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湘南ベルマーレの新たな取り組み!!試合後の“ファンキーで楽しい”ゴミ拾いが海や街をきれいにする。

Leads to the OCEAN~海につづくプロジェクト~」。これは神奈川県平塚市に本拠地を置くJリーグチーム・湘南ベルマーレがサポーターを巻き込んでゴミ拾いを行うプロジェクトだ。

個人的な話で恐縮だが、自分はかなりのサッカー好きで、かつ自宅のある東京都中野区で月3回のゴミ拾い活動を行うNPO法人グリーンバード中野のチームリーダーを2年以上続けている。そうした背景から今回のプロジェクトの取材をご依頼いただいた。

7月11日(土)、名古屋グランパス戦前に行われる記者会見と、試合後の実際のゴミ拾いの取材のためShonan BMW スタジアム平塚に向かった。

今回実施される「Leads to the OCEAN」が取り組む内容は、大きく下記の2つである。

1:各試合約10,000人のサポーターに呼びかけ、平塚市民と共に試合後ホームスタジアム近辺のゴミ拾いを実施し、海に続くゴミを減らす。

2:年間約20試合開催される『湘南ベルマーレ』のホームゲーム開催時にスタジアム内大型ビジョンにて海の環境・街と海の距離を縮める内容の動画(20秒)を放送する。

このプロジェクトは以下の4者の連携によって実施される。チームを運営する株式会社湘南ベルマーレ。10年にわたり湘南でゴミ拾い活動を行っている団体「海さくら」。90年以上、木を取り扱うことで森の環境を育ててきた株式会社長谷萬。そして様々な社会貢献活動のサポートを行っている日本財団だ。

事前のプレスリリースによって上記の内容を把握した上で記者会見に向かった。各チームがそれぞれ地域密着に取り組むJリーグの良さが出ている試みだなと嬉しくなった。そしてJリーグ初期の「ベルマーレ平塚」から「湘南ベルマーレ」にチーム名を変えたことが思い出され、“湘南”という地域への愛着を改めて感じた。一方で、スタジアムの周りのゴミを拾うというプロジェクトの名前が、なぜ「海に続く」ということになるのかという疑問を持ちつつ記者会見へ向かった。

海のゴミの7割は川から。そして川のごみは街から。ゴミは人の心が生み出す

記者会見場に入ると、目に飛び込んできたものは2つの巨大なマスコット。1体はおなじみのベルマーレのマスコット(キングベルI世)。もう1体は始めて見たが今回のプロジェクトに関係するものなのだろうと思いながら着席した。

手元の資料を見ていると、ほどなくして記者会見スタート。登壇者は各組織から1名ずつの計4名。まずは「海さくら」代表の古澤氏がプロジェクトの発足の経緯等の説明があった。

「狙いは、次世代にいい形で海環境を残していくこと。10年ゴミ拾いをやっているが、拾っても拾ってもゴミはやってくる。海のゴミの7割は川から。そして川のごみは街から。ゴミは人の心が出す。そのため海をきれいにするために、“人の心を少し変えていく。”ことを目指したい。子供が裸足で安心して走りまわれない、プラスチックも多く浮いている湘南の海を危機的な状況から救い出すプロジェクトです。」

冒頭は、長年湘南の海を想い、活動を続けている古澤さんの気持ちのこもったものだった。ところが、その後古澤さんのテンションが一変。「余り真面目に伝えすぎると人は離れていく。ファンキーに、楽しく伝えていきたい!」との発言と共に持っていたサングラスを着用し、話し方も楽しげな様子に変化。

その後、プロジェクトの概要を紹介するとともに、プロジェクト実施時の工夫についても言及した。1つ目は、特別なかわいいゴミ袋の使用。タツノオトシゴや魚が書かれた、「持っている人をもかわいくする」ゴミ袋だそうだ。

2つ目は、ゴミを拾うための特別なトング。ベルマーレカラー!?の緑色のものを利用するそうだ。そして3つ目は、スタンプカード。(1年間約20回のうち16回参加するとゴミ拾いマスターと認定されるという。

最後にこのプロジェクトから始まる将来のビジョンについても言及した。「2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに、このプロジェクトがしっかり(世の中に)認知され、街の意識が高まり、色んなスポーツの後のゴミ拾いにつながって欲しい」と古澤さんは話した。

古澤さんの話の中では「ファンキーに楽しく」という点がとても腑に落ちた。ゴミ拾いに限らずボランティアなどを、黙々と真剣にやるだけでは活動は広がらない。やっている側が楽しみ、そして参加者を見ている人たちも楽しさを感じるぐらいのものでないと普及していかないのだ。自分が行っているゴミ拾いの際にも「真剣にゴミ拾いだけをしない」という点を参加者の皆さんには伝えており、同じような思いなのだと嬉しくなってしまった。

