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橋下政局を楽しむ余裕はない。28日、臨時国会をすぐに召集すべき

憲法によって国家を縛り、その憲法に基づいて政治を行う。

民主主義国家の基盤ともいえるその原則が、近年、大きく揺らぎつつあります。

憲法違反の発言を繰り返す政治家、憲法を無視して暴走する国会…。

「日本の立憲政治は、崩壊の危機にある!」

そう警鐘を鳴らす南部義典さんが、現在進行形のさまざまな具体的事例を、 「憲法」の観点から検証していきます。

国会はやるべきことをやれ

 9月27日(日)、国会は会期末を迎えます。普通に考えれば、翌28日(月)からそのまま閉会休暇に入ります。

 しかし、絶対にそうあってはならず、28日から早速臨時国会を開くことができるよう、健全な野党は今のうちから、安倍内閣に対して臨時国会召集の要求をすべきです。

 通常国会は一度延長したら、二度目の延長ができません。なので、会期をさらに継続しようとすると、間髪入れずに臨時国会を召集するしかありません。しかも、召集権を有するのは内閣なので、野党側から要求し、嫌がる与党を説得するしかないのです。

 国会が予定どおり閉じれば、安倍晋三、橋下徹両氏はさぞかし安堵するでしょう。何より、永田町内外の喧騒を忘れさせてくれます。安倍氏はトップダウンで、党の人事と運営を自在に操り、橋下氏は10月下旬といわれる新党構想を練るに練って、求心力をさらに高めることができます。

 メディアの浮足立ちも止みません。通常国会の反省、検証もいざ知らず、橋下政局の追っかけにまっしぐらです。氏に対する評価姿勢にかかわらず、政局好きの本性がむき出しです。

 現状、国会は議論すべき重要案件が山積しています。与党も野党も、橋下政局にかまけて、合意をつくる努力を怠り、諸々の案件を先送りすることは許されません。閉会休暇を満喫するようでは困ります。橋下政局をお茶の間感覚で楽しむ余裕はありません。

公党の責任を最後まで果たせ

 思えば、昨年の今頃も、橋下政局でした。通常国会の閉会中、第2次安倍改造内閣の発足(2014年9月3日)に前後して、日本維新の会が旧名を引き継ぐ「日本維新の会」と「次世代の党」に分党し(8月1日)、その後「日本維新の会」と「結いの党」が合併し、「維新の党」が誕生しています(9月22日)。政党の離合集散は、およそ、国会の閉会中に行われるものです。

 今回の分裂は、柿沢未途幹事長問題に端を発し、橋下氏の「もう一度、俺のこの指とまれ」の一言で決定的になりました。自分の一言で、簡単にオールリセットしようとするわけですが、政党観、組織観でいうと、いわゆる「地域政党」と政党助成法等でいう「国政政党」との区別が出来ていないと、私は思います。

 橋下氏の眼には、維新の党が清算団体に映っているかもしれませんが、政党は一般に、継続価値がある社会的団体と考えられて、定期的に「政党交付金」が与えられています。党、所属議員を支持するか否かにかかわらず、国民の税金で一定の党運営が賄われている仕組みです。

 まして来月には、憲政史上初の完全一人一票制で代表選挙を実施することを公表し、準備に入っていると聞きます。対立者への露骨な当てつけで、こんなテーブルのひっくり返し方をすることこそ、憲政史上初めてではないでしょうか。党員の思いを軽視し、その他の国民を無視しています。

 少し嫌味なことを言いますが、党首討論を早々に開催すべきです。

 国会の会期中、月一回は党首討論を開催するという与野党合意が存在することは以前紹介しましたが、7月以降は実績がありません。この際、松野頼久代表にはちゃんと臨んでもらい、公党として「最後のけじめ」を付けてもらいたいものです。国会の場で説明責任を果たすことが重要です。維新の党が何だったのか、これから何を目指すのか、明確なメッセージを残してほしいのです。

内閣不信任決議案提出のチャンスは?

