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ジャンクサイエンス(ニセ科学)の見分け方、本来の科学であれば “おかしなもの”が突然出てくることはない~「“安全性”を読み解くための科学リテラシー講座」前編~

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近年、「放射能」「農薬や針の混入」「遺伝子組み換え」など、「食の安全性」に関するニュースが世間を大きく騒がせることが増えています。実際に、私たちの体に入る食品だからこそ、正しい情報を理解して、日々の生活に活かすことが大切です。そこで、今回の「BLOGOSチャンネル」では、「モンサントの不自然な食べ物」「パパ、遺伝子組換えってなぁに?」といった映画の宣伝などでよく「危ない」という情報ばかり耳にするものの、イマイチ理解できていない「遺伝子組み換え食品」を題材にしながら、食の安全性を読み解くための“リテラシー”の重要性について専門家の方に詳しく伺いました。

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【出演】
司会:大谷広太(BLOGOS編集長)
アナウンサー:佐々野宏美
コメンテーター:須田慎一郎(ジャーナリスト)
ゲスト:唐木英明(東京大学名誉教授)
     蒲生恵美(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会)


日本は「遺伝子組み換え作物」の消費国としてはトップ


佐々野:まず、遺伝子組み換え食品とは、どういうものなのか。基本的なところを唐木先生にお伺いしたいと思います。

唐木:詳しく話をすると、それだけで1時間かかってしまうので、簡単にお話します。私たちも植物も、体とその機能をつくるための設計図がDNA=遺伝子だということはみなさんご存知だと思います。

私たちは両親からDNAを半分ずつもらっている。つまり、設計図を半分ずつもらっているので、我々はお父さんにも、お母さんにも似た部分があるということになります。

お父さんの身長が高ければ、自分も同じように背が高くなるかもしれませんが、その確率は半分しかないわけです。それでも半分の確率で自分の身長も高くなる。植物も同じように、良い性質を持った植物と、別の良い性質を掛け合わせたら、良いところ同士を持つ素晴らしい植物が出来るかもしれない。そうやって育てていくのが、昔から行われている「育種」というやり方なんですね。

しかし「育種」は、それぞれの植物の悪いところをもらってしまう可能性もあるので効率が悪い部分もあるわけです。良いところ同士をもらえるケースは、なかなか少ない。そこで良い機能や性質を作る遺伝子を取り出してきて、直接遺伝子に入れてあげたら、的確に素晴らしい作物ができる。これが、遺伝子組み換え、あるいはGMという方法なわけです。この方法を使って遺伝子組み換え作物が作られたのが、今から約20年近く前。1996年にアメリカで商業栽培が始まりました。

作物には、害虫、雑草、病原菌、水の不という4つの手強い敵がいるのですが、遺伝子組み換えでは、それらに強い作物が開発されています。最初に出来たのは、殺虫作用を持つ遺伝子組み換え作物。これは、農薬や殺虫剤を与えなくても、自分で虫を殺してくれるので、農薬の量を大幅に減らすことができる。農薬は高価なのですが、それを減らすことができるわけです。

また、除草剤を撒くと、作物も雑草も一緒に枯れてしまうのですが、除草剤に強い作物を作れば、それだけは生き残って、雑草だけが枯れてしまう。そうすると、草取りの手間が大幅に減る。そういう作物が出来たということで、農家の支持を集め、世界中の農家が使うようになったわけです。

2014年には、世界28ヶ国で、1800万人の農業者が遺伝子組み換え作物を栽培していますが、これをどこが消費しているのか。遺伝子組み換え作物の消費国としては、実は日本がトップなんです。

日本は非常に多様な遺伝子組み換え作物を輸入していて、その量は年間1600万トン。これは国内のコメの消費量の2倍になります。これはあとで詳しくお話いたしますが、遺伝子組み換え作物の安全性は、非常に厳しく調べられているので、安全なものだけが流通しているという事実があります。

一方、遺伝子組み換え作物かどうかを知りたいという消費者の要求もあります。「遺伝子組み換えは安全」と言われても、なんとなく気持ちが悪いと。だから、「遺伝子組み換え作物って、ちゃんと表示してよ。」ということで、2001年から表示制度が始まっています。

