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ジャンクサイエンスに惑わされず、「科学」と「感情」は分けて考えるべき~「“安全性”を読み解くための 科学リテラシー講座」後編~

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近年、「放射能」「農薬や針の混入」「遺伝子組み換え」など、「食の安全性」に関するニュースが世間を大きく騒がせることが増えています。実際に、私たちの体に入る食品だからこそ、正しい情報を身につけて、理解して、日々の生活に活かすことが大切です。前編に引き続き、後編では、引き続き「遺伝子組み換え食品」を題材に、科学をめぐる報道に触れる際に注意すべき点などについて専門家の方と議論しました。

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【出演】
司会:大谷広太(BLOGOS編集長)
アナウンサー:佐々野宏美
コメンテーター:須田慎一郎(ジャーナリスト)
ゲスト:唐木英明(東京大学名誉教授)
     蒲生恵美(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会)

20年にわたる実験で証明された安全性


須田:安全性について、国は実験結果、検証結果をオープンにしているんですか?

唐木:日本では、食品安全委員会という内閣府の機関が審査をして、その結果はすべてホームページに出しています。それから環境に対する影響も調べていて、これもホームページで公開されています。

佐々野:「安全ですよ」と私たちに情報を出すための実験って、どのぐらいの期間やっているものなんですか?

唐木:ものによりますが、実験自体は、何年という期間がかかります。そして、食品安全委員会の審査は論文を集めて、審査するという形が中心なんですが、やっぱり1つの遺伝子組み換え作物を審査するのに、1年ぐらいは時間がかかります。

佐々野:コメントの中にもあったのですが、「20年程度の実験の長さで本当に大丈夫なのか」という心配をされている方もいると思うのですが。

唐木:よくそういうご心配がありますが、一番心配なのは、ガンを起こしたり、奇形を起こしたり、あるいは孫や子の代に何かおかしなことが出ないか、ということでしょう。これを調べるのは、そんなに難しくないんです。遺伝子に変化が起こっているかどうかを調べればいいのです。遺伝子に一切変化がなければ、ガンにもならない、奇形にもならない。孫や子に起こるはずがないわけですから。

科学的なステップを1つずつ積んで、1年の実験をきちっとやれば、孫や子の代のことまで科学的には予測ができます。それで足りなければ、実験動物を使って実験を行うということになります。

蒲生:付け加えさせていただくと、まず実験に何年という年数的な区切りがあるわけではありません。安全性が確認できるまでということですから、先ほど、唐木先生がおっしゃったように、モノによってはかなり時間がかかるものもあります。

また、安全性を調べるところで、1つポイントになるかなと思うのは、先程「遺伝子はタンパク質を作る設計図であり、タンパク質はアミノ酸の塊だ」という話をしました。

タンパク質は胃腸の中で分解されて、アミノ酸として体に吸収されますが、人間の体に入った後にそのアミノ酸がまた元の遺伝子組み換えタンパクに変わるということはありません。代謝に従ってその人の体の一部になったりエネルギーとして消費されます。

それは、人間が豚肉という豚のタンパク質を食べても体の一部が豚にならないのと同じことです。元のタンパク質が遺伝子組換えタンパク質であったとしても、消化してアミノ酸になってしまえば、それは私たちの栄養素です。お腹の中で消化された時点で遺伝子組換えタンパク質ではなくなっていると言ってもいいでしょう。安全性を評価する上で、そのタンパク質が迅速にアミノ酸に消化されるかどうかは大事なポイントの1つです。

アレルギーと遺伝子の関係

須田:もう1つ心配なのは、遺伝子組み換え作物を食べた家畜を人間が食べることだと思うのですが、こちらの安全性は、どうなんですか?

唐木:家畜が遺伝子組み換え作物を食べたら、消化されてしまうわけですね。その家畜自体には何も起こらない。それを人間が食べたとしても、家畜の体の中に遺伝子組み換え作物の影響が残らず、すべて消化されてしまっていますから、何も起こりません。こういうことが、この20年間で証明されているわけです。

大谷:あと、「アレルギーはどうなの?」というコメントが多くきているんですけども。

唐木:確かに今、アレルギーが非常に増えていることは、みなさんご存知の通りです。その原因は科学的によくわからないんです。ただ、「遺伝子組み換えのせいだ」というのはまったくの間違いで、アレルギーを起こすようなタンパク質を持つ遺伝子組み換え作物はすべて禁止になっています。

「添加物のせいではないか?」「残留農薬のせいではないか?」あるいは、「衛生仮説」といって世の中がキレイになりすぎて、微生物が周りに少なくなっちゃったからアレルギーが増えたという説もあります。少なくとも、添加物、農薬、遺伝子組み換えでないということは分かっていますが、そのほかの仮説が本当なのかどうかは、まだ検証しているところです。

蒲生:どんな技術であれ、その技術が「絶対に安全」とか「絶対に危険」ということはないと思うんですね。だから、「遺伝子組み換えだから大丈夫」とは私は言いません。大事なのは、安全性評価で安全かどうか確認をするということ。

アレルギーはタンパクですから、アレルギーを起こすような遺伝子が入れば、アレルギーを起こすタンパクが出来てしまいます。だからこそ、そういうことが起きないように、今まで発見されたすべてのアレルギーの型のどれにも当たらないかを検証するんですね。そういった安全性評価をパスしたものしか、市場には出せないルールがあるところが、大事だと思います。

佐々野:そういうルールがあるという前提を踏まえても、行き着く先は、食べたくない人は食べない。気にしないよという人は食べる・買うという、個人の選択肢になってきますよね。

唐木:その通りだと思います。ですから、そのために表示がとても大事で、食べたくない人は表示を見てやめておく。気にしない人は表示を見て、安く買う。これがこれからの生き方だろうと思います。

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