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「天皇陛下に決めてもらわないといけないような時代にしてはならない」〜田原総一朗氏、小林よしのり氏が語る終戦史(後編)

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質疑応答

-これまで、阿南陸軍大臣はドラマなどでは比較的、主戦論で「戦いとうございます」と言うシーンなんかもあったんですけど、その辺はどういう風に捉えられているのかなと。

小林:旧日本軍はとにかく悪だという感覚が国民の中に一回育っちゃったんですよね。あの戦争をやったのは、結局、軍部だと。だから陸軍軍人は粗暴な人間に描くというように、非常に単純化されていったんですね。

でも、閣議の中での阿南大臣は、やっぱり自分の後ろにいる部下たちが主戦論で徹底的に押してくるから、彼らの顔を潰さないように振る舞う。その振る舞い方が微妙なわけですよね。

それをこの映画はうまく描いているわけですね。やっぱりちゃんと悩んでいると。けど、自分はやっぱり天皇陛下の言うことを聞くと。

田原:結局、自決をすることで、将校たちを抑えるわけね。

もう1つ大きいのはね、いわゆる極東軍事裁判というのがあるね。そこで悪いのは軍とA級戦犯でしょ。国民は被害者だと言う風に決めつけるわけね。

小林:その影響はものすごく強いですよ。国民は全部犠牲者だと決めつけちゃいましたからね。それに洗脳されてしまっているというところもありますよね。

田原:ところが、本当は国民が「やれやれ!」と言ったってことだね。

小林:今も続いている議論だけど、国民がどのように戦争を見るか、これが大事なことで、ただただ「戦争反対だ」とか、「もう日本には全然危険がない」と言うのはおかしいですよ。本当に危機があるのだったら、それもちゃんと見なきゃいけない。

その危機がどのような種類の危機なのか、打開するためには、本当に武力での対応しかないのかどうかっていうことまで見ないといけないんですよ。そこをうまく天秤にかけて考えないと。

-日本に戦略的思考がなく、太平洋戦争も戦術面では勝ったけども、戦略的に弱くて負けたというような議論があるんですけども、現代でも、外交を決めるためのベースである戦略的な発想や体制が必要かと思います。

小林: 今、中国が日中中間線のあたりにガス田を作っていて、軍港にしようとしている。今まで政府はこの情報を隠してたってことですからね。政府が恣意的に情報を操作してしまったらダメですよ。国民が判断する基準が無くなっちゃうでしょ。

田原:あれはね、櫻井よしこさんが産経新聞で最初に暴いたらしいんですよ。

小林:安保法制で支持率が下がったから、中国の脅威を補強しようと。

田原:そのために発表したんだ。

小林:アメリカと開戦するにあたっても、国力の差がどれぐらいあるのか。あるいは出口戦略も考えておかないと。どうやって戦争を終わらせるのかを考えておかないといけなかったですよね。

これは今の政治にも関わりがありますよ。「アベノミクス」って言ってね、お札をバカバカ刷っていって、円安誘導していくというやり方。この出口はどこにあるのと。

田原:借金が1,000兆を超えている。この財源をどうするのか。出口は今のところない。

小林:新国立競技場の問題も、安保法制で内閣支持率が下がらなかったらそのまま作ってましたよ。間違いなくね。

田原:最初は1,300億だったのが、2,520億になったね。

小林:だから、止められないでしょ。原発も同じじゃないですか。止められないんですよ。戦前と全く一緒ですよ。そうすると、止めようという意識が国民の中にどれだけあるかっていう問題になってくる。

イラク戦争だってそうでしょ。大量破壊兵器は絶対ないと。絶対アルカイダと通じているはずがないと。なおかつ、フセイン政権を壊したとして、民主主義国家を作れるのかっていうこと。イスラム圏ではかなり難しいんじゃないのということですよね。

そうなると、ここを壊してしまったら崩壊が始まって危ないと、わしでも分析出来たんですよ。後出しジャンケンで言っているわけじゃなくて、当時の『ゴーマニズム宣言』でも描いてるんですよ。なんで政府がそれを出来ないのって話になりますからね。

だから、情報を仕入れて、どのように分析するのかっていうインテリジェンスが非常に重要。本当は、最もインテリジェンスのできる人間が政府の要職を占めなければダメなんですよね。でも、選んでいるのは国民でしょ。バカを選んでいるだから、みんな(笑)。

官僚の問題もありますよ。ただ湾岸戦争のトラウマだけで、何が何でもアメリカと集団的自衛権をやろうと言い始めたら止まらないってこともありますし。

昔も今も、権力とかお上は頭が良いと思っちゃダメ。バカばっかりだから。やっぱり疑わないとダメなんですね。

-田原さんにお答えいただきたいと思ってるんですけど、あの時の日本人はアメリカが敵だったわけですよね。でも、70年後の今、日本人はアメリカが大好きになっていますよね。なんでこういう変化が起きたのかなと。アメリカのプロパガンダが功を奏して、みんな好きになっちゃったのか。

