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なぜホリエモンは努力を隠すのか - 茂木 健一郎:世界一の発想法

著者 茂木 健一郎 撮影=宇佐美雅浩


ともすれば「傲慢」「不遜」と見られがちな堀江氏だが、その真の顔は……?

ある人のイメージは、その実像から離れてしまうことが往々にしてある。特に世間に名の知られた、いわゆる「有名人」はそうである。

私は、どんな方にも、先入観を持たないことに決めている。その方に会って、お話しして、自分の中での印象をかたちづくる。実像が、世間で喧伝されるキャラクターからずれていることは多い。

皆さんは、堀江貴文さん、すなわち「ホリエモン」に対して、どのようなイメージをお持ちだろうか? 頭がいい、ということは認めるとしても、ものすごい努力家だ、という印象はあるだろうか?

私は、たまたま堀江さんを親しく知る機会があって、真っ先に思うのは、堀江さんは努力家だということである。人の10倍、いやひょっとしたら100倍の努力をしている。だからこそ、挫折もあったが、必ずこれからも世の中を変えるような起業、イノベーションを起こす人だと思う。

実像は努力家なのに、なぜ、世間ではそのイメージが伝わっていないのか? 先日、堀江さんとお話ししていて、本人が意図的にそうしているのだということを知った。

「えっ、なぜですか?」

私は、驚いて聞いた。堀江さんは、例の、少し斜に構えたような言い方で答えた。

「だって、頭のいい人がものすごく努力しないと成功しない、と思われたら、やってみよう、という人が少なくなってしまうじゃないですか」

私が聞いた話をまとめると、堀江さんは、自分自身の頭がいいと思っている(実際にそうだろう)。また、ものすごく努力していることも自負している(否定できない)。

しかし、ここからが肝心なのだが、成功するためには、頭がいいことも、ものすごく努力することも必要ない。むしろ、頭がよくなくても、努力しなくても、とにかくやってしまうことが大切である。

その実例として、堀江さんは、ある人の名を挙げた。その方は、ある外国に行って大成功したのだが、きっかけは、本人の「勘違い」なのだという。しかも、成功した理由も、たまたま幸運が重なって大当たりしてしまっただけだと堀江さんは言う。

実際には、それなりの苦労や、工夫があったのだろうけれども、確かに、堀江さんの言うような側面もあるように、私は思う。

スティーヴ・ジョブズ氏が、スタンフォード大学の卒業式のスピーチで語った「愚かであれ」(stay foolish)という言葉は、つまり、「行動する愚かな者であれ」ということだろう。その意味では、堀江さんの言っていることと、ジョブズ氏が言っていることは、図らずも一致している。

世間を見ると、学校の成績がよかったとか、知識があるとかそういう人に限って、実際に試す前に見切った気になってしまって、行動しないことが多い。それでは、成功はおぼつかないだろう。

また、逆に、自分は頭がよくないからと、あるいは努力なんかできないと、最初から諦めてしまっている若者にも、ときどき出会う。もったいないことだと思う。

おっちょこちょいでも成功することがある。そのことを伝えるために、あえて、ものすごい努力家であることを隠している堀江さんは、案外いい人なのではないか。

ただ、もう少し、頑張っているところも見せたほうが、堀江さんを好きになる人がもっと増えるのではないかと、友人としては心配するのである。

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