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本当の誕生日と名前を知らない子ども--サヘル・ローズ氏の衝撃スピーチ

世界には“本当の”誕生日や名前を知らない子どもたちがいます。

イベント冒頭でスピーチをする、女優のサヘル・ローズ氏
イベント冒頭でスピーチをする、女優のサヘル・ローズ氏 写真一覧
4月4日は「養子の日」でした。養子(よーし)ということで、4月4日。僕はすごく身近に養子がいるので養子制度自体にも興味があり、この日に渋谷ヒカリエで行なわれたイベント「すべての赤ちゃんにあたたかい家庭を」(ハッピーゆりかごプロジェクト)に行ってきたのでレポートにまとめます。

このイベントは、「特別養子縁組」という養子縁組の制度の普及・啓発活動のためのものです。特別養子縁組とは、何らかの事情で生みの親の元で暮らすことができない子どもに、永続的な家庭を提供するための子どもの福祉を目的とした制度です。

6歳までのみ限定的に行われる仕組みで、養子になった子どもは戸籍上でも実子と記載され、血がつながっていないだけで、法的に“実の子”になれる制度なのです。

本稿では、イベント冒頭でキースピーチを行なった、女優のサヘル・ローズさんのスピーチを中心にレポートします。かなりグッときますので、涙もろい方はハンカチのご準備を。

ちなみに、イベント自体のレポートは、BLOGOSブロガーでもある、おときたさんが先日アップしていたのでこちらも合わせてお読み下さい。当日、会場でご挨拶させていただきましたが、予想通りステキな方でした。

「特別」と「普通」の違いって何??もっと、日本に。特別養子縁組

「赤ちゃんポスト」と養子

イベント当日、街頭イベントを行うスタッフたち(渋谷ヒカリエ前)
今回のイベントでは、サヘル・ローズさんのキースピーチの他に、実際に養子縁組を行なった夫婦や、養子の当事者、新生児を匿名で養子に出すことのできる通称・赤ちゃんポスト(正式名称:こうのとりのゆりかご)で有名な熊本県の慈恵病院の方々などのトークセッションもありました。

ちなみに“赤ちゃんポスト”とは、諸事情のために育てることのできない新生児を親が匿名で養子に出すための施設、およびそのシステムの日本における通称で、日本では唯一、熊本県熊本市にある慈恵病院がこのシステムを採用しております。

命に関わる話は高度な倫理観が求められ、賛否がある命題ではありますが、「どんな事情であれこの世に産まれた命を捨てるのはおかしい、救える命は救う」と蓮田氏(慈恵病院理事長・院長)がトークセッションでおっしゃっていました。

小中学生の妊娠による相談などもあったそうで、対応する際の注意点として「一番は責めないこと。本人が一番責任を感じているはずだから」と田尻氏(元慈恵病院看護部長・相談役)がおっしゃっており、赤ちゃんポストをはじめ、養子に対する周囲の理解がより求められています。

では、養子とは何かを知る、ということでサヘル・ローズさんのスピーチを、ほぼ全文書き起こしてまとめました。

サヘル・ローズ氏の衝撃スピーチ(ほぼ全文書き起こし)

辛い話の時も、時折笑顔を見せるサヘル・ローズ氏
私はイランで生まれました。イラン・イラク戦争の時です。空爆などによって、両親を亡くした子どもは私以外にもたくさんいました。もちろん、子どもを亡くしてしまった親もたくさんいました。

両親を亡くした子どもたちは孤児院で育ちました。私が孤児院に入ったのは4歳の時。私は戦争によって、親兄弟をみんな亡くしました。孤児院は守られた環境で、最初は楽しかったといえば楽しかったです。でも面倒をみてくれる大人は人数が少ないので忙しく、だんだんと話をすることはなくなっていきました。そして、言葉数が少なくなっていきました。

皆さんには「誕生日」があると思います。生まれた日ですね。でも私にはありません。戦争で書類等がなくなり自分を示すものがないのです。だから自分の“本当の”誕生日や名前を知りません。本当の年齢や、何月何日に生まれたかも知りません。

施設は食事もでますし、着る物もとりあえずあります。でもその時一番欲しかったのは、食べ物や着る物ではなく親だったのです。

孤児院では、毎週金曜日にキレイな洋服を着ます。孤児院で一列に子どもが並ぶのです。そうすると見たことのない大人たちが入ってきて、会話をしたり遊んだりしてくれて帰っていきます。ふと気付くと、今までいた子がいなくなっていたりしました。その頃は状況がわからなかったのですが、大人になって振り返ってみると、あれは“オーディション”だったのだなと。

