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続・図書館に新刊本を置くことの意味とは?

■本作りは「経済活動」であってボランティアではない

 前回の記事で、書評まじりに「図書館に新刊は置かない方がよい」ということを書いてみると、賛否両論があったとはいえ、否定派の方も結構見受けられたので、再度、この問題に触れておこうと思う。
 個人的には「図書館に新刊は置かない方がよい」というのは、ごく当たり前のことだと思われるので、「認められない」と言う人がいることの方が驚きだったが、なぜ、このような見解の相違が生まれるのかを考えてみたい。

 まず、以下のような意見があった。

>「貧乏人は新刊本を読んではいけないのか?

 その「貧乏人」という範疇に、一体どこからどこまでの人が入るのか定かではないが、「お金を支払って読む人」と「お金を支払わずに読む人」がいた場合、販売者サイドから見れば、どちらが有り難いお客だと言えるだろうか? 普通に考えれば、誰が考えてもきちんと対価を支払ってくれる「前者」の方だろう。
 「前者」が存在することによって販売者側は本を作るという仕事ができ、「前者」がいてこそ、「後者」の存在も許される。もし「後者」だけで「前者」がいなければ、作家は無報酬となり、ただのボランティアと化してしまうので、「後者」が新刊を読む機会は本当に失われてしまうかもしれない。

 本を発刊するためには、実に様々なコストがかかっている。作家だけでなく、出版会社の企画編集者、コピーライターやカメラマン、印刷会社のデザイナー、DTPオペレーター、印刷機の職人さん、製版会社や製本会社のオペレーターなど様々な業者が各工程を経て、1つの本が出来上がっている。
 その本を市場で販売することは、その他多くの商売と同様、かかったコスト以上の利潤を得るための経済活動であり投資活動でもあることを意味している。製作サイドがリスクを背負って、それぞれの業者がコストを支払い、利潤(給料)を得るために知恵を絞り、汗水たらし、時には涙や血も流し、1つの商品を作り出している。
 その本が市場に出回ったら、「すぐに無料で読みたい」、「対価など支払う必要がない」と言う人がいることに不自然さを感じることが、なぜ可笑しいことなのだろうか?

 そのこと(無料で新刊本を読むこと)に不自然さを感じないという人は、「本を作っている人間に給料など支払う必要はない、そういった連中はブラック企業で奴隷のように働けばいいのだ。」とでも言うのだろうか?

■図書館は「税金」で成り立っている

 また、BLOGOS内には、それぞれ次のような意見もあった。BLOGOSのコメント欄に直接書いてもいいのだが、全部の意見に対して書くわけにもいかないし、収拾がつかなくなると困るので、ブログ記事としてまとめて応えておこうと思う。

>「貧しい人が知識を得る権利を守る事は大切だ

 それはその通りかもしれないが、なぜそこまで新刊本に拘らなければいけないのかが解らない。図書館には新刊を除いても知識を得るに困らないだけの膨大な書物がある。一生かかっても読めないほどの知識の山が目の前に有るのに、出て間もない新刊に拘る必要がどこにあるのかが解らない。
 個人的には、自分の人生に良い影響を与えるような本というのは、新刊よりも評価の定まった古典の方が良いのではないかと思う。

>「ただで読める環境が子供には必要だ

 これも同じ。別に新刊本に拘る必要性が感じられない。百田氏も私も「図書館が必要ない」と言っているわけではなくて、単純に「図書館には新刊本を一定期間置かない方がよい」と言っているだけなので、勝手に拡大解釈されても困ってしまう。

>「図書館問題を論ずる時は「経済」ではなく「福祉・貧困」の視点で考えるべきだ

 先に述べた通り、日本では本作りというもの自体が経済活動となっているので、経済を抜きには語れないと思う。「福祉・貧困」問題として考えるのは「本を買うお金が本当に無い人」を対象とすべきであり、単に「本を買うのが勿体ない」というだけの人まで対象にする必要はないと思う。
「お金が無い」と「お金が勿体ない」は全く違う。

>「税金の話はお門違いだ

 その通り。私は「税金」のことを持ち出すお門違いな人がいることを事前に戒めるために税金の話を絡めた(皮肉った)だけで、「税金を支払っていない人は図書館を利用する権利が無い」などとは書いていない。
 問題は、利用者の方ではなくて、「税金」で成り立っている図書館が「税金」を納めている民間企業の経済活動を邪魔するのは可笑しいのではないか?ということ。

 本来、税収が増えれば、いくらでも図書館に並べられる本も増え、無料で読める本も増えるという好循環が生まれるが、税金を納めるはずの民間企業や民間人の経済活動を邪魔すれば税収が減少し、図書館も減少、図書館の本も減少という悪循環に陥ることになる。
 そういう本末転倒な事態に陥るのを避けるために、図書館に新刊本を置くのは控えた方がよいのでないか?ということ。(実際は、税収減でも図書館は増えているが)

■「無料図書館」という実現不可能なユートピア

 誰も彼もが本を無料で読める社会、それは確かに理想的な社会かもしれないが、そんな社会を構築するとなると、国は国民に対し、働かなくても(生産活動を行わなくても)生活資金が自動的に入ってくるというような制度を設けなければいけなくなる。そのような社会であるなら、誰も彼もが本を無料で読める社会の実現は可能かもしれないが、それはあくまでも理想論であり、この世では実現不可能な理想郷でしかない。

 「図書館に新刊を置かなければ日本文化の衰退をもたらす」と書かれている人もおられたが、その図書館に置く本そのものが無くなるという意味での文化の衰退も有り得る。
 「図書館に新刊を置けば日本文化の衰退をもたらす」 どちらも極論ではあるが、まだこちらの方が現実味があると思う。
 苦労して書いた本が全て無料で配布されるような社会であれば、作家に成ろうと思う人もいなくなるかもしれない。本を書く作家がいなければ本自体が無くなる。置く本が無ければ、図書館自体も衰退することになる。これこそが、本当の意味での日本文化の衰退であり、図書館に新刊本を置くことが意味するものである。

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