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【同人誌、ボカロにも影響?】妥結直前のTPP知財条項について徹底解説(全文文字起こし前編)

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TPP交渉合意のカギを握るアメリカのTPA=貿易促進権限法案が6月29日、署名され、正式に成立された。この結果、TPP妥結に向けて、日本とアメリカ、そして参加12カ国の合意が一気に進むことが予想される。

コメなどの農作物や自動車の関税ばかりが報道されるTPP問題だが、その中で大手メディアでは詳しく報じられないTPPによる知的財産権の問題。

TPP妥結で、同人誌、ボカロといった二次創作の活動が制限される恐れがある中、今回は実際に、当事者である漫画家やボカロPの方を迎えて、TPPの知財条項について伺った。後編はこちら

【出演】
司会:津田大介(ジャーナリスト・メディアアクティビスト):司会
ゲスト:福井健策(骨董通り法律事務所 弁護士)
中村伊知哉(慶應義塾大学メディアデザイン研究科 教授)
甲斐顕一(ドワンゴ会長室室長)
有馬啓太郎(漫画家)
黒田亜津(ボカロP)
大久保ゆう(青空文庫)※メッセージでの出演

【同人誌、ボカロにも影響?】妥結直前のTPP知財条項について徹底解説 - ニコニコ生放送


二次創作っていうのは、どういうこと?

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津田:今日は、「ボカロも影響?TPP知財条項について徹底解説」と題しまして、TPPの中の知的財産条項に関する緊急生放送をお送りします。なぜこのタイミングで、緊急生放送をやるのかというと、先日、TPP交渉の大きなカギを握るアメリカのTPA法案が出たんですね。これは、大統領貿易促進権限、通称ファスト・トラックなんて言われるんですけど。

TPPの中の、農業とか、保険とか、医療とか、知財とか、著作権とか色々揉めていたんですが、特に日米で揉めていたのが、知的財産著作権。コンテンツ周りのものだったんですが、どうやらそこも妥結をするんじゃないかという観測が出てきており、なぜこのTPA法案がここまで騒がれているのかというところから、本当にTPPってどうなるのかと。

TPPを日本が妥結したら、ボカロ、ニコ生、同人誌、コミケ、そういうものが大きく影響受けるかもしれないということで、その辺りが実際にどうなるのか。問題点、懸念点、そしてそれに対する反対声明をしたい人はするということも含めて、きちんと考える。ニコ生だからこそやらなければいけない番組だということで、緊急生放送をしております。

加えて、今日は実際に創作活動をされているクリエイターの方々をお迎えして、知的財産条項が、実際どのような影響を与えるのか。こちらの方も一緒に考えていきたいと思います。

津田:まず、TPPが日本とアメリカで妥結したら、日本のニコ生業界、同人業界、ボカロ業界、色んな業界ありますけども。

福井:ニコ生業界って業界なの(笑)

津田:色々あります。まあ、二次創作っていうのは、どういうことかということも含めてですね、最初に福井さんに、短い時間で恐縮なんですけれども、出来るだけわかりやすく解説していただければと思います。

福井:本当に短くて、解説するたびに短くなってますけど、今日は10分ですよ。10分でTPPの著作権問題を説明しろというんで。

津田:いつも大体1時間ぐらいでやってますもんね(笑)

福井:帰ろうかと思いましたよ(笑)はい、ではいきましょう。それではみなさん、いつものおトイレタイムですけれども、TPP知財の米国要求というパネルからいきましょうかね。

TPP、これは様々な分野の国内制度を変えろということを中で交渉しているわけですけども、その中でも、著作権などの知的財産権が最大の難航分野であると。ひょっとしたら、これで(TPP)が流れるかもしれないと最近まで言われていたことは、随分知られるようになってきました。

内容は、米国が各国に対して、米国型のルールに揃えて、著作権などを強化しろということを要求し、各国がそれに反発するという構図です。なんで米国がそこに力を入れるかというと、ITや知財、コンテンツの分野っていうのが、米国最大の輸出産業だからです。

