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世界は変えられる! デジタルアートへの挑戦【1】 -対談:チームラボ代表 猪子寿之×田原総一朗

村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影 世界で100万人――猪子寿之氏率いるチームラボの企画展に訪れた人の数だ。「21世紀の日本をつくってほしい人」と田原氏が評する彼の話は、日本人の美意識からデジタルテクノロジーの可能性、そして教育の未来にまで及んだ。

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世界は変えられる! デジタルアートへの挑戦【2】 -対談:チームラボ代表 猪子寿之×田原総一朗 - 田原総一朗の「次代への遺言」

日本の美はデジタルと好相性

【田原】今日は対談の前に、日本科学未来館で開催されている企画展「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」を猪子さんに案内してもらいました。とても刺激的な内容で、楽しかった。

【猪子】ありがとうございます。

【田原】この企画展は、「踊る!アート展」と「学ぶ!未来の遊園地」の2つが一緒になったものだそうですね。まずアート展のほうから聞かせてください。「踊る!」というのは、どういう意味ですか。

【猪子】アートって、いままでは立ち止まって見るものでしたよね。でも、僕らのアートは動きながら見てもいい。それと同時に、お客さんが動くことでアート自体も変わる作品になっています。だから、お客さんも踊るし、アートも踊ると。

【田原】僕が一番おもしろいと思ったのは「世界はこんなにもやさしく、うつくしい」(写真参照)という作品。壁に「花」とか、「鳥」「雨」「虹」といった漢字が映し出されて上から下に流れていくのですが、たとえば「木」の字に触ると、文字が絵に変化して三次元的に表現された木が出てくる。続けて「鳥」に触ったら、字が鳥になって、さっきの木にとまった。おもしろいから、たくさん触りました。

「世界はこんなにもやさしく、うつくしい」(書家・紫舟との共作)

【猪子】田原さん、動く字に触ろうとして思わず駆け足になったでしょ。あれが「踊る」ということです。

【田原】なるほど。アートを見ながら走ったのは初めてだ。ところで、動きながらアートを見るという発想は、どこから出てきたのですか。

【猪子】じつは、デジタルは日本古来の空間認識と相性がいいんです。だから歩きながら見てくれていい。

【田原】どういうこと?

【猪子】日本古来の空間認識は、西洋の空間認識と違います。西洋の絵画って、全体が視野に入る位置まで離れて、1カ所で見なきゃいけないでしょう。写真とかビデオもそう。それに対して、日本古来の空間認識は必ずしも全体を見なくていいし、視点が動いてもいいんですよ。

【田原】絵巻がそうですね。絵巻は巻かれていることが前提だから、そもそも全体が見えない。

【猪子】そうです。だけど、江戸末期まで発達していた日本古来の空間認識は、産業革命以降の近代で1回滅びてしまった。マンガやゲームの世界ではこっそり残っていたんだけど、表向きは消えてしまった。

【田原】それを表現したの?

【猪子】デジタルは日本古来の空間認識とすごく相性がいいから、一度は消えた日本古来の空間認識がふたたび花開くんじゃないかと僕らは主張しています。だから作品も自由に歩き回って見てもらっていいんです。

【田原】最新のデジタルテクノロジーが日本古来の美を復活させるというのは興味深いですね。やはりデジタルは可能性を秘めていますか?

【猪子】僕らは、「デジタルという概念が美を拡張する」と言っています。いままで美というものは、物質があって存在していました。たとえば絵は、紙と絵具という物質に情報を付随させてはじめて存在できる。これって、不自由でしょう。でも、人類はデジタルという概念を手に入れて、物質に媒介させなくても情報を単独で存在させられるようになった。それによって、人間が表現したものはすごく自由な存在になった。

不変のアナログ、可変のデジタル

【田原】ちょっと難しい。具体的にいうと、どういうことですか?

【猪子】今日見てもらった中に、「お絵かき水族館」がありましたよね。子どもたちが紙に魚の絵を描いて、それをスキャナーで読み取ると、壁に映し出された水槽の中でその絵が魚になって泳ぎ出すという作品です。

【田原】ああ、あれもおもしろかった。

【猪子】田原さんにもクラゲの絵を描いてもらいましたが、ただ描くだけでは紙とクレヨンという物質から切り離すことはできません。でも、スキャンして情報として取り込むことで描かれたクラゲは、物質から解放されて、泳がせたり、形を変えたりできる。このほうがずっと自由でしょ。

(上)「お絵かき水族館」と(下)「花と人、コントロールできないけれども共に生きる、そして永久に—Tokyo」

【田原】なるほど。アナログの絵は変えられないけど、デジタルは変えられるわけか。

【猪子】可変であることで、いろんな可能性が広がると思うんですよ。たとえばさっき見てもらった「花と人、コントロールできないけれども共に生きる、そして永久に―Tokyo」だと、田原さんが立ち止まって花を見ていても、まわりに走り回る人がいれば花は散っていきます。つまり、自分の動きだけじゃなく、隣の人の振る舞いでもアートが変化するわけです。そうなると、隣にいる人の存在が気になるじゃないですか。つまり同じ空間にいる人の関係性をアートが変えていく。デジタルはそうした可能性を持っているというのが僕らの主張です。

【田原】おもしろい。そういえば、本物の花を使っている作品がありましたね。あれはデジタルじゃなくてリアルな花が天井から吊り下げられていたけど、僕が動くと花も動いた。

チームラボ代表 猪子寿之氏 「Floating Flower Garden―花と我と同根、庭と我と一体」にて。

【猪子】「Floating Flower Garden―花と我と同根、庭と我と一体」ですね。あの作品は、空気中から水分を吸って生きられる花を使っています。人が入るとセンサーが感知して、鑑賞者のまわりの花がモーターで引き上げられ、半球状の空間ができる。鑑賞者同士が近づくと空間が一体化するから、これも関係性を変えるアートの一つです。

【田原】作品名もユニークですね。

【猪子】もともと日本の禅の庭は、山の中で自然と一体化するために修行していた禅僧の修行場として生まれました。それをもとにもう一回庭をつくろうとしたのが、この作品です。作品名は「天地と我と同根 万物と我と一体なり」という禅の言葉から取りました。世の中のもののすべては同じルーツで、自分と一体であるという意味ですが、まさに花や庭と一体になる自分を感じてもらえればいいかなと。


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