大谷:コメントで「育種」が分からないというのがありましたが。

唐木:「種を育てる」と書いて「育種」です。作物と作物を掛け合わせて、良い物を作っていくというのも「育種」ですし、今やっている遺伝子組み換えも「種育」が進歩したものになります。今私たちが食べている農作物もほとんどすべてが育種の成果といってもよいでしょう。

大谷:つまり、通常は狙った性質の種をつくるために何世代も時間がかかったわけですけど、遺伝子組み換えを行うことで、短期間で行える。これは、品種改良を行っている方にとっては、メリットですよね。

唐木:その通りです。ただ、狙って遺伝子組み換えを起こすので、的確に良い作物が出来る一方で、安全性評価に非常に長い時間をかけるので、トータルとしてはそれほど時間が短くなっているわけではないという部分もあります。それぐらい慎重に安全性を調べているわけです。

「モンサントの不自然な食べ物」で紹介された“奇形のラット”のからくり

佐々野:実際、どういうものに遺伝子組み換え食品が使われているんですか?

唐木:今は8種類ありまして、日本が一番多く輸入しているのが、トウモロコシ。それから大豆。その他に、なたね、綿、パパイヤなどが入ってきております。

佐々野:遺伝子組み換え食品と「食の安全」という点ではどうなのでしょう。コメントの中でも、「実際、そんなに気にしたことがない」というものがありましたが、私自身もそれほど気にしたことがないので、そういう方も多いのではないかなと思います。

ただ入ってくる情報は「危険だよ」というものばかりが目立っているなという印象があります。なぜ、遺伝子組み換え食品は危険という話が出てくるのでしょうか?以前公開されました「モンサントの不自然な食べ物」という映画では、遺伝子組み換え食品を与えられたラットが奇形になるというショッキングな映像もありましたよね。

唐木:先ほど言いましたように、世界中、どこの国でも、研究者が遺伝子組み換え作物の安全性を非常に厳しく評価しています。しかし、国連機関を始めとして、安全性に問題があるから禁止している国は1つもありません。安全なものだけが流通しているという事実があります。

しかし、少数ではありますけれども、遺伝子組み換えが危険だという論文があることも事実。大事なことは論文が1つ出たら、その内容がすべて事実ということではないんです。

科学の世界では、論文が1つ出ると、その論文の中身が本当かどうかの検証実験を行います。これを何度も何度も繰り返して、論文の中身が正しいことが証明されていく。これが科学なんですけれども、残念ながら最初の段階でつまずく論文があります。

例を1つ挙げると、STAP細胞の論文ですね。これは、ノーベル賞候補と呼ばれた万能細胞を作る方法で、オレンジジュースぐらいの酸性の液体に普通の細胞を入れると、万能細胞になるということで、世界中がびっくりしたわけです。そんなことはあるはずがないと思ったんだけれど、「NATURE」という科学誌に発表されたので、みんな信じてしまった。

しかし、世界中の人が、それを検証して確認の実験を行ったら、誰も出来なかったんです。それで、あっという間に、この論文がウソだということが分かったわけです。

もう1つが、さっきお話があった遺伝子組み換え食品を与えたネズミにガンが出来たとした、セラリーニという人が書いた論文。彼の論文は、遺伝子組み換えトウモロコシをラットに2年間食べさせると、メスでは乳がんが増え、オスでは肝臓や腎臓に障害が出るというものでした。

そして、この論文の目玉として、カラー写真で、ラットの胸に大きなガンが出来たものを発表していたんですね。これがセンセーショナルで、世界中の雑誌や新聞がこれを転載して、一般の人はもちろん、専門家も驚いたんです。今までの研究では遺伝子組み換えトウモロコシは安全だったのに、急にそんなものが1つ出てきたわけですから。

そこで「この論文はどこがおかしいんだろう?」と調べた結果、やはり方法論が間違っていたんです。ガンについて言えば、この実験で使ったネズミは、年を取ると自然にガンが出てくる種類で、遺伝子組み換えトウモロコシを食べさせたネズミと、自然に育てたネズミでは、ガンの出来方がほとんど変わっていませんでした。だから、写真に写っていたのは、自然に出来たガンだろうと、専門家は見ています。そのため、この論文はSTAP細胞と同じように、それを出版した会社が取り下げてしまいました。というわけで、STAP細胞とセラリーニ論文は、科学の世界では、2つとも存在しない論文として扱われているわけです。

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