直近の数字も、紹介するたびに増えていきますけれども、2013年は、なんと15.6兆円という驚異的な外貨を使用料だけ、いわゆる印税的なものだけで稼ぎだしていますね。儲けはもっとすごく大きいですよ。で、それも大幅な黒字です。

(交渉)内容は、ウィキリークスなどを通じて、米国が何を要求しているかは大体分かっております。非常に長いリストになっていますけれども、今日は時間の都合で2つだけ紹介することにしましょう。

1つ目です。著作権には保護期間というものがありますけど、これを大幅に延長しろって言うんですね。著作権は著作者の生きている間、全部。それからその死後50年間は守られて、それから先は誰でも自由に使うことができる。いわば、社会の共有財産になるわけですよね。しかしながら、欧米はこれを90年代に一律で20年延長しました。その結果、死後70年になります。

それから、他国に対しても「延ばせ、延ばせ」という風に要求するんですね。なんで、要求するかといえば、他国で(著作権)が延びていれば、例えば、ミッキーマウスの寿命もそれだけ長くなる。ということは、著作権収入・権利収入を他国からもドンドン取れるから。お金だけじゃなく、大きな力を発揮できるからということです。

日本でも2006年頃から激論になったんだけれども、その頃には反対論も強くて、延長というよりは、見送られております。その時、どんなことが危惧されたかというと、例えば、延ばしたところで、死後50年も経てば、はるか前にほとんどの作品というのは、残念ながら市場から姿を消している。つまり売られていない。

売られていないものの権利をいくら延ばしたところで、遺族の収入なんか増えやしない。後で紹介するけど、単に使えなくなるだけで、こんなことをやっても意味が無い。ごく一部のディズニーみたいな企業が潤うだけなんだ。

津田:みんなよく言ってましたよね。「ディズニーの著作権だけ永久に保護するから、他は放っておいてくれよ」って話もあります。

福井:それはそれで、どんな世界なんだって気がしますけどね(笑)でも、「それでいいじゃないか」って意見が出るぐらい、ごく一部の権利者しか受益しないということは言われたわけですよ。

2つ目に言われたことは、大体死後50年も経つと、権利っていうのは、死後相続されて、相続人全員の共有になるんだけれども、死後50年といったら、さらにもう1代ぐらい相続されてますから、権利関係がすごい複雑になってくる。権利者が見つからないなんてのはザラにあるわけですよね。

津田:今コメントでね「データあるんですか?」ってあったんですけど、あるんですよ。我々が作ったthinkcというホームページがあって、そこに色んな文献があります。そして、文献へのリンクのデータが膨大にあるので、是非!見てください!

福井:ものすごい力入りましたね。

津田:そうですね。我々が頑張って作ったものですからね。

福井:作りましたね。懐かしくて遠い目になっちゃいますけどね。確かに、本の寿命なんていって、現役朝日新聞記者の丹治さんという方がね。

津田:丹治さんと言ってもあまり分からないですけど、ボカロ記者で。

福井:朝Pですか。

津田:朝Pっていうので、朝日新聞のボカロ厨ですごい有名な。気合が入りすぎちゃった初音ミクが好き過ぎる動画を、朝日新聞のデジタル状で公開して「これはちょっとやりすぎだろ」って言われた人です。

福井:これ以上、的確な説明はないですね。で、そんな風に古い作品っていうのは、権利関係が複雑になっちゃう。ということは、権利者が見つからない。見つからないってことはどういうことか。許可が取れない。売られてないのに、電子図書館で公開しようとしても、許可も取れない。要するに、忘れ去られるだけだろうと。こんなの誰にメリットがあるんだということも言われています。

3つ目、コンテンツの国際収支がアツイ。アメリカと違って日本は、著作権の使用料、いわゆる国際収支は真っ赤っ赤の大赤字なんですよ。年間どのぐらいのお金が海外に流出しているかというと、収支差額で8000億円の赤字です。すさまじいんですよね。それほど、海外、特に北米に著作権の使用料を献上している。延ばしたら、これが当然増えるわけですよ。これをどうするんだということも言われている。

当然ながら、青空文庫に直結影響が出るわけですよ。向こう20年延長されてしまったら、今後20年間新たに著作権が切れる作品っていうのはないわけだから、青空文庫上で発表できるように。世界の人々に向かって発信できる作品が減っていくということが言われている。

