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太田出版は元少年A手記の「社会的意味」を具体的に、丁寧に説明せよ

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元少年Aの「手記」である『絶歌』(太田出版)について、書く。自分の違和感の備忘録にすぎない。ただ、私が考えていること、感じていることをまとめておくことにする。

最初に昨日、私に起きたことについて。

盟友中川淳一郎がこの本の「書評」を書いていた。それを私は午前中に読んだ。

『絶歌』と版元の太田出版は、ただの外道である いまだに悲劇の主人公ぶる幼稚な酒鬼薔薇
http://biz-journal.jp/2015/06/post_10431.html

朝から、黙って泣いた。

この本や、出版社、編集者に対する怒りが綴られている。感情論や私的体験だと言う人もいるだろう。しかし、彼の心からの叫びであり、強い主張だと感じた次第だ。

さらに言うならば、文中に出ている中川の自殺した婚約者を、彼に紹介したのは私だし、交流もあったし、その日のことも克明に覚えているわけで。

いや、夜に、彼を誹謗中傷するエントリーが、はてな匿名エントリーに掲載されていて、胸が傷んだ。非道い。はてなという会社は、こんなエントリーをよしとするのか。

馬鹿じゃねえの。<中川淳一郎の『絶歌』批判について>
http://anond.hatelabo.jp/20150620221518

その後、私は散歩に出かけ、近所にあるソラマチの書店に寄ってみた。別にあの本を買いに行ったわけではない。書店に寄るのは、本好きとしては当たり前のことなのだ。

あの本が、並んでいた。又吉直樹の『火花』の隣に。

率直に自分の心境を言うとしたならば、並んでいてほしくなかったという感じだ。売り切れ続出の書店、あるいは並べることをやめた書店があると聞いていたので、出会わないと思って書店に出かけたのだが。

立ち読みをしてしまった。しかし、しばらく読んで、私はこの本を置いた。


買わなかった。


そして、怒りがこみ上げてきた。


この本に関する、私の考えを述べることにしよう。一部は、はっきり言って論者失格というか、甘いと言われる部分もあると思う。しかし、これもまた私の意見なので、まとめておくことにする。

前提として、犯罪者、しかも凶悪事件を起こした人にも表現の自由、言論の自由は守らなければならないと思っている。そもそも、このような「人類の過ち」は記録し、共有するべきだと思っている。そして、そこから教訓とすべきことなどはあるのだと思っている。日本においても永山則夫を始め、過去にも凶悪犯が書籍を発表してきた。

国家を誤った方向に導いた独裁者の本、戦争を記録した本などについては、私は出版することには賛成である(ただし、表現方法、共有方法は考えなくてはならないが)。

一時、東浩紀氏などが、福島第一原発などの観光地化など、ダークツーリズムを提唱していたが、私はそれも賛成である。これも人類の過ちの記録だ。

学問も「不謹慎」と言われかねないような問題、デリケートな問題に取り組んできた。それこそ、社会学の古典であるエミール・デュルケームの『自殺論』も、自殺という倫理観を問われかねないテーマに社会学的に切り込んだものである。

何もかも、人間が行ったことである。発信すること、記録することには総論では賛成である。そして、対象に対して問いをたて、立ち向かわなくてはならない。

問題は、そのやり方と、倫理観だ。

私が、この本に関する騒動、さらには立ち読みして感じて疑問に抱いたのは次の点だ。

1.太田出版の社長、編集者などがメディアを通じ「社会的意味」なる言葉を持ち出し「出版に踏み切った」というのだが具体的な説明になっていない。どんな「社会的意味」を持つと思うのか。何を問いかけたかったのか。少年犯罪について考えるきっかけというが、単なるさらしではないのか。最後まで読むことはできなかったのだが(申し訳ない)、要するに少年が決して更生していない、怖いぞということを伝えたかったのか。何なのだろう?

2.本当に元少年Aが書いたのか、分からないこと。
これは、今一生さんのブログを参照して頂きたい。
「酒鬼薔薇聖斗の書いた本」が作る、新たな悲劇の始まりの予感 ~著者の身元の「証拠なし」が確定
http://createmedia.blog67.fc2.com/blog-entry-303.html

個人的に、立ち読みして、途中で読むのをやめたのが、文体について、あまりに意図的に悪趣味にしているというか、中川の言うところに近いが、村上春樹かぶれの劣化した自己陶酔文章のようで、これは本人が書いたのか、酒鬼薔薇聖斗風に誰かが書いたのかがわからないと感じた。

もちろん、著名人の本などは構成作家がいてあたりまえなのだが。

信ぴょう性を疑うレベルのポエムのような表現で、ひいてしまった。

3.共有の仕方は適切だったのか。遺族への説明もそうだが、そもそも「手記(なるもの)」という形式が良かったのか。ルポルタージュの方が良かったのではないか。開示範囲、時期をどうするか。

そんなことが気になってしまった。

ちゃんと最後まで読まずに、批評することは避けたいので、ここではそもそも、この出版についてどうなのかという問題提起をしておく。

週刊誌がこのネタについて書いているようだ。申し訳ないが、まだ読めていない。これもまた読む気が起きない。太田出版はより丁寧かつ具体的な経緯説明をしてほしい。まあ、元少年Aが声明を出すのか(でもそれがいいのか)これもまた気になるのだけど。

それにしても、事前の報道、反応などから、この本ほど存在自体がげんなりする本はなかったと感じた次第だ。もう装丁から何から、悪趣味に感じたな。

太田出版が、元少年Aが世に問いたかったのは、何なのだろう。

問われているのは、同社が存在する社会的意味ではないか?

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