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放射能を恐れるのは非合理な行動か?

放射能をめぐる議論がさかんだ。

金融日記で有名な藤沢カズさんが狂ったかのように原発を擁護する記事や放射能は危険じゃないと主張する記事を書いている。内容は興味深いし勉強になるし納得する部分も多い。さすが、カズさん、カッケーと思ってしまう。笑

一方で、やたらと不安を煽るような内容の記事を書いている人もネット上には多く、こちらはこちらで納得する部分も多いが、イデオロギー満載か怖がりすぎだなと思ってしまう。人の命を何かと天秤にかけてはならないという高潔だが現実離れした考え方が反原発派の弱点であることは間違いなくその主張はいまだ変わらないようだ。

カズさんのような人に言わせると放射能を恐れるのは非合理的らしい。本当にそうなのだろうか?

放射能はたいしたことがないと主張する人は「タバコで死亡する確率」、「自殺する確率」、「交通事故で死亡する確率」などと比較して安全だという。僕も確率の問題は大事だから当然だと思う。しかし、この場合にまったく違うのはタバコや自殺の場合は良くも悪くも本人の自由な選択の結果である。また、交通事故で死亡する確率は本人の注意でかなり落とせるものだし、自動車というのは多くの人がそのリスクを受け入れた上ですでに一般に受け入れられて使われているものである。

一方で、「放射能」を今回、個人の自由な選択の結果として受け入れようという奇特な人はあまりないだろう。原発から近いところに住んでいる人たちはそこに生活の基盤があるから仕方なくそこで生活しているに過ぎない。また、放射能は自然界にも存在するといっても、人工的に東電ならびに政府の失敗によって撒き散らされた放射能を受け入れる人はあまりいない。また、どうやれば食物をからの摂取を含めて被曝を避けられるのかという知識は十分に一般に行き届いていない。

しかも、放射能と上記のリスクのトレードオフに人が直面しているわけでもない。

そう考えるならば、上記のようなたとえは「放射能がどの程度危険か」という参考情報には大いになるだろうが、純粋な比較の対象にはなりえないし、それをもって放射能を浴びてもいいと人を説得するにはかなりの無理がある。

また、その被害の影響がはっきりせず長期的なことになるのも人が放射能を恐れる理由だ。チェルノブイリでの死者の数は数百人に過ぎないという報告もあれば数十万人だという報告もある。また、遠くスイスやスウェーデンでも健康被害や子供の知能の低下というような影響が出たという報告もある。

おそらく、原発推進派は被害を少なめに見積もり、反対派は被害を誇張する。こういったイデオロギー対立が今も続いていることはほぼ間違いないだろう。

また、原子力発電には政府が強力に関与していることが常に問題発生時の「情報隠匿」の可能性を多くの住民に想定させるのは間違いない。原子力「不安院」と揶揄され、枝野官房長官の「ただちには」という発言がかえって疑心暗鬼を巻き起こしているのはそういうところから来ているのは間違いない。

冷酷で冷静な議論に基づけば、原発周辺の住民の健康被害が出ても国家としては原発推進がプラスだから、周辺住民には犠牲になってもらおうという藤沢カズさん流の考え方は十分に成り立つ。(これが原発でなければぼくもそういう考えを支持しないわけではない)

しかし、逆に多くの人はそのことを口には出さないものの心の中ではわかっているから政府の発表を信用しないという面もあろう。

このような「政府に対する不信」や「放射能による健康被害に対する評価が定まらないこと」・「イデオロギーに基づいた論争が繰り返されていること」が「放射能」に対する人々の恐怖を必要以上に煽り立てるのは無理もない。(もちろん、必要以上でない可能性もある)

また、通常、「放射能」の影響を受けやすいのは子供や若い女性・妊婦とされる。このことも人々の放射能に対する恐怖を大きなものにしているのは間違いない。通常守られるべき存在が一番被害を受ける。このことに強い嫌悪感を人は抱くはずだ。

また投資でも何でもそうだが、人は通常長期的なリスクをとりたがらない。放射能はまさにこれで、影響が長期的に及ぶ(とされている)から、そんなリスクを引き受けたがる人は少ないのは言うまでもない。たとえとしてはふさわしくないかもしれないが、カキを食べ、食中毒になるかどうかは明日にはわかるというリスクをはまったく違う。

子供を育てるのには常にリスクが伴うのは当然だが、親であれば不必要なリスクはとらせたくないと思うのは当然だろう。そりゃ、外に出かけるだけで交通事故に遭うリスクは多いにあるのだが、ずっと家に閉じ込めていては健康な子供は育たない。だから、外にでかけさえるのは親としてはそのリスクを許容しても子供を健康に育てるためには当然のことだ。一方でいくら政府が直ちには害がないといおうとも放射能で汚染された水と子供に飲ませるのは取る必要のないリスクである。しかも、そのリターンは残念ながら何もない。リスクをとるためにはリターンがあるからで、リターンがないのに大切な子どもにリスクをとらせたくないというのは人としてきわめて合理的だ。

東京よりも放射能が高い地域は世界にいくらでもある。上海やローマもそうだというし、ブラジルには年間10mSVという自然被曝量になる地域もあるという。だから安全だという人もたくさんいるが、そういう地域にいる人は体がそれに適応している可能性があるんじゃないかという面も考慮に入れないといけないだろう。

また、甲状腺がんに関しては多くの人がチェルノブイリでの被曝地域で増えていることを認めているが、「でも、甲状腺がんは予後がいいから大丈夫」とかそういったことで問題ないと主張している人も多い。

しかし、予後がよかろうが悪かろうが、子どもが癌になるのは誰でもいやに決まっている。そんなリスクはなるべく避けさせてあげたいと思うのが親心だろう。しかも、そのリスクには変わりに得るものはない。

それから、高齢者を非難させるのは意味がないということを言っている人もいるようだ。たしかに、高齢者の人にはまったくと言っていいくらい放射能による健康被害はなさそうである。ただ、当該地域で多くの労働している年齢の人々がいなくなるわけだから、高齢者が生活できなくなる可能性は高い。だから、一緒に高齢者も避難するのはこれは仕方ないだろう。

話が最後若干づれた。放射能を恐れる行為は人間が非合理だから起こっているのではなく、これはきわめて合理的な行動だと僕は思っている。

なぜなら、不確実性がまし、情報の非対称性に覆われ他者が信頼ができなくなったときに市場は正しく機能を発揮しないからだ。そういったことが今起きていると僕は思っている。またそのリスクが長期的であることやリスクに決してさらしたくない存在がリスクにさらされようとしている。そのことから、多くの人がリスク回避的な行動に出るのは無理はない。しかも、放射能を受け入れたところで得るものは残念ながら何もないのだから。

放射能のリスクを過剰に煽り立てて反原発に世論を誘導しようという言説にはあきれ果てるが、同時に、放射能は大して悪くないんだとくだらない比較をして、放射能を怖がるのは非合理だと「決め付けている」人たちもどうかしていると僕には思えるのである。市場は短期的にはそんな完璧じゃあないんだから。

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