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安全保障は個人の交友関係とは異なる。ー俳優の渡辺謙さんの呟きについてー

俳優の渡辺謙さんがツイッターで次のように呟いている。 この呟きに賛同している人が多いというから、まずは事実を伝えておきたい。
一人も戦死していないというのは、事実に反する。実は、朝鮮戦争の際に日本の海上保安庁に所属していた「日本特別掃海隊」が派遣され、掃海作業が実施され、死者1名、負傷者18名の被害が出ている。「一人も兵士が戦死しない」という事実はない。少なくとも、このとき一名が亡くなっている。また、「戦死」ではないが、訓練中に自衛隊員の方々が命を落とすこともある。彼らの、文字通り命懸けの訓練によって、日本の安全保障は担保されているのだ。この事実を忘れてはいけない。戦争ではなくとも、自衛隊員は命を落とすリスクを背負って国防に従事しているのだ。かれらに対する敬意がなければおかしい。



「どんな経緯で出来た憲法であれ僕は世界に誇れると思う、戦争はしないんだと!」

制定過程に、何か如何わしいものを感じているのは、正しいが、世界に誇るべきは憲法ではない。日本の戦後の平和が担保されてきたのは、憲法のおかげではない。自衛隊と日米安保の存在による。世界に誇るなら、自衛隊と日米安保によって平和を守ってきたという事実そのものを誇るべきであって、憲法を誇るべきではないだろう。いわゆる「平和憲法」があったからこそ、日本の平和は保たれたというのは、虚構に過ぎない。仮に自衛隊、日米安保が存在せずに、日本の平和は守られたのかを想像してみればいいだろう。


「複雑で利害が異なる隣国とも、ポケットに忍ばせた拳や石ころよりも最大の抑止力は友人であることだと思う。」

友人であることは大切なことで、それは否定されるべきではない。しかし、国際社会の中で永遠に友人であり続ける担保はどこにもない。残念ながら、利害の錯綜とする国際社会の中では、万が一に備えておかねばならないのが現実だ。我が国の国民の生命、財産を守るのは政治の責務だからだ。相手の装備が「ポケットに忍ばせた拳や石ころ」程度なら、構わないのだが、残念ながら、もっと強力な軍備を持った国が存在しているのだから、その事実は直視する必要がある。

「その為に僕は世界に友人を増やしたい。絵空事と笑われても。」

これは絵空事だとは思わないし、絶対に必要なことだと思う。私自身も中国人、韓国人の友人がいるが、そういう人々との友情を大切にしていきたいと考えている。

しかし、安全保障の問題は個人の交友関係とは別次元の話だ。

私は渡辺謙さんの出演した「ラスト・サムライ」の大ファンで、渡辺さん自身に含むところは全くない。しかし、こういう何気ない一言が、あまり安全保障について考えていない人々におかしな影響を与えてはまずいと考えて、一言書いておくことにした。

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