もう1つ、TPPで大きな論争になったのは、非親告罪です。ただし、これは、ほとんど日本でだけ大きな論争になっています。何かというと、著作権侵害というのは、刑事罰があるんですね。犯罪なんです。最高で懲役10年、あるいは1000万円以下の罰金という、国際的に見ても、重い法定刑が科されている。しかしこれは、親告罪なんです。権利者が悪質だと思って、告訴をしない限りは起訴・処罰をすることはできない。

これで、このあと出てくるでしょうけど、うまいバランスが取られて、「このぐらいは、まあいいじゃないか。問題視するまでじゃないよ」と思って、権利者が刑事告訴までしなければできてしまう。

津田:YouTubeなんかで勝手にアップされているけれども、「宣伝になるからいいや」と著作者が判断すれば、お咎めが無かったわけですよね。

福井:MAD動画なんかもそうですよね。宣伝になるとまでは思わなくても、取り締まるってほどじゃないよと。そこまでじゃないよってことが、うまく共存できてた。

津田:これが非親告罪化すると、別の人が「あれ?これ、勝手に人の権利が侵害されてるんじゃないか」っていうのを、まさに「通報しますか」ってなる。関係ない人が通報したことによって、著作者は「まあいいか」と思っていても、逮捕される可能性が出てくるってことですよね。

福井:まあ、そういうことなんですよね。これからは、権利者が悪質だと思っても、告訴をしていない時でも、警察が起訴処罰できることになるわけ。そうすると、第三者通報があっただけでも、問題視されちゃうかもしれない。

津田:これもう、ニコ生終了のお知らせじゃないですか。ニコ動もニコ生も(笑)でも、そういうことが今日の論点の1つであるってことですよね。

福井:実際ね、自粛が広がるのが恐いですよね。現に、起訴処罰化される問題以前に、通報されるのは恐いから、ガイドラインを作って、やめちゃおうとか、抑えちゃおうっていう萎縮は十分有り得ると思いますよ。

津田:なるほど。

福井:それで何が影響を受けるかって話になると、例えば、パロディなんかが影響受けやすい。(画面にドラえもんそっくりのイラスト)

津田:大丈夫ですか?許諾取ってなかったら、我々がみんなで通報する時ですよ。

福井:引用でございます。

津田:これは適法な引用ですね。でも、これ本物ドラえもんじゃないですよね。下に、書いてあるから。田嶋・T・安恵って。

福井:これはネット上でも、かなり話題になったので、ご紹介しておくと、いわゆるパロディ同人漫画ですよ。ネット上では非常に評価が高かった。

津田:出来が良すぎちゃって、ネットで拡散されすぎちゃって、そこから裁判に…みたいな。

福井:ネットだけなら、まだよかったかもしれないけど、これは常設展で販売して、確か600万以上、売り上げてます。で、やり過ぎとみられると叩かれるっていうのは、これまでもあったんです。ただ、やり過ぎとみられないものが、共存できていく。ある種の阿吽の間合いもあったんです。こんな風に問題視されるものは少数派だった。

津田:そのバランスがTPPで変わる可能性が出てくるってことですよね?

福井:権利者がそこまで問題視していなくても、起訴処罰されるかもしれない。そのために、バランスが崩れる。二次創作文化の良い部分っていうのは、グレーなバランスの中で生きてきたので、少なくとも大幅な見直しを迫られるかもしれないってことを言われたわけです。

で、これらのメニューについて、最近の報道によれば、TPP交渉は、非親告罪化もその方向で調整しているとNHKが伝えていました。報告機関も、死後70年受け入れの方向で調整しているということが言われた。

政府はそのたびに「誤報だよ」とは言うんだけれども、何度も何度も同じような報道が繰り返されるし、どうも交渉の方向性が覆うべくもないかなという状況になってきている。こういう中にあって、さっき津田さんも言ったように、ちょっと冷静になって考えようと。

TPP自体に反対というわけではない。でも、交渉の内容が秘密過ぎるから、もうちょっと公開してくれ。みんなに考えさせてくれ、みんなの意見も言わせてくれ。もし、それが出来ないんだったら、知的財産みたいな柔軟性が必要な分野は、TPP交渉から出来るだけ降ろしてくれ、落としてくれということを提言した。