田原:日本人がアメリカを好きになっちゃたのは、結局、小林さんがダメだと言っている憲法だね。

憲法にはアメリカにとって3つの目的があった。1つは日本を弱体化すると。再び戦争を出来ない国にすると。

もう1つは、日本を徹底的な理想的な民主主義の国にしたと。それで、言論・表現の自由、男女同権、基本的人権の尊重。これにね、日本人は相当しびれたところがある。「いいじゃないか」と。

そしてもう1つ。戦後日本は、経済の発展のためには、エネルギーのほとんどを使ったの。安全保障は、ほとんどアメリカに委ねちゃったんですよね。委ねて、なんとなく安心したと。そこがあるんじゃないですか。

安全保障をアメリカに依頼するってことは、実は外交の主権をアメリカに委ねちゃってるんですよね。今になって、そこに気がついて、さあ、どうするかっていう問題になっている。

小林:安倍首相がアメリカの議会で演説したでしょ。あの時に「日本のアメリカとの出会いは、民主主義との遭遇だった」と言ったんですよ。でも、本当は違うんですよ。よく考えてくださいよ。アメリカとの出会いは、ペリーの砲艦外交ですから。不平等条約を結ばされたわけですから。だから、本当は「アメリカとの出会いは、帝国主義との遭遇でした」って言わなければいけないんですね。

「五箇条の御誓文」の中に「広ク会議ヲ興シ万機公論ニ決スヘシ」っていうのがあるんです。これが、民主主義なんですよ。だから、明治維新の時、すでに民主主義の精神は持ち込まれていて、これをテコにして、自由民権運動がドンドン盛り上がってくるんですよ。

大正デモクラシーの時もそうだったんですね。だから、日本には民主主義の時代があったんですよ。ところが戦中になってからですよ。特に負け始めてから、完全に民主主義が封じられてしまったんですよ。言論統制をやられてしまって、軍部に全部預けちゃったでしょ。議会政治が崩壊しちゃいましたからね。

それで再びアメリカに「俺達が民主主義を教えてやる」って言われて、みんな洗脳されちゃったんですね。民主主義はアメリカから教えてもらったもんだと。安倍首相までがそう思ってしまって「民主主義との遭遇でした」って。それはアメリカは喜ぶよ。野蛮な黄色人種に民主主義を教えてやったんだって思えるんだから。安倍首相も「戦後レジームからの脱却」とかって言ってたのに、安倍首相自身が、完全な自虐主観なんですね。民主主義はアメリカから教えてもらったって話になっちゃっているんですよ。

田原:今の小林さんの話でいうとね。戦争に負けた翌年、昭和天皇が人間宣言をしますね。この人間宣言の時に、昭和天皇が使うのは、「五箇条の御誓文」なの。アメリカの民主主義じゃない。

小林:そうそう。日本人が戦争に負けて勇気を失ってしまうと。アメリカは、民主主義と言って入ってくるだろうと。そうじゃなくて、民主主義は元々あったんだよってことを教えるために、昭和天皇は、「五箇条の御誓文」を引いてくるんですよね。

今の日本人は、憲法のことも政党に任せてしまってね、自分たちで憲法を作ろうという活力もないでしょ?でも、明治時代にはあったんですよ。

以前、憲法改正の論議が始まった時にね、皇后さまが、「五日市憲法というのもありましたからね」という風に言われましたね。それはやっぱり、自由民権運動の中で、民間人が憲法を作った時代もあったのよ、とおっしゃっているんですよ。

-(司会)新国立競技場の問題しかり、もしかすると東芝の問題もそうかもしれませんが、止められない、決められない、責任が分からない、みたいなことが今も問題として出てきますね。最後に、この映画がテーマとしている、終戦に至る歴史から得られる教訓を伺って終わりたいと思います。

小林:とにかく天皇陛下にお出まし願って、最後に決めてもらわないといけないような、そんな時代にしちゃいけませんよ、国民は。自分たちで決めないとダメですよっていうことを言っておきたいと思います。

田原:今またね、そういう時代になりつつある。つまり、今の天皇陛下が憲法を守ると言っているということ。安倍さんが憲法を変えたいと言っていることに対して、また天皇に頼る気持ちが相当出て来ている。

それから、この間、両陛下が激戦地だったペリリュー島に行ったと。その前にはサイパンにも行っていった。だから、戦争はイヤだという気持ちを天皇に委ねたいという気持ちが出てきているように思うね。

小林:ある意味、天皇陛下のお言葉とか、行動には注目したほうがいいと思うんですよね。それは、さっきの「五日市憲法」の話でもそうですけど、とにかく政治的な発言は禁じられていますからね、でも、なんとなく国民にメッセージを送っておられるんですよ。だから、沖縄のこともずっと心に留めておられるでしょ。だって、国民は忘れるんだもん。

政権が進めていくことに対して「ん?どうかな、これは」と。それが国民を不幸に陥れはしないかなと思ったら、なんとなくご自分の行動で示されるんですね。

そこが問題なんですよ。国民が忘れてしまうから、天皇が忘れないようにしなきゃいけないわけですよ。それは国民の側に責任がありますよね。

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