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【読書感想】逆転のメソッド 箱根駅伝もビジネスも一緒です

逆転のメソッド 箱根駅伝もビジネスも一緒です(祥伝社新書) 逆転のメソッド 箱根駅伝もビジネスも一緒です(祥伝社新書)

Kindle版もあります。

逆転のメソッド (祥伝社新書) 逆転のメソッド (祥伝社新書)
内容(「BOOK」データベースより)
平成二十七年、91回目の開催となった箱根駅伝。日本中が青山学院大学の初優勝に沸いた。優勝に導いたのは、かつて「伝説の営業マン」だった原晋監督である。33年間の長きにわたり箱根駅伝出場から遠ざかっていた青学陸上競技部躍進の秘密は、その指導法にあった。約10年間のサラリーマン時代にトップ営業マンとなった原監督は、ビジネスでの営業手法を、駅伝の指導に応用したのである。本書では、何度も苦汁をなめながらも、不屈の精神で逆転してきた著者の「理論と情熱」を併せ持った指導法・交渉力などを紹介!目標に向かって歩むためのビジネス、部活動の指導、就職活動にも役立つ一冊。

 僕と陸上競技の接点は、オリンピックとお正月の箱根駅伝くらいなのです。

 2015年の第91回箱根駅伝で、青山学院大学がぶっちぎりで優勝したことには、驚いてしまいました。

 えっ、青学って、そんなに駅伝強かったっけ?

 勉強もできて、スマートなイメージで、おまけに駅伝で勝っちゃったら、他の大学がかわいそうなのでは……とかね。

 青学を初優勝に導いた原晋(はら・すすむ)監督のことは、箱根駅伝終了後にかなり話題になりました。

 陸上エリートではなく、一度は陸上を諦めて営業マンとして実績をあげていたものの、母校の監督のオファーを受けて就任したこと。

 奥様と一緒に寮に住み込んで、選手たちと毎日顔を合わせて体調管理をし、チームをつくりあげてきたこと。

 監督に就任して最初にしたのは、部員たちに規則正しい生活を送らせることだ。そのために起床や食事、就寝の時刻などを決めていた。

 陸上競技というのは、そもそも体ひとつで行うものであり、身につけるのはパンツとシャツだけである。エンジンを付けたり、羽根を付けたりするわけではない以上、規則正しい生活をして体調を整えることがベースになる。

 それまでの陸上競技部は、大学のサークルに近い状態だった。朝の練習は雨が降ったら休みになり、途中で歩いたりコンビニでマンガや雑誌を立ち読みしたりする部員もいた。全員一緒に食事を取ることを嫌い、午後の練習が終わると飲み会に行く。あるいは、ラーメンやいわゆるジャンキーなものを食べる。試合が終わった夜にはもちろん打ち上げと称して酒を飲む。ゲロを吐いてトイレに詰まらせる者がいれば、朝の練習に遅れて来る者もいた。

 この新書のなかで、原監督は、良い成績をあげるためには、生活習慣をきちんとすることと、チームワークが大切であることを、何度も繰り返しています。

 そして、「鉄拳制裁で指導をするような時代ではないから、ちゃんと『この練習が、なぜ、今必要で、どういう効果を生むのか』を選手によく話して、納得させてやっている」と。

 何度も箱根で優勝しているような伝統校ならともかく、箱根に出られるかどうかさえわからないような当時の青学大で、規則正しい生活を徹底させるのは、大変だっただろうな、と思うのです。

 原監督のほうも、選手たちも。

 もちろん、原監督の指導も、最初からずっと順風満帆だったわけではなくて、最初はなかなか結果が出なかったそうです。

 そこから、一歩一歩ステップアップして、箱根駅伝への出場、シード権の確保、そして、優勝へと結びつけていきました。

 チームがなかなか強くならなかった時期、原監督は「素行に目をつぶって、タイムが良い選手を獲得した」ことがありました。 

 ところが、その選手たちは、潜在能力があっても大成せず、チームの和も乱れてしまったのです。

 このトラブルは、部全体に大きな影響を及ぼした。結局、この年にスカウトして入部した新入部員三人が夏までに退部するという最悪の結果になってしまった。

 この事件によって、部員たちは青学らしい持ち前の明るさを失った。それは、部員たちの目を見れば一目瞭然だった。ドローンと沈んで輝きがないのだ。陸上競技部そのものがおかしくなり、その余波がしばらく収まらなかった。

 退部していった部員たちは高校時代の記録は学年でも上位だったが、今思えば青学のカラーではなかった。

 性根の曲がった者はうちの部には合わない。私は鉄拳制裁や体罰を否定しているので一切手を出さないが、そういった性根の曲がった者を更生させるには鉄拳制裁を認めている運動部が合っているかもしれない。