続いて、日本財団常務理事の海野氏より発言。財団の活動の重要な柱でもある、海に関するプロジェクトを、“美しい海”の名前を持つ湘南ベルマーレと一緒にできることの喜びを語った後にゴミ拾いについて以下のように述べた。「小さい取り組みかもしれないが、誰でも簡単にできる。そして(参加した人の)マインドセットを変えられるものがゴミ拾い。大きな問題に取り組む第1歩となる。」

ゴミ拾いのためにゴミ拾いをするのではなく、関わる人の考え方を変えていくスタートの仕掛けなのだと考えているようだった。

3人目は長谷萬代表取締役の長谷川氏。「木が山の環境を作り、そして山だけでなくつながる川や海などもある。これらの繋がりを考えるいい機会だとおっしゃっていた」。実は正直なところ、企業である長谷萬がなぜこのプロジェクトに関わっているのか、今の段階では腑に落ちていない。おそらく今後長谷萬の特徴を活かした新たな仕掛けが出てくるのだろうと続報を待っている。

最後に、株式会社湘南ベルマーレ代表取締役社長の大倉氏が発言。2年前から海さくらと共に海のゴミ拾い活動をしており、今回も単発ではなくしっかりとしたプロジェクトとして一緒にできることの喜びを語った。そして「日本の他のクラブ、スポーツ、世界に広げていきたい」と、今後の展開についても想いを述べた。

質疑応答の際に、3年間と短い期間だがゴミ拾いを行っている自分の経験をもとに1点古澤さんに質問をした。「10年ゴミ拾いをやってきて、今回のプロジェクトの実施にあたり伝えたいノウハウなどはありますか?」。

明快な答えがすぐに返ってきた。「あそこにいけば楽しいと思える場づくりをしたい。そして、『ありがとう』という言葉を目の前の人に伝えあい、愛をもったつながりを作っていきたい」。やはり、「ファンキーに楽しく」ということこそが、このプロジェクトのコンセプトの柱なのだ。

最後に2体のマスコットも加わり記念撮影。黒い謎のマスコットはタツノオトシゴをモデルにした「エノシゴくん」だそう。海さくらのHPにこのマスコットの生誕秘話も載っている。

20分弱と短い時間だったが4者のこのプロジェクトを始めるにあたっての想い。そしてこのプロジェクトの先に目指しているオリンピック・パラリンピックまでも巻き込んだ社会づくりのビジョン。これらはビシビシと伝わってきた。

参加者が、とにかく楽しんだゴミ拾い

その後、自分もベルマーレのサポーターの皆さんと共にスタンドで試合を観戦。セカンドステージの初戦ということに加え、日本代表や元日本代表を多く擁す名古屋グランパスが相手ということもあってかスタジアムはかなりの盛り上がり。さらには日本代表監督のハリルホジッチ氏も視察に訪れていた。

試合前とハーフタイムに流れが20秒間のプロジェクトのCMもかっこよく、サポーターに内容は伝わったはず。

結果としては2―1でベルマーレの勝利。前回、名古屋で対戦した際の大敗の借りを、しっかりと返した快勝劇だった。「勝っても負けてもゴミ拾いに参加していただきたい」と古澤氏、大倉氏が記者会見の際に語っていたが、第1回目のゴミ拾いは勝利の後に実施できることになった。

試合終了後、急ぎゴミ拾い集合場所に向かう。投光器で照らされた集合場所では古澤さんを中心にスタッフの方が呼びかけている。しかし、なんと自分が最初の参加者とのこと。一瞬、「やばい、人が集まらないかも」と思ってしまったが、結果的にまったくの杞憂に終わり、最終的には150人を超える人が集まった。

ゴミ拾い終了後に、参加していた小学生ぐらいの男の子のグループに感想を聞いてみた。「楽しかったよ!!」「大きいゴミ拾ったもん」「みんなでやれて面白かった」と口々に叫んでくれた。子どもが乗り気な企画は全世代を巻き込み成功する可能性が高いという。自分の経験からしてみても、素晴らしい出だしだ。

最後に、海さくらの古澤さんからも一言。「とにかくうれしかった!嬉しすぎて、海につながるということをしっかりと言い忘れたがもういいや。愛をもって楽しく伝えて、丁寧に広げていけるのだ。」と興奮をして話していただいていた。


1年後の人の心の変化を楽しみなる


海野氏も話されたように、ゴミ拾いは誰でも参加できる気軽なものである。しかし、自分の経験からすると実際に一度でもゴミ拾いをすると、街の見方が一変する。ゴミが落ちていることが気になる。ゴミをポイ捨てする人が憎らしくなる。

「Leads to the OCEAN」が1年継続して行われることにより、多くの人のスタジアム周辺の見方、街の見方、そして海の見方が変わっていく過程が楽しみだ。この企画には、単独の団体によって行われるのではなく、サッカーチームのサポーターという多くの湘南好きにアプローチできる4者によるプロジェクトならではの展開がある。その展開が成しえる広がりの大きさにスタートから高い可能性を感じた。

(取材協力:日本財団)

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