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パラリンピックの成功は、ノーマライゼーションを進める絶好のチャンス。厳しい環境下でメダル獲得を目指すパラリンピアンたちを支援する組織が発足!

資金難から手弁当で大会に出場するパラリンピアン

2020年の東京五輪へ向けた関心が、日々高まっている。が、ニュースを見ていると、「新国立競技場は完成するのか?」や、体操、水泳など、日本が伝統的に「強い」といわれる競技の注目選手などの話題が中心だ。障がいをもちながら五輪を目指す「パラリンピアン」たちへの注目は、それほど高くないように感じる。たしかに、華やかな活躍が期待できる分野への関心が高まるのは当然だが、オリンピックはパラリンピックとセットで成功させるものだ。日本オリンピック委員会(IOC)の憲章には、「スポーツの実践はひとつの人権。何人もその求めるところに従ってスポーツを行う可能性を持たなければならない」とある。

競技に向けられる社会の関心度は、「財政支援の多寡」に比例する。特にパラリンピックの競技団体への支援は、それ以外と比べて少ないのが現状だ。一般の競技団体には、合わせて15億円もの資金援助があるのに対し、パラリンピックの競技団体に対しては、なんとその「20~30分の1」の援助しかなされていない。

「そもそも選手の人数が違うから、差があるのは仕方ないのでは?」と思われるかもしれないが、実は、パラリンピアンの人数はオリンピック選手の2分の1。かなりの人数だ。それなのに、競技団体への資金援助が「一般団体の20~30分の1」という数字は、明らかに社会的な関心度の違いを反映した「格差」だろう。

選手たちは、せっかく競技の才能がありながら、資金難から手弁当で試合に出場し、仕事をもちながら、合間に練習をしなければならないケースも多い。その練習場さえ、確保が難しい場合もある。

パラリンピックを目指す競技団体に資金と事務所を提供

こうした現状を打破しようと先日、「パラリンピックサポートセンター」が設立された。センターの目的は、“パラリンピックムーブメント”を促進するための、包括的な「支援事業」を行うこと。日本財団が100億円を拠出し、日本財団ビルのワンフロアを競技団体の共同事務所として貸し出すという。最高顧問には、森喜朗元首相が就任。特別顧問には都知事の舛添要一氏と、下村博文文部科学大臣が就いた。そうそうたるメンバーで、数年後に迫ったパラリンピックと、その選手たちを支援する体制構築への意気込みが感じられる。

ちなみに設立記者会見には、100人以上の報道陣が詰めかけ、会場に入れない人も大勢いた。もしかしたら、その数日前から話題になっていた「新国立競技場の未完成(疑惑)問題」について、下村大臣にコメントを求めたいという記者たちの思惑も、あったのかもしれない。パラリンピックサポートセンターの設立会見なのに、記者たちの目的は一体……?と、やや勘ぐりたくなってしまうほどの「詰めかけぶり」だったが、ともかく「パラリンピックサポートセンター」の目的と可能性をじっくりと聞くのが、筆者の目的だ。以下、レポートしたい。

ロンドン五輪は、パラリンピックの成功があってこその「高評価」

都知事の舛添要一氏は、12年に五輪が開かれたロンドンを視察してきたという。ロンドン五輪は、近年の五輪に比べ「パラリンピック」への注力が目立っていた。五輪開催にあたって、街のバリアフリー化を進め、車椅子の人も通行しやすいまちづくりが目指されたという。卵が先か鶏が先かの議論になるが、そうした取組みを進めた結果、パラリンピックとパラリンピアンたちへの理解が進み、ロンドン五輪は世界的な評価を得た。舛添要一氏は、日本もロンドンを参考に、「首都である東京のバリアフリー化を進め、東京パラリンピックを『通過点』にしたい」と語った。

「日本パラリンピック協会」の会長、鳥原光憲氏は、次のように述べる。

「東京五輪をきっかけに、障がい者スポーツへの理解を促進したい。(1)障がい者がスポーツを日常的に楽しめるような社会が実現すれば、それを土台として、(2)世界トップレベルのパラリンピアンの育成も可能になる。(1)と(2)が好循環を生むと確信している。結果として、国民の『障害者スポーツ』への理解も広まるはずだ」

鳥原氏はまた、「パラリンピアンたちが現役を引退した後のキャリアについても、しっかり考え取り組んでいきたい」と述べた。引退後のキャリアの問題も、パラリンピアンたちには大きくのしかかっている。

現役選手たちからは、厳しい現状を訴える声

現役のパラリンピアンたちからも、リアルな声を聞くことができた。一般社団法人「日本パラリンピアンズ協会」会長で、水泳の河合純一選手は、92年のバルセロナ大会から96年のアトランタ、00年シドニー、04年アテネ、08年の北京、そして12年のロンドン大会と、通算獲得メダルは「金5・銀9・銅7」という輝かしい実績をもつ。そんな河合選手は、

「とにかくパラリンピアンたちを、『人を育てる』という観点から支援していきたい。パラリンピアンが長く活躍し続けるのは、難しい現状がある。引退後の雇用、就労の場についても考えていかなければならない」と述べた。

「日本パラリンピアンズ協会」理事で、射撃の田口亜紀選手も登壇。彼女は04年アテネ大会、08年の北京、12年のロンドンと出場し、10年のアジアパラ競技大会では、銅メダルを獲得している。田口選手は言う。

「パラリンピアンたちは、手弁当で協力しあっている。強化合宿も、皆でまとめて航空チケットを取って、できるだけコストを抑えたり、仕事の合間に練習時間を確保したり……なかなか競技に専念できる環境が整っていないのが現状だ」

世界的に「パラリンピック」への関心が高まり、支援体制も整いつつある中、日本は後れを取っていると言わざるをえない。

長期的にパラリンピアンたちを支援する仕組みづくりを

パラリンピックサポートセンターは、2021年までの時限組織だ。その間に、パラリンピックの普及・啓発活動、パラリンピックを支援するボランティアの育成、パラリンピック競技団体の活動を強化するためのスタッフ雇用・バックオフィス支援、アスリートが競技に集中するための環境整備など、多くの事業を行う。日本財団の100億円を資金源のひとつとし、パラリンピックの学術研究も行う予定だ。大きな目標としては、障がい者の文化・芸術支援(障がい者による文化活動の推進)も掲げる。スポーツに限らず「障がい者の表現活動」への支援は、日本財団がこれまで力を入れてきた分野だ。かなり期待できると思う。

2021年までの時限組織とはいえ、3.11の被災地への復興支援が今も続くようにパラリンピックサポートセンターの活動が、東京五輪の終了と同時に打ち切られることはないという。五輪までに、障害者スポーツに関わる人材育成をおこない、その後も長くパラリンピアンたちを支援する仕組みづくりを進めることが重要だろう。パラリンピック、障害者スポーツに力を注ぐことは、マイノリティを含むすべての人が平等に社会参加し、生活の権利を保障する「ノーマライゼーション」の考え方と合致する。パラリンピックサポートセンターの設立をきっかけに、こうした流れが日本でも促進されることを願う。

(取材協力:日本財団)

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