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『朝まで生テレビ!』の与党議員の出演拒否に見るメディアと政治のパワーゲームの変容

名物司会者田原総一朗氏のもとで、長く続く、テレビ朝日の名物討論番組『朝まで生テレビ!』(以下、「朝生」)だが、先日6月26日深夜放送「激論!若手政治家が日本を変える?!」の回に、与党議員の出演拒否があった。そもそも番組内容の告知が遅い同番組だが、前日になってもテーマや出演者が公開されない状態だった。その経緯については、下記のWebニュースなどにも簡潔にまとめられている。

田原総一朗、自民にブチ切れ 朝生「不参加」に、机叩きながら「逃げた!」
http://www.j-cast.com/2015/06/27238859.html
田原総一朗氏、「朝まで生テレビ!」で自民党議員らの出演拒否を明かす
http://news.livedoor.com/article/detail/10279915/

朝生といえば、1987年に始まった、さまざまなタブーや、激しい対立が生じるイシューに、田原氏の長年培ったネットワークを用いて、賛否両方の論者や当事者を舞台に立たせたうえで、原則生放送、長時間で行う、討論番組の草分け的存在である。

また田原氏もただのジャーナリストではない。自身の著書等で、「3人の総理大臣を失脚させた」ことを豪語する、ジャーナリストである。そして、むろんその完全な実証こそ難しいものの、それだけ田原氏と朝生は政治に少なくない影響力を持ってきたし、タブーに切り込んできた。政治の側も一目置いてきた。

それだけの実績があるからこそ、政治の側も田原氏をインサイダーのひとりとして扱い情報を提供してきたのだろうし、従来の日本の「ジャーナリズム」にとって、こうした情報は不可欠なものでもあったといえる。従来の日本のメディア環境を念頭におくとき、その情報は確かに政治に対峙するパワーの源泉になったはずだ。

ただし、田原氏の名誉のために付け加えておくと、かつて、官房機密費からジャーナリストへの資金提供が明らかになったとき、ただ一人受け取らなかった人物として挙げられているのが、田原氏である。雑誌で対談させていただいたり、朝ナマや、何度かクローズドな会を含めて、何度かご一緒させていただいた主観でも、カネで動機づけられるタイプの人物ではなさそうである。

ただし、やはりメディアと政治の、ゲームのルールが変わりつつあるといわざるをえない。政治の側が、よりメディアを短期的な視点で、かつ積極的に、自らのプロモーションに活用しようとしているように見える。言い換えるなら、共存・協調関係から、対立・コントロール関係へと舵を切っている。政治はメディアに対して、戦略的に対峙するという態度をより鮮明にした。それに対して、メディアの側はあまりに無力かつ、伝統的な報道手法の範疇に留まっている。

出演拒否というのは、考えてみれば、メディアの機能を考えてみれば実に効果的な手法でもある。田原氏のメディア的、政治的パワーの源泉のひとつが、「対立する陣営を、ひとまずひとつのテーブルにつかせて、議論させる」ことにあるとするなら、見事にその弱点を突いている。これまでインサイダーにおいたメディア関係者との長期的な信頼関係づくりが、両者にとってメリットがあったが、場合によっては、そのゲームには乗らないというメッセージといえる。それは田原氏の朝生であっても例外ではない、ということが端的に示されている。

また自民党と公明党を欠いた番組のもとでは、評論家らに野党の出演者が撫で斬りにされる構図となった。冒頭などにも説明があったように、本来は出てこない与党の問題を考えるべきだが、しかし、実際に出演したがゆえに、露呈してしまった野党の「弱さ」を目にしたとき、「実際には目にしていない」与党に対する批判は野党への支持へとつながるだろうか。甚だ心許ないものである。

ここでも、これまで幾度かにわたって、メディアの変容について、扱ってきた。

NHKとテレビ朝日の聴取は、歴史的に見ても、業界自粛を促す、政治からの効果的なアプローチ- Y!ニュース
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryosukenishida/20150416-00044870/

NHKとテレビ朝日聴取問題における政治からメディアへの「圧力」の本質はどこにあるのか- Y!ニュース
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryosukenishida/20150419-00044945/

社会に政治を理解し、判断するための総合的な「道具立て」を提供せよ――文部省『民主主義』を読んで- Y!ニュース
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryosukenishida/20150405-00044539/

むろん、田原氏に象徴される、従来型ジャーナリズムにもメリットとデメリットがある。そのメリットを継承しつつ、デメリットを補完する手法を開拓することが、とくに規模の大きな従来型マスメディアにとって、経営的にも、国民の信頼という点でも急務だろう。

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