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聯合ニュースが虚報か 研究者187人の声明に韓国が振り回される

アメリカの研究者187人が出した声明が、波乱を呼んでいます。既に原文が明らかになっているので、そちらをご覧になってください。

「日本の歴史家を支持する声明(全文)」

これ、日本文も英文も、どっちも本文だそうです。

■日本の報道機関も結構振り回されていた

全文のリンクは朝日新聞ですが、これが掲載されたのは、5月7日21時22分です。

で、その前の5月7日16時02分に、第一報が出されました。

「歴史「偏見なき清算を」 米の日本研究者ら187人声明」2015年5月8日

歴史解釈、中でも慰安婦問題が日本だけでなく韓国、中国の「民族主義的暴言」でゆがめられたとする半面、「大勢の女性が自己の意思に反して拘束され、恐ろ しい暴力にさらされたこと」は資料と証言で明らかだと指摘している。特定の用語に焦点をあて、狭い法律的議論や限定された資料にこだわるのは「より広い文 脈を無視」していると述べている。

同時に日本政府に対し、今年は「過去の植民地支配と戦時における侵略の問題に立ち向かい、その指導力を見せる絶好の機会」と促し、問題の解決は「日本、東アジア、そして世界における男女同権に向けた歴史的な一歩となる」と結ぶ。

http://www.asahi.com/articles/ASH5723NQH57UHBI00D.html

最初の論調は、韓国の聯合ニュースと一緒。アメリカの研究者が日本政府の姿勢を正し、過ちを反省すべき的な感じだったのです。

しかし、原本を読むと、日本に対する注文だったり、警告だったりという内容ではありません。朝日新聞もよくよく原本を読み返して、「あれっ?」て思ったんでしょう。翌日また記事を出します。

「「国家主義、史実曲げる」 「偏見のない清算を」米の日本研究者ら187人声明」

関係者がメールなどでやりとりしながら何度も書き直したという文書には、慎重な言葉づかいが目立ち、様々な方面への配慮もうかがえる。日本政府については、今年が「言葉と行動」で過去の植民地支配の問題に立ち向かい、「指導力を見せる絶好の機会」だと述べた。安倍首相が4月の米議会演説で、人権の価値や、他国に与えた苦しみを直視する必要性に触れたことも評価し、「その一つ一つに基づいて大胆に行動することを首相に期待してやみません」としている。

http://www.asahi.com/articles/DA3S11741742.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150508-00000011-asahi-soci

タイトルはほとんど変わってないのに、内容のトーンがえらく変わりました。

実際、この二つ目の記事の方が、今回の声明の内容をよく表しています。日本政府に慰安婦問題を含めた「指導力を見せる絶好の機会」としつつも、日本政府の姿勢に配慮し、安倍首相の米議会演説も評価しているわけです。英文の方を確認しても、慰安婦を「SEX Slaves」とは表記していません。総合的に見て、日本側にかなり配慮しているのは明らかです。

代わりに、厳しく中韓の歴史問題の姿勢を批判する内容が入っているわけで、この点を見逃すとアメリカの研究者たちの立ち位置を勘違いすることになるわけです。

■聯合ニュースが書いてあることを書かず、書いてないことを書く

で、やってしまったのが韓国の聯合ニュースです。ロイターなどのような通信会社ですね。

「世界の歴史学者ら声明 安倍首相に歴史の直視訴える」2015年5月6日11時01分

世界的に著名な日本学、歴史学などの学者187人が米東部時間の5日、安倍晋三首相に対し旧日本軍慰安婦問題とこれに関連した歴史的な事実をねじ曲げることなく、そのまま認めるよう求める声明を共同で発表した。

http://japanese.yonhapnews.co.kr/society/2015/05/06/0800000000AJP20150506000600882.HTML

最初からやっちゃってますが、安部首相へのくだりは、後半のごく一部にしか出てきません。それも米議会での演説は評価するという内容です。「もうちょっと踏み込めれば、もっと良かったね」という指摘はありますが、本題は安倍首相に歴史の直視を訴えたわけではありません。

対して「この問題は、日本だけでなく、韓国と中国の民族主義的な暴言によっても、あまりにゆがめられてきました」という韓国と中国の姿勢に対する批判は、すこーんと抜けてしまいました。

それだけではありません。
最も先鋭的な歴史問題の一つに慰安婦問題を挙げ、「慰安婦にされた女性らの苦しみを被害国で民族主義的な目的に悪用することは国際的な問題解決を難しくし、被害女性の尊厳を冒涜(ぼうとく)することだ。被害者らに起きたことを否定したり無視したりすることもまた、受け入れることができない」と批判した。

太字にしていますが、この前段部分は、被害国で悪用することを厳しく批判している内容です。要するに中国、韓国で慰安婦問題が悪用されていることを批判しているのです。その意味がわからなかったのか、読み違えたのか、後半の文章とごっちゃにして、日本批判にしてしまっています。

この聯合ニュースのフレーズに引っ張られて、5月7日以降、中央日報、朝鮮日報、東亜日報などが、一斉に同じ論調で報道してしまいました。聯合ニュースの罪は真に重いと言えるでしょう。

■では、そもそも誰に向けた声明なのか?

そもそも今回の声明は、「日本の歴史家を支持する声明」です。変なタイトルの声明ですね。日本の歴史家って誰なんでしょうか?

これを理解するのは、日本政府がアメリカの教科書の慰安婦記述に訂正を求めたことを思い出す必要があります。

「米出版社、日本政府の教科書訂正要請を拒否=「“慰安婦”の記述は史実に基づいて書かれた」―米メディア」

日本の岸田文雄外相は18日の記者会見で、米国の学校で使用されている教科書に旧日本軍が慰安婦を強制連行したという記述があることに関し、「不適切な内容」だとして出版社のマグロウヒルに訂正を求めたことを明かしていた。

http://news.livedoor.com/article/detail/9507229/

日本の教科書の中身に、中国や韓国が散々文句を付けてきているので、なんか感覚がマヒしちゃってますが、他国の政府が、他国で発表され、他国の学生向けに、他国で配布される教科書に文句を付けるのは、ご法度であります。

アカデミックな問題は、アカデミックにカタを付けるのが国際慣習でして、そこに政府がしゃしゃり出るのは、「本来ありえない暴挙」なのですね。

「でも、中国も韓国もやってるじゃん」

うん、まぁその通り。でもこの二つの国が異常なんです。おんなじ形を、他の国にしたら猛反発が出るのは当然です。で、かまされたアメリカの研究者たちは思ったわけですね。

「日本の研究者も、こんな形の圧力を政府から受けてんじゃね?」

それが、声明のタイトルの意味なんです。「政府の圧力に負けずにがんばれよ!」ってことですね。

正直、この岸田外相の会見は、非常に悪手だったと思います。

アカデミックな世界は、常に圧力と戦ってきた歴史があります。「それでも地球は動く」のガリレオを出すまでも無く、歴史にはそんな研究者の茨の道が続いてきました。教科書の記述が正しいかどうかと、政府が他国の教科書出版社に圧力を加えるのが正しいかどうかは、全く別の問題であり、慰安婦問題の賛否に関係なく、政府の介入に反発する研究者は多いのです。だからこれだけ多くの研究者が、声明に賛同したと言えるでしょう。

声明文の中には「日本は第二の故郷」という記述すらあります。そういう立場の研究者まで、賛同していると言うことは、やはりそれなりに意味があります。おそらくこの声明の裏にはこういう意味があるんでしょう。

「このやり方に先は無い。やるなら他の方法でウマくやれ」と。

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