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「命を育み、命を守った『鎮守の森』を再生しよう」 多賀城市の八幡神社で開かれた植樹祭に 地域住民・ボランティア1000人が参加

地域の人々と歩んできた「鎮守の森」の役割とは


 神社の境内にいると何度も霧笛が聞こえてきた。そこから海は見えないものの、音までの距離は近い。

 宮城県多賀城市宮内にある八幡神社は海から1kmほど内陸にある神社だ。2011年3月11日に起きた東日本大震災では多賀城市内で188名が亡くなった。八幡神社のある宮内地区は市内で最も大きな被害を受けた場所の一つだ。

 八幡神社にも高さ3メートルの津波が押し寄せ、鳥居や社務所だけでなく、境内の倉庫に保管していた神輿も破壊された。津波が押し寄せた時、当時の宮司は高さ約1.5mの基礎の上に建つ本殿内に椅子を置き、その上に立って津波をしのいだという。その時、津波は宮司の首まで達していた。

 津波が街を襲う前、八幡神社は本殿の後ろまでをすっぽりと囲む杉の木を中心とする約800本の鎮守の森に守られていた。なかには直径1mもの大木もあった。神社の周囲には多くの住宅があり、人々の生活があった。

 八幡神社の総代長を務める江口健さん(76歳)が、震災前の八幡神社の思い出をこう語る。

「八幡神社の近くにはうちの畑があったから、小学生の頃は鎮守の森で虫捕りをしたり走り回ったりしてよく遊んでいました。毎年4月にはお祭りがあって、お神輿や子ども神輿を担いで街中を練り歩いたんです。私のような氏子だけでなく、地域のみなさんもお祭りを楽しみにしてくれていて、お祭りはいつもたいへんなにぎわいだったんです」

 そんな地域を大津波が襲った。津波の後も鎮守の森の杉の木は立っていたが塩害によってしだいに枯れはじめ、倒木の危険があるためすべて伐採されることになった。周囲の住宅の多くも地震と津波により解体を余儀なくされた。この土地を離れざるを得なくなった住民もいた。緑豊かでにぎわいのあった風景は、震災後、緑のない平坦な風景へと一変した。

「それでも」
 と、現在の宮司・鍵三夫さんは言葉をつなぐ。

「津波によって海側から流されてきた車や倉庫を、八幡神社の鎮守の森が食い止めたのです。幸いなことに神社の本殿は修理することで残せる状態でしたし、神社よりも内陸側にある住宅の被害を最小限に止めることができたのです」

 地域の人々とともに歩んできた八幡神社。その鎮守の森で育まれ、鎮守の森に救われた命もあったのだ。

 ちなみに境内で伐採された800本のうち、200本ほどは材木として利用できる状態だった。そのため多賀城市の福祉施設や仮設住宅のベンチなどにも利用されている。

この木を植えた子どもたちとともに大きく豊かな森に育ってほしい

 2015年6月14日、震災によって失われた八幡神社の鎮守の森を再生させようと、地域住民・ボランティア約1000人が集まって6024本の苗木の植樹をおこなう「みんなの鎮守の森植樹祭」が開かれた。

 これは日本財団が岩手、宮城、福島の3県で被災した神社を対象に2012年から行なってきた震災復興支援策「鎮守の森復活プロジェクト」の一環だ。同プロジェクトはこれまでに被災3県の10か所で植樹祭を行なっており、11か所目となる今回は参加人数、植えた苗木の本数ともに過去最大規模だ。苗木を植えるための土壌改良費や苗木代などに必要な1777万円は、日本財団の「地域伝統芸能復興基金」から支援されている。

 同プロジェクトの目的は、鎮守の森の再生を通して、地域のお祭りや伝統文化の復活、地域の人々と鎮守の森をつなぎとめることだ。そのため植樹祭の前には地元の民俗芸能「鹿踊(ししおどり)」の演舞が多賀城鹿踊保存会により奉納され、会場に集った参加者たちの目を楽しませた。

 また、植樹祭開会式では被災者への黙祷、来賓挨拶に続き、『Dr.スランプ・アラレちゃん』のアラレちゃん役で知られる声優・小山茉美(こやま・まみ)さんによる『古事記』の読み語りも奉納された。

 植樹祭当日に八幡神社を訪れると、境内の敷地1279平方メートルの周囲には、本殿をコの字型に取り囲む形で「マウンド」と呼ばれる植樹のために土壌改良された土手が造成されていた。用意された苗木は、タブノキ、シラカシ、アカガシ、ヤマザクラ、サカキなど25種類。監修をしたのは横浜国立大学名誉教授の宮脇昭さんだ。

 参加者たちは「地球の緑を育てる会」理事長の石村章子さんから、 「『タブノキ一本、消防車一台』と言われるほど防災に役立つ木です」  などの植樹指導を受けた後、一本一本、心をこめて植樹していった。

 植樹祭に3歳の子どもと参加した多賀城市内在住の母親は、 「この子たちの成長とともに鎮守の森も大きくなっていく。自分で植えた小さな苗木が大きな森になっていく様子を親しみを持って見てほしいと思って参加しました。『この木は自分が植えたんだよ』って。早く大きくなるといいですね」  と、笑顔で語った。

 前出の八幡神社総代長、江口さんが言う。
「震災から4年が経ち、まだまだ元の街の姿には戻っていないけれども、徐々に、徐々に復興は進んでいると思います。まもなく神社のそばには災害復興住宅も建てられますから、震災でこの土地を離れざるを得なかった人たちも半分くらいは戻ってきてくれるのではないでしょうか」

 豊かな土壌に根を張り始めた、まだまだ小さな鎮守の森。すぐに元のような姿に成長するまでには時間がかかるだろうが、地域の人々に見守られながら復興を目に見える形で示してくれることだろう。

(取材協力:日本財団)

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