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前倒し発行分の国債増発余力とは

 7日のブルームバーグによると、昨年度中に今年度発行予定の借換債を前倒して発行していたため、復興財源として10兆円程度の国債増発余力があると伝えられた。財務省によると、昨年度中に発行した前倒し債は16兆9194億円となり、今年度の国債発行計画に盛り込んでいる前倒し債発行減額による調整分6兆3893億円を差し引くと、10兆5301億円の発行余力があることになる。

 この前倒し債発行分とは何であるのかご存知であろうか。たとえば、財務省のサイトにアップされている平成23年度の国債発行計画における国債発行予定額を見ると、確かに「前倒し債発行減額による調整分」として、6兆3893億円とある。

 さらに平成23年度の国債発行計画には、カレンダーベース市中発行額として各年限別の国債の発行額が記載されているが、そもそも何故、「カレンダーベース」という言葉を使っているのであろうか。

 国債発行については年度ベースとは言え12か月が基準になっていない点に注意しなければならない。前後3か月も加えて18か月で見ておく必要がある。国債には「出納整理期間内発行」と、この「前倒し発行」が絡んでいるためである。

 「特例国債(赤字国債)」の発行にあたり、国会の議決を経た範囲内で、税収等の実績に応じ発行額を極力抑える必要がある。このため毎年度の税収の収納期限である翌年度の5月末までの税収実績等を勘案して特例国債の発行額を調整するために、特例国債の発行時期を翌年度の6月末までとする「出納整理期間発行」の制度が設けられている。この出納整理期間発行は年度末の国債発行による市場への影響を緩和する効果もある。

 さらに、大量の国債発行を円滑に行うために、「借換債」は年度を越えて前年度に前倒して発行ができる前倒し発行が可能となっている。これは翌年度の国債発行額を多少なりとも減額させられるときには借換債を前倒しで発行し、国債の安定消化を図るように調整するためのものである。この前倒し発行額については、毎年度の予算総則であらかじめ国会の議決をうけた限度額の範囲内で発行されている。

 「特例国債」や「借換債」などについて、もし詳しくご存知ない方は拙著「国債の基本とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)などを参考にしてほしい。

 このように国債の発行は出納整理期間内発行と、前倒し発行があり、これを使ってある程度やりくりすることが可能となっている。

 昨年度は発行が予定されていた財投債15.5兆円のうち7.1兆円分の発行が見送られたことなどもあり、今年度の国債発行額に加わる6兆3893億円を除き、結果として10兆5301億円もの発行余力を保持している。ただし、この発行余力分については不測の事態に対応するためのバッファーともなりうる。たとえば東日本大震災規模の地震が首都圏を直撃した際には、一時的にせよ国債発行ができなくなることが想定される。1年TBから10年債は毎月一回あたり2兆円を越える入札を行っているため、それが複数回休債されるだけでもかなりの規模の国債が発行できなくなる恐れが生じる。そういった際にはこのバッファー分によって補うことが可能になる。

 このため、今回の復興財源に10兆円すべてを補うことはできないが、数兆円規模であれば使うことは可能であろう。その分、補正予算に絡んで国債増発を抑えることが可能となるのである。

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