 国会はやるべきことだらけですが、会期末まで連日、与野党間の緊張が続くかといえばそうではなく、次の5連休直前で事実上の閉会状態に突入しそうです。懸案である安全保障関連二法案も予断を許しません。政府・与党は16日(水)午後、参議院特別委員会で採決を行い(委員会ではまず、野党の修正案を否決し、その後、政府案を原案どおり可決する)、18日(金)午前、参議院本会議で可決、成立させる想定をしていると思います。

 今回のような“反立憲主義立法”に対する抵抗姿勢として、野党は慎重審議を要求するだけでいいのだろうかと考えれば、合法的手段として少なくとも、内閣不信任決議案(衆議院)、内閣総理大臣問責決議案(参議院)を早くに提出し、究極の政治責任を追及することで歯止めをかけるべきでした。会期は長かったので、要所要所でチャンスがあったはずです。

 現在までのところ、いずれの決議案も提出されていません。決議案を会派単独で出せるのは民主党だけなので、これは専ら、民主党の判断、対決姿勢の問題です。

 きょうまで未提出となっている理由としては、率直に、衆議院の解散を恐れていたことも否定できません。そして、決議案の提出は何より、政府に対する「絶縁状」としての意味を持つので、内閣が提出している法案のうち、野党として賛成するもの、与党とともに共同修正したものの審議が止まってしまうことなどの影響を考え、意図的に避けてきたということが考えられます。

 しかし、会期末まで残り1カ月を切ったいま、「細心の注意を払って成立させなければならないが、犠牲(不成立)になっても構わない」と考えられる法案は唯一、「司法取引法案」(刑事訴訟法の一部を改正する法律案)くらいです。それでも、この法案の成立にはさらに猶予があってもいいわけですから、いまは目の前にある“反立憲主義立法”の成立阻止に集中すべきです。

 先日の国会周辺デモに参加したと思われる方が、あるSNSで私の過去記事をご紹介いただきながら、「(野党は)一般市民の動員をする。我々は義務として向かう。しかし、(野党は)内閣不信任決議案さえ提出しない。これはおかしい。怠慢じゃないのか」との趣旨のことを書き込んでおられました。私も同感です。

 国会審議で余裕、余力を残していると見られているとすれば、野党の側に非難の種があります。この際、会期末ギリギリの衆議院本会議、参議院本会議で、こちらも「最後のけじめ」として、内閣不信任決議案、内閣総理大臣問責決議案を審議すべきです。「最後のけじめ」なくして、国会を閉じることなど到底考えられません。

臨時国会がもし召集されたなら

 仮定中の仮定で、確率の低い話になりますが、28日に臨時国会が召集されたならば、健全な野党は、今回の政府案を廃止する法律案を、ただちに提出すべきです。その他、通常国会でやり残している案件に、一つひとつ丁寧に向き合うべきです。

 比較的新しい問題でありながら、すっかり忘れ去られている案件として、「政治とカネの問題」があります。現職の大臣に対する、国からの補助金を受給している企業からの献金、さらに現職の大臣の後援組織が行う違法な政治資金集めなどが問題となって、民主党、維新の党、日本共産党がそれぞれ政治資金規正法の改正案を提出しています。

 しかし、衆議院の委員会では3カ月間、法案審査が止まったままです。維新の党が主張するように政治資金パーティまで禁止するのか、あるいは共産党が主張するように政党助成法の廃止まで視野に入れるのか、野党の間でも意見は隔たっていますが、問題再発のため、とにかく結論を急ぐべきです。

 さらに、特定秘密保護法の施行状況等をチェックする情報監視審査会の件、武藤貴也衆議院議員の政治倫理審査会招致の件なども、国会内外でうやむやになりつつあります。然るべき対応を施す必要があります。

 そうこうしているうちに、橋下政局は<予告編>から<本編>へと進行していきます。政局はそれなりの規模になるので、安保法案の後、メディアは橋下一色でしょう。これに気を取られ、国会運営のモチベーションが下がっていくことは、あまりにも残念すぎます。

 「国会は、やるべきことをやれ」の一言に尽きるわけですが、いわゆる第三極政党の衰退現象をここまで目の当たりにすると、その反動で55年体制的な政治が色濃くなってしまうのではないかとの心配も尽きません。議会制民主主義の発展にとって、悩ましい問題です。この点は改めて採り上げます。

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