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渋谷直角『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』のわりと本気な感想

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実は8月上旬に読み終わっていたのですが、旅行等々でバタバタしていたらすっかり感想を書くのを忘れていました。というわけで本日は『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』の感想文を書きますが、きっとネタバレするので未読の方はご注意ください。

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ライフスタイル系雑誌がバカにされてしまう理由

こちらのマンガの主人公は、家電系の雑誌から、ライフスタイル系の雑誌「マレ」の編集部へ異動してきた、編集者のコーロキくん。最初は編集部のおしゃれピープルの音楽や雑貨やワインなどの慣れない話題に四苦八苦するのですが、次第にそんな環境にも溶け込んでいきます。コーロキくんが敬愛してやまないのは今も昔も変わらず奥田民生ですが、他のジャンルのちがう音楽にも勉強といいつつ手を出してみたりとか。

そんなコーロキくんの心を乱すのが、仕事先で出会ったレディスブランドのプレスの女性、あかりです。しかしこのあかりが曲者で、いわゆる「サークルクラッシャー」のごとく、「マレ」編集部の男性を次々に狂わせていくのです。そして「マレ」編集部はついに……! とこの先を語りたいところですが、ここから先はまじでネタバレになるので慎んでおきます。

この魔性の女・あかりについて考えてみるのもけっこう面白いと思うのですが、私がとりあげたいのは、やっぱり「ライフスタイル」「丁寧な暮らし」「サードウェーブ」などなどを取り囲む現状です。春頃に一度話題にのぼったあと、今は論争も下火になったような気もしますが、私も中立を装いつつ「どーなの?」とつい口を出してしまったエントリを書いています。

aniram-czech.hatenablog.com

主人公のコーロキくんも最初、ライフスタイル系の雑誌である「マレ」と、その編集部にいるおしゃれピープルたちを、ちょっと見下したような目線で異動してくるんですよね。だけど、コーロキくんの不手際が招いたネット炎上のトラブルを編集部の人たちが受け止めてくれたあたりからそれもなくなり、以降は編集部の一員として、雑誌「マレ」の仕事をすっごく頑張ります。書店で、ライフスタイル系の雑誌をバカにしている読者、つまり私みたいなやつを実際に目の当たりにし、悔しい思いをしながらも、なんとかいい雑誌を作ろうと邁進していくのです。

コーロキくんが書店で見かけた読者のように、ライフスタイル系の雑誌がバカにされてしまう理由として、よく「本質的ではないから」みたいなことがいわれることがあります。私も春頃は「そうそう、本質的じゃないんだよねー」という論調のことをつい書いてしまっていたのですが、この作品を読んでいたら、ライフスタイル系の雑誌がバカにされてしまう原因は別のところにあったんじゃないかという気がしてきました。本質たって、何が本質なのかとか考えていくとよくわかんない話になりますしね。「本質的じゃない」って、いってる本人も意味わかってなかったりします。

「マレ」の編集部の人たちや異動してきたコーロキくんが、ものすごい信念をもって雑誌を作っていることが、この作品を読むとよくわかります。実際のライフスタイル系雑誌やウェブマガジンだって、きっと同じです。たとえ出来上がった雑誌が「上っ面」に見えたとしても、その裏に作り手のものすごい努力があったりだとか、真剣さがあったりだとか、編集者の強い思いが込められていたりだとかっていうことは、普通に考えられることです。

だから、「丁寧な暮らし」界隈に対してナナメに構えているような人間であっても、実際にそのモノ作りの現場を目にしたら気が変わることだってあるし、心を動かされることだってあると思うんですよね。私もナナメに構えてるほうの人間ですけど、実際にそういう雑誌の編集部の人たちと知り合いにでもなったら、悪くいわない、というかいえなくなると思います。それは利害関係云々の話ではなくて、たぶん、というか絶対、作り手には作り手のプライドがあるはずだし、テキトーに作ってるわけじゃないってわかるから。

だけど、どんなに真剣に作っても、裏にどんな思いをこめても、出来上がったものが「上っ面」に見えたらそれは「上っ面」になってしまうんです。作り手はどんなに真剣でも、消費者は基本的にテキトーに受け流すものです。それは絶対に覆せないものなので、「こんなに強い思いをこめてるのに!」っていってもそれは甘えというか、無駄なんですよね。これはブログを書いている私自身も自分のこととして痛感していることで、すっごいいろんなことを調べて真剣に書いても、読者に「上っ面」に見られてしまったらそれは所詮「上っ面」なんだな、って思います。裏にどんな思いがあっても。

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