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現実的に集団的自衛権はやめたほうがいい 元自衛隊レンジャーが指摘

 自衛隊レンジャーの井筒高雄さんから集団的自衛権と自衛隊の現実について伺った。現在の最高司令官(首相)は、現実の戦闘を知らない悲劇的な司令官だ。集団的自衛権はやめたほうがいいと明言。さらに、自治体とも関係してくる問題であることも指摘していた。

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 井筒さんは、高校を卒業し運動選手になりたくて自衛隊に入隊。その後、アメリカの特殊部隊、グリーンベレーを参考にしたレンジャー隊員となった。その後、1992年にPKO法が成立しカンボジアへの派遣が始まったことから辞めている。その理由は、自衛隊法で定められていることから入隊したときに服務の宣誓をしたが、その内容は、防衛出動や治安出動、災害派遣が任務となっており、宣誓した内容と違っていたからだという。

 カンボジアへの派遣は道路工事が任務とされていたが、いつのまにか、派遣自体が本来の任務格上げされており、今後に危機感を持っている。

 アフガン戦争などでは、戦闘地域以外での死者が多い。それは、戦闘部隊よりも後方部隊のほうが潰しやすく、支援を断ったほうが有利になるからだ。また、アメリカ軍を狙うより軍事力の弱い多国籍軍を攻撃するのは連術として当然のこと。この現実から分かるのは、今後、自衛隊が派遣されれば死者は必ず出ることだ。

 そして、もし、行った先で実弾が一発でも飛んで来たら戦争になる。戦争が始まれば、行った先だけではなく、国内も戦場になる可能性も出てくる。集団的自衛権は、日本が戦争の当事国になることだとも指摘されていた。

 さらに、日本が戦争の当事国となった場合、自衛隊と市民が一緒にいると攻撃対象になる。国民保護法などで自衛隊が救助するケースが想定されているが、戦争になった場合、一緒にいると危険は高まることになる。敵側にとっては災害派遣も戦闘も同じだからだろう。そのようなケースで自治体や議会は想定しているのか。市民をどう守るのか考えているのか、と問われていた。

 戦争は始まってしまうと、原発と同じでコントロールがきかなくなる。最小限だけ行うといっても、どうなるか分からないのも現実だという。

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■集団的自衛権の実際

 井筒さんは、集団的自衛権は米英ソなど大国の論理で入った条項だと指摘されていた。実際に行使された例として、1956年のソ連によるハンガリーへの軍事介入、1958年のイギリスによるヨルダン軍事介入、1965年のアメリカによるベトナム軍事介入、1979年のソ連によるアフガニスタン軍事介入、1981年のアメリカによるニカラグア軍事介入、1983年のフランスによるチャド軍事介入、2001年のアメリカとNATOによるアフガン侵攻を紹介されていたが、この指摘のとおりとなっている。

 このことは国立国会図書館によるレファレンス事例「集団的自衛権の法的性質とその発達」でも次のように指摘されており、集団的自衛権自体の意味も確定されていないとされている。

「大国の拒否権によって集団安全保障機能が麻痺し、地域的機構の自立性が失われることに対する中小国の危惧から生み出された権利」
「集団的自衛権は、国連憲章において初めて認められた権利であるが、国連憲章はその意味については特に規定しておらず、学者や各国の間に一定の共通理解が確立しているものの見解は分かれる」
「実際に集団的自衛権が行使された事例を見てみると、やはりその濫用が疑われてきたこ
とは否めない」

 このような状況で、集団的自衛権で何をしたいのかが問われているといえる。

■政治の仕事

 伺った話をまとめてみると、解釈と法律を変えても自衛隊の実力は変わらない。アメリカでもできないことは自衛隊にはできない。集団的自衛権の行使は、安倍総理の個人的願望を実現するだけの暴走としか思えない。現実の戦闘を分かっていない、自衛隊を分かっていない悲劇的な司令官が今の首相だ。現実的に考えれば止めたほうがいい。自衛隊は専守防衛と復興支援にのみ従事すべきだとなる。

 話のなかで興味深かったのは、イラク戦争に反対したフランスのドミニク・ド・ビルパン外務大臣(当時。後にシラク政権で首相)の言葉だった。それは、「アメリカと我々は友人だが、だめな時に忠告をするのは真の友人だ」との言葉だ。日本とアメリカとの関係も問われているのが集団的自衛権といえそうだ

 話の最後に、自衛隊を派遣するのではなく、派遣しないように、戦争にならないようにするのが政治ではないかとされていた。政治の仕事は何かを考えれば、このことに尽きるのだろう。私も同じ思いだ。

■自治体も無関係ではない

 一方で、現在の自衛隊は、前線に行く若い隊員の充足率が72.6%でしかない。だから、武蔵野市などの自治体から高3、中3の個人情報を提出させ、ダイレクトメールを送ったりAKBを使いリクルートしたりしているとの話もあった。

 これは住民基本台帳を閲覧して送っているものだ。本来、ダイレクトメール目的に個人情報は出せないのだが、国は求めることができると住民基本台帳法第11条法や自衛隊法施行令120条で定められているため可能となっているためだ。赤紙が来たという人がいたが、今後を考えると考えさせられる。充足したら何を始めるのだろうか?

 この情報の提供の手法は、自治体よって異なる。閲覧させて自衛隊員が手書きで書き写すケースと、対象者を自治体が選び紙によって見せて書き写すケースがある。自治体によって情報提供の方法を積極的にするかどうかが違っているのだ。自治体や議会の考え方が反映されるともいえる。
 以下は、私も呼びかけ人のひとりとなり結成された自治体議員立憲ネットワークが都内の自治体にどのように提供しているかを調査した結果だ。

 集団的自衛権は、自治体にもかわっている問題だ。これから大きな問題となりそうだが、市民に密接な自治体、自治体議会からこそ考えるべきだろう。井筒さんの話を伺い、この現実では集団的自衛権の行使に向かうべきではないと再認識した。
(3月28日 武蔵野プレイスを会場にして開催した「集団的自衛権と自衛隊の現実」から)

●すべてを閲覧し自衛隊員が書き写し
千代田区、文京区、墨田区、江東区、世田谷区、中野区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、葛飾区、八王子市、立川市、武蔵野市、三鷹市、青梅市、府中市、昭島市、調布市、町田市、小金井市、小平市、日野市、東村山市、国立市、福生市、東大和市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市、多摩市、稲城市、羽村市、

●自治体が適齢者情報を摘出、自衛隊員が書き写し
杉並区、板橋区、江戸川区、国立市、あきる野市 (板橋区と国立市は両方に回答あり)

・不明 新宿区、練馬区、足立区、狛江市、西東京市

【参考】
西日本新聞 2015年03月20日
 国防を問う 変貌する自衛隊<5> 募集施策 住基台帳使い大量DM

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