来る方々というのは、子どもが欲しい大人でした。養子を引き取ろうとしている方々です。「この子が欲しい」という会話があったのでしょうか。ただ、すぐに養子縁組ができるわけではありません。数ヶ月かけてやっと自分の子どもにできるのです。私の場合は3年間声をかけてもらえませんでした。

0〜5歳の子どもは養子縁組の“人気”の年齢です。それ以上大人になると、引き取り手が現れにくくなります。様々な要因がありますが、小さい子どものほうが一から育てやすく、人気があるのです。残った子たちはまさに“売れ残り”だったのです。悔しいけど。

18歳になったら孤児院をでなければいけない。だから、毎回が戦いだったのです。孤児院の子は仲間だけど、オーディションの日だけはライバルでした。誰が”本当の親”を早く見つけられるのかという戦いです。

そんな時に出会ったのが、私を当時ガレキの中から救ってくれたボランティアの女性だったのですけれども、私は4歳の時だったのであまり覚えていませんでした。出会いは偶然でした。

テヘランで、皆でお金を出し合って、引き取り手を増やそうというコマーシャルを撮影したのです。そのVTRに出る子どもとして私も参加しました。ラッキーでした。出演のチャンスを貰えて。

「私は親を探しています。誰かお母さんになって下さい。」と。その映像を見ていたのが彼女なのです。最初は面識があったことを彼女も覚えていなかったそうですが、まずは施設に行ってみようと思ってくれて、来てくれました。そして「テレビで話していた子に会いたい」と私を指名してくれて、面会の部屋に入りました。

その時、わたしはなぜか「お母さん」と言ってしまいました。その瞬間、彼女は決意したそうです。自分の子どもにしようと。ただ、引き取るにはいくつかのルールがあります。一つは結婚していること、もう一つはお金があること、最後の条件は“子どもを産めない”こと。子どもが産める状態で、実際に出産した時、施設から引き取った子どもを同じように愛せるかわかりませんから、そういうルールがあったのです。

では彼女はどうだったか。結婚していて裕福な家庭にいました。ただ、子どもを産める状態でした。ですので、彼女は血のつながりもない私を引き取るために、闇ルートというのでしょうか、正規のお医者さんではない病院に行き“自分の体にメスを入れて”子どもが産めないようにしてから、私を引き取りにきたのです。私はその事実を18歳の時に知りました。

わざわざ血のつながりもない私を引き取るために、自分を傷つけてまで引き取ってくれた彼女は、本当に偉大な人です。そうして、私は今までずっと望んでいた家庭を手に入れることができました。彼女は私の天使なのだと思いました。

そのあと色々あって日本に来ました。彼女はイランの方と結婚していて、その方が日本にいたからです。そして一緒に暮らすことになったのですが、彼とは馴染めませんでした。「血のつながりのない子どもを僕は育てることはできない」と言われ、虐待を受けるようになりました。その時に、母は「あなたと離婚してこの子を育てます」と言い、家を出る事になりました。

その後一週間くらい、公園などで生活をしていたのですが、その時救ってくれたのが、通っていた小学校の給食のおばちゃんだったのです。色んな人に出会って、色んな人に支えられて、今います。

私がなぜ、今こうして日本で活動をしているかというと、養子は他人事ではないと伝えたいからです。日本では何万人もの子どもたちが養護施設や乳児院などで生活をしています。本当は誰かの瞳に映りたい、夢を持ちたい、気持ちを語りたい、という想いをもつ子どもたちですが、本音を伝えられる人は誰もいません。

では、その子どもたちの中でどれだけが養子縁組をして引き取られるかというと、わずか1%です。ごくわずかです。皆さんにこの現状を知り考えてほしい。同じ地球人として。私たちが何をすべきか、を。

※主語や括弧表記などを加え、一部修正・追記をしています。

まずは日本の現状を知ること

決して新しいわけでもない、養子縁組という親子の形。

僕はまだ結婚していないし、子どももいないけど、もし子どもを持つことが出来なかったときには、特別養子縁組という形もいいのかなと思いました。ちなみに、トークセッション中から、ずっとグッときていて涙をこらえながらメモしていました。(花粉症じゃないよ)

法的に未整備なこともあるけど、生まれた命が捨てられることを見過ごすわけにはいかない。まずは、養子に対する偏見をなくすこと、そして、その実態をより多くの人に知って欲しいと思いました。養子に関するデータや「赤ちゃんポスト」の詳細は以下のリンクからどうぞ。

医療法人 慈恵病院
ハッピーゆりかごプロジェクト

(取材協力:日本財団)

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