「性根が曲がった者」という言葉には、あまり良い感情を抱けないのは事実なのですが、原監督も、よほどひどい目にあった、ということなのでしょうね。

 その後は「記録だけではなくて、人柄や生活態度もみて、スカウティングする」というのを徹底していったのです。

 結果的には、それが、躍進につながりました。

 監督就任一年目からスカウトに携わってきたが、三年目のスカウトで大失敗をしたことを教訓に、私は一貫性を持った考え方で選手をスカウトするようになった。

 別に難しいことではない。青学らしいカラーの選手を採用するのである。5秒や10秒タイムがよくても、青学らしからぬ選手はダメなのだ。

 青山学院のカラーに合う選手とは、どういう若者か。ズバリ言えば、表現力が豊かな人である。そして、自分の言葉で会話ができる人、勉強が好きでしっかりと勉強する人、努力を惜しまない人である。

 というのも、部員は陸上の選手であるとともに青学の学生でもあり、昼間は一般学生に混じって勉強するからだ。

(中略)

 高校生をスカウトする際、本人とは必ず面談し、親とも面談して青学の教育方針や陸上競技部の指導方針について説明したうえで意見を聞く。「うちは勉強も大変ですよ」と私が水を向けたときに、「いや、そういうところでやらせたいのです。勉強もちゃんとさせてください」という答えが返ってくるような両親であれば、全く問題ないと思う。

 僕は青学大が箱根で優勝したのをみて、「これは、なりふり構わず、速い選手をスカウトしてきたのだろうな」と思っていました。

 これを読むと、「陸上のタイム以外のところをしっかりみて、スカウティングを行った」ことが、成功を生んだのだということがわかります。

 「陸上エリート」ではなかった原監督は、中国電力という地元の大企業に入り、陸上を引退したあと、そこで、営業マンとして「伝説」と称されるほどの実績を残します。

 しかし、名門大学出身でもなく、陸上の選手としてのキャリアがあって、仕事に取り組んだ年齢が遅かったことから、会社で出世するのは難しいと見切りをつけ、母校の監督としてのキャリアに賭けたのです。

 精神論よりも合理性を重視し、選手たちと徹底的に対話していくというスタイルがうまくいったのは、今の時代に合っているからでもあり、青学という大学のカラーにも合っていたから、なのでしょうね。

 ちなみに、この新書のなかで、原監督は立教大学の陸上部の練習をみて、「立教だったら、自分が監督をやれば、何年かで強豪校にできるのではないか」と仰っています。

「でも、慶應大学は勉強が忙しすぎて、ちょっと無理だろうな」とも。

 また、原監督は、これまでの「仏道修行のような大学陸上部」に疑念を呈しています。

 今のように彼女といつでも携帯で話ができ、インターネットでエロ映像が見られる情報化時代に「他人としゃべるな」「笑顔は厳禁」「エロ本を読むな」「携帯を使うな」などと言っても無理だろう。だから、軍隊方式の指導はもう終わったと私は思っている。

 もちろん、ハードな練習は不可欠だ。ニコニコ笑いながら練習しているだけでは強くなれないことなど百も承知している。そうではなくて、練習では修行僧のように自分に厳しく走るけれども、練習や試合が終わったら暁には楽しくやったらいいではないかというのが私の考えだ。

 ひとりで辛抱強く続けるが、暗くて横の動きが苦手というのが陸上選手の特性である。その欠点をどう克服して、人とつながる力をつけていくかというのを課題のひとつに据えて、私はいろいろな試みを仕掛けてきた。だから、青学の選手は表現力が豊かで、あるいは人の心がわかる人間に育っていると思う。

 こうした私の考え方が正しいことを立証するためにも、選手たちには常々「絶対、出世せえよ」と言い聞かせているところだ。

 原監督というのは、学生陸上界においては、ある意味「アウトロー」だからこそ、こういうことを考えてこられたのかもしれません。

 僕がいまの時代の選手だったら、このほうが、軍隊式の部よりも、ずっとやりやすいと思う。

 箱根駅伝のテレビ中継のなかに、原監督のこんな話が出てきていました。

 監督は奥様と一緒にずっと選手たちと寮で生活をともにして、練習だけではなくて、ふだんの生活の様子や何気ない一言、などの情報も踏まえて、誰を箱根の10人に選ぶか、そして、どういう順番で走らせるかを決めているそうです。

 監督いわく、「そうでもしないと、怖くて選手を選んだり、走る順番を決めたりすることはできない」。

 この新書では「やんちゃ」な感じがする原監督なのですが、選手たちに対して、真摯に接し続けていることがわかります。

 大きな陸上部であれば、上位の選手はさておき、10番目の選手と11番目の選手にそんなに大きな差はないでしょう。

 それでも「箱根に出られる選手」と「出られない選手」を決めなければならない。

 年に1回だけの大会で、大学陸上ではあまりにも突出して認知されているので、それを決める監督にとっても、大きなプレッシャーがかかっているはずです。

 破天荒な人のようにみえるけれど、実際は「やるべきことをやってきた人」なのだと思います。

 最後に勝負を決めるのは、人と人との信頼関係だとか、どれだけ準備をきちんとやってきたか、なんですよね。

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