クリエイティブ・コモンズ・ジャパンや、thinkCなどの連盟で、こういう提言を出したり、シンポジウムなどを開催したところ、非常に多くの団体が賛同し、共同声明を出してくれるに至りました。

ただ、ここにきて、アメリカでちょっと気になる動きがありました。TPAっていうのを、新聞なんかでご覧になっているかと思いますけど、実はTPP交渉は妥結直前と言われていながら、しばらく止まってたんです。

なんでかっていうと、アメリカの議会待ちだった。アメリカの議会で、いわゆる貿易促進権限と言われる、強い交渉権限を大統領に与える法案が、議会に通るかどうか、極めて微妙だったんです。一時は絶望って言われたんですね。それが、このTPAという法案なんです。

詳しい話は飛ばしますけれども、要するに、議会の条文ごとの承認まで受けなくても、大統領の権限で、条約については、かなりフレキシブルに交渉して。最後に一括してイエスかノーかで議会は承認してくださいっていう議会の承認の取り方が出来る権限を与えることになっています。

これが出来るとTPP交渉は、あとは一気に妥結にいくだけだということが言われていた。でも通るかどうか微妙だ。7月末までに何とか通ると話していたところ、先日一気にこれが可決成立してしまった。

津田:なんで通ったんですかね?

福井:米国内では、共和党などは自由貿易には大賛成で、出来れば通したい。一方で、TPPのような自由貿易には、米国内にも反対意見がある。労働者が海外の安価な労働力に流入することなどによって仕事を奪われてしまう。だから、労働者保護をもっとやってくれと。労働者保護をやってくれと言われると、共和党なんかは二の足を踏むわけなんです。

随分、紆余曲折あったけれども、共和党、民主党の間の話し合いがついたような形になって、この法案を通しましょうよと。ということで、一気にTPP可決となると、さっき挙げた保護期間延長や非親告罪が通っちゃうのかなっていうのが、直近の情勢ということになると思います。

津田:なるほど。分かりやすい説明ありがとうございました。(中村)伊知哉さんに伺いたいんですけれど、日本のコンテンツの輸出入も含めて、相当影響を受けそうなんですけれども、TPPの条件が向こうから突きつけられてきた時に、向こうのコンテンツ業界の反応、もしくは政府っていうのはどういう方針だったんですかね?

中村:この件を、政府で何度もちゃんと議論しなきゃいけないじゃないかっていう声は、産業界からもユーザの方々からもあったんで、政府にどんどん意見として出してたんですけども、交渉中だし、情報が出てこないから、「ちょっと待っててくださいよ」ってことで、今日まで来てるんですね。

津田:なるほど。ずっと待っててくださいよのままなんですね?

中村:そうなんです。先週の金曜日に政府の知財計画っていうのが、官邸で会議があって決まりました。そこでTPPについて書いてあるんです。簡単に読み上げると、「TPP協定については、産業界を始めとした関係者の意見を踏まえつつ、国益にかなう最善の結果を追求する」となっていて、要するになんにも言ってないんですよ。

「どうなるかわからないから、それからだよね」っていうところで来ましたと。オバマさんが頑張っちゃって、今回TPPが通るってことになると、一気にザッと行くかもしれないねってことで、もしこれで政府が妥結して、国内に帰ってきちゃったら、どうするかって、そういう場面になるんだろうと思います。

津田:そういう意味じゃ、コンテンツ業界、政府の一部の人間しかこの問題に関わって来れなかったというのが、ずっとTPPで問題視されてきた秘密交渉っていう部分でもあって。クリエイターが意見を表明したり、対案作りみたいなものに全く参加できない状況だったということがあるわけですね。

中村:農業の話だと農家が大変だって言って「反対!」という一辺倒なんですけども、知財の問題って権利者もあれば、ユーザもあって、意見の調整がそもそも難しい状態だったから、「こうだよね」って意見がはっきりしていなかったところもあって、国内的にも盛り上がりが欠けていたこともあったんだけども。

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