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  • 橘玲

牛丼と革命―未来世界のマックジョブ

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「お金と幸せの法則を教えましょう」で、マクドナルド化の進化した姿として、牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーを例に挙げた。

元革命家が経営するこの特異な会社の内実は、『日経ビジネス』9月20日号の「外食日本一ゼンショー 280円で仕掛ける“メガ盛り生産革命”」(飯泉梓)によって、はじめて一般に知られるようになった。すこし時間がたってしまったが、きわめて興味深い記事なので、その概略を紹介しておきたい(興味を持ったらぜひオリジナルの記事を読んでください)。



ゼンショーグループを率いる小川賢太郎が東京大学に入学したのは1968年、全共闘による安保闘争(70年安保)が始まった年だった。理想の世界を目指す小川は、「資本主義社会であるから世界に貧困と飢えが増殖するという矛盾が生じる。この矛盾を解決するために社会主義革命をやるしかない」と信じて東大全共闘に身を投じたが、安田講堂の攻防戦に破れて挫折。大学を中退して、横浜港の港湾労働者となって最底辺からの革命を目指した。

だがその2年後の75年、サイゴン(現在のホーチミン)陥落でベトナム戦争が終結するのを見て、小川は社会主義革命を見捨てて資本主義に「転向」。財務管理やマーケティング、法律などを徹底的に勉強した後、78年に「飢餓と貧困をなくす」ための新たな革命の第一歩として吉野家に入社する。

ところがその吉野家は、80年にあえなく倒産(その後、再建)、ふたたび一敗地にまみれた小川は、「自分が先頭に立ち、革命を統率するしかない」と決意し、2人の部下を引き連れて82年にゼンショーを設立する。社名には、「今度こそ、絶対に負けない。全戦全勝する」という覚悟を込めた。

短期間で「革命」を実現するために小川が選んだのは、徹底した独裁だった。『日経ビジネス』記事で描かれるゼンショーの社員(クルー)管理は衝撃的だ。

社員には「ゼンショーグループ憲章」という小冊子が配られるが、ここには「社員は群れてはいけない」「いい人に思われるようにするな」などの精神論と同時に、「商談は30分」「歩く時は1秒に2歩以上」などの行動規範もこと細かに定められている(「憲章」にはシリアルバンバーが打たれ、なくすことは許されない)。

顧客の回転効率を高めるため、すき家ではカウンター席の牛丼を原則10秒以内で出すことになっている(吉野屋は15秒)。クルーは、「いらっしゃいませ」と声をかけてからの動作を、体のバランスから手の動かし方まで、秒単位で訓練されている(たとえば丼を下げるときは、左手でトレーを持ち、右手で専用ナフキンを使って、肘から下を使ってテーブルをZ字に拭く。上腕を使うと動きが大きくなり、時間をロスするからだ)。

こうしたクルーの“ロボット化”によって、すき家だけが、深夜のワンオペ(ワンオペレーション。調理と接客を1人でこなすこと)を可能にした。そのかわり全店には監視カメラが設置され、監視役の社員が24時間、クルーの動きをモニターしている(防犯対策の意味もある)。

新入社員は4月1日から11日間、「ブートキャンプ」と呼ばれる合宿に送り込まれる。その目的は「学生時代の誤ったリーダーシップ観を徹底的に否定する」ことで、訓練や討論によってゼンショー憲章への絶対服従を叩き込んでいく。――これは海兵隊の新兵訓練(スタンリー・キューブリックの『フルメタルジャケット』で描かれた)や、ヤマギシ会の特講(米本和広『洗脳の楽園』)と同じ典型的な洗脳技法だろう。

ゼンショーのスゴさは、「食の安全」を偏執狂的に追及するところにも表われている。

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