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自転車事故を防ぐレーザーライト「Blaze」

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最近東京では、自転車で通勤する人がグッと増えているように思う。

便利で気軽でエコと人気の自転車だが、その一方で危険運転や事故、トラブルも年々増加しており、今年6月にはより安全な自転車運転を課すための改正道路交通法も施行された。

自転車の事故やトラブルの多くは、自転車乗りのマナーの改善で防げるケースも多いが、特に薄暗くなってから夜にかけては、自転車の存在がドライバーや歩行者から把握されづらいことも、問題を大きくしているようだ。

この問題に取り組み、ビジネスにしたのが今回ご紹介する自転車用ライトの販売サイト、「Blaze」だ。同サイトは自転車の形をしたポイントレーザーを道路に照射することで、自転車がその付近を走っていることに周りに気づかせる役目を果たしている。

2012年に英国ロンドンにおいて設立。2015年度の売上は210万ポンド(約4億円)に達すると推測されており、これまでに50カ国以上に配送した実績を持っている。

自転車事故の79%は自動車の割り込みや車線変更によって起こる

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Blaze創業者のEmily Brooke(以下、ブルック)氏はオックスフォード大学で物理学を1年間専攻したのち、よりクリエイティブなことをしたくなり、プロダクトデザインを学ぶためにブライトン大学に転学した。

同氏はこのブライトン大学時代に、アフガニスタンからの帰還兵へのチャリティーイベントで1000マイル(1609km)を自転車で走るというイベントに参加した。以来、田舎道を自転車で疾走することの魅力に取りつかれ、毎日自転車に乗らないと気が済まない大のサイクリング好きになってしまう。

ただ、ブルック氏の住んでいるところは都会だったため、常に自動車や歩行者に目を配らせる必要があり、神経をすり減らすことになったという。都会は田舎道に比べて危険だと感じた同氏は、大学で出された「問題を解決するプロダクトのデザインを考案する」という課題において、都会でのサイクリングをより安全にする製品をと考える。

ブルック氏は、交通運転に関わる人々が運転中どのようなことを考えているのかを専門とする心理学者とも関わりがあった。そして彼らの研究において、自転車事故の79%が、自転車がまっすぐ道路を走っているにも関わらず、車が車線変更をしたり割り込んできた時に自転車が巻き込まれて起こっている、という統計があることを知ったという。

ブルック氏はこのことにショックを受けたが、自分でも街で自転車で走っている時には、自分の前を走る車やトラックの運転手が自分のことを認知していないということは以前から感じていた。

そこで走る自転車を前方にいる自動車に認知してもらいやすいよう、5ヤード(4.57メートル)ほど先の道路にレーザーを照射する自転車ライトをデザインすることに決めた。

この時はまだ起業のふんぎりはついていなかったが、2012年から米国マサチューセッツ州のバブソン大学で夏期のアントレプレナーシップ学を専攻し、帰国後にはEntrepreneur Firstというアクセレターによる起業支援を受けるようになると、ライトを販売するECサイトの設立に向けコードを書く勉強もはじめ、本格的に起業に取り組むようになった。

2012年11月26日にはクラウドファンディングサイトのKickstarterにおいてプロジェクトを立ち上げたところ、わずか5日間で目標金額の2万5000ポンド(約485万円)の支援を集めることに成功し、最終的には5万5000ポンド(約1060万円)の支援を集めることに成功したのだった。

自転車マークを道路上に照射するライト

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Blazeのレーザーライトは自転車の形をしたグリーンのライトを道路上に照射することで、車のドライバーに自転車の存在に気づいてもらうというユニークな商品だ。同製品には本体の他、充電用のUSBケーブルと自転車のハンドルバーにマウントするためのブラケットのキットが同梱されている。

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バッテリの持ちは13時間で、完全防水性。黒とシルバーの2色を提供している。価格は125ポンド(約2万4000円)となかなか高めだが、Appleのスマートフォンを作っているのと同じ工場に生産を委託しており、酸化コート加工がされたアルミニウム製のライトであり品質の高さも特長となっている。

自転車マークは5~6メートル手前に照射。車線方向しようとしている車、交差点から出てくる車、車と車の間や建物の陰から出てくる歩行者に自分の存在を気づかせることで、接触事故を未然に防ごうというのがこの製品の目的だ。

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自転車マークのカラーは視認しやすく、車のライトにもかき消されないグリーンで、点滅と点灯の2つのモードから選択できる。このマークは360度どの角度からも視認できるようになっているとのこと。自転車マークの照射以外にも、100ルーメンのライトの点滅か点灯、300ルーメンの点灯の3種類を選択可能な白色LEDライトも使用できるので、信号待ちのときなどに切り替えることもできる。

またライトはブラケットに取り付けた状態でしか点灯しない。これはレーザーが直接人の目を照射すると損傷を引き起こすため、できるだけレーザーが目的外で利用されないための配慮とのこと。この製品開発にあたってブルック氏は統計学の他、サイクリストやバス会社などにも協力を仰いだという。

社会問題を解決をしようとする姿勢が広報力を強化し、認知を高める。

Blazeの自転車マークを道路に照射するライトで車のドライバーに自転車の存在を気づかせ、車と自転車の接触事故を防ぐ発想は創業者のブルック氏が直面した身近な問題から得たものだった。

実はブルック氏はサイトの計画を練っている途中で、とあるスタートアップで働いていた前途の明るい青年が自転車を運転している際に、バスに轢かれて亡くなったというニュースを見て、製品の社会的意義が明確になったようだ。このお陰で、製品の認知も一気に広がったのは間違いない。

僕は最近広報の勉強をする必要があって、その道のプロに教えを乞う機会がある。すると彼らは必ず決まってこう言う。「今回の企画(や製品)の社会的意義は何か?」と。

聞かれたその場で社会的意義をあとづけすることもできなくはない。だが、キャンペーンや製品の企画時点で社会的意義を織り込むことでストーリーは強化され、リリース後の広まり方は全く違うものになる。立案時にぜひ考えてみたいテーマだ。

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