかった中国は、いまや、接近する米軍への大きな牽制力を有することを見せつけました。パレードに展示された新兵器の性能が中国軍によって現実的にどの程度使用可能の域に達しているのか、はっきりしない点はありますが、少なくともそれら兵器を保有していることを誇示出来たことは、今後、西太平洋における米軍のプレゼンスにも影響を及ぼす可能性があるでしょう。

 なお、海空重視への抵抗の可能性については、そうしたことを封じるべく、習近平の人民解放軍掌握を更に強化していくことになるのでしょう。

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