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骨肉の内紛「大塚家具」:株主総会で勝利した「久美子社長」単独インタビュー

 経営権を巡って父である会長と娘の社長が激しく対立し、異例の委任状争奪戦(プロキシー・ファイト)にまで発展していた大塚家具。3月27日に開かれた株主総会では、結局、大塚久美子社長が会社側提案として出していた取締役選任議案が可決され、大塚勝久会長が株主提案として出していた取締役候補は否決された。終始、上場企業としてのコーポレート・ガバナンス(企業統治)のあるべき姿を訴え続けた社長側が、株主の支持を得た格好だ。今回の大塚家具問題とは何だったのか。総会翌日の28日に筆者の単独インタビューに応じた大塚久美子社長の話をベースに検証してみよう。

予想以上の大差

大塚久美子社長:お陰様で、会社側提案が出席議決権の61%の賛成を得て可決されました。大塚家の保有株を除くと80%以上の株主の皆様のご支持をいただいたことになります。今回の騒動について心よりお詫びすると共に、深くお礼を申し上げます。

 取締役7人のうち4人の賛成で提出された会社側議案には、取締役候補に勝久会長の名前はなく、事実上の引退を迫っていた。また、会長支持に付いた長男で専務の大塚勝之氏の名前もなかった。一方、勝久氏が株主提案として出した候補者名簿には、逆に久美子氏の名前はなく、真っ向から対立する構図だった。

 勝久氏は、発行済み株式の18.04%を保有する筆頭株主で、勝久氏側に付いた妻の大塚千代子相談役も1.91%を持つ。両者の保有分を合わせると19.95%。一方の久美子社長側は、一族の資産管理会社である『ききょう企画』が保有する9.75%と、昨年12月末で10.13%を持っていた米国の投資会社『ブランデス・インベストメント・パートナーズ』が早い段階で支持を表明。19.88%を押さえて、両者ほぼ拮抗していた。焦点は、保険会社や銀行など機関投資家や、取引先を中心とする法人株主、それに個人株主の動向だった。最終段階まで勝敗は分からないと見られていたが、株主総会では、予想以上の大差が付いた。

久美子社長:残念だったのは、私が訴え続けてきた上場会社としてのコーポレート・ガバナンス(企業統治)の問題として捉えられるのではなく、単なる親子喧嘩として取り上げられる傾向が強かったことです。機関投資家の皆様や多くの法人株主は、ガバナンスが重要だという私の説明に理解を示してくださいました。個人投資家向けの説明会でも非常にレベルの高い質問をいただき、株主の方々の経営に対する意識の高さを痛感させられました。そうした株主の方々の多くが会社側を支持してくださったのはありがたい限りです。

「理」と「情」の対立

 両者の対立が表面化した今年の年初以後、久美子社長は中期経営計画を発表(2月25日)。取締役候補10人中6人を社外取締役にするなど、「ガバナンス改革」を強調した。

 折しも、安倍晋三内閣は上場企業にコーポレート・ガバナンスの強化を求めて社外取締役の導入促進などを掲げており、まさに、そうした時代の流れと符合した。また、アベノミクスの一環として2014年に導入された「スチュワードシップ・コード」によって、機関投資家は保険契約者など受益者の利益を最大化する議決権行使をせざるを得なくなったことも大きい。創業者である勝久氏との長年の人間関係といったことだけでは、株主提案に賛成しにくい状況になっていた。さらに、機関投資家に大きな影響を持つ米『インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)』や米『グラス・ルイス』といった議決権行使助言会社が、相次いで久美子社長側を支持する意見書を出したことも大きかった。

 一方、勝久氏側も取締役候補者10人中5人を社外としたり、経営計画を発表するなどしたが、いずれも社長側の計画に対抗する色彩が強く、機関投資家の支持は得られなかった。また、久美子氏がガバナンスのあり方を中心とした「理」を説いたのに対して、勝久氏は家族の感情のもつれ、父と娘の対立という構図を強調していたことも対照的だった。勝久氏が会見やインタビューで、しきりに「悪い子供を作った」とか「久美子はまだ反抗期」といった発言を繰り返したことが、結果的にすべて裏目に出てしまったわけだ。

久美子社長:前会長や勝之前専務は、今回の問題を本当に家族の感情のもつれだと思っているのかもしれません。株式公開企業のあり方を問題にしている私とは、最後の最後まで話が噛み合っていませんでした。上場企業の経営者は(株主など)他の人のものを預かっているに過ぎません。経営権を巡る争いと言われましたが、経営権とは権利ではなく、責任を伴った権限だということを、前会長らはまったく理解しようとしませんでした。

反乱「幹部社員」の責任は問わず

 さらに勝久氏は、「1700人の社員は私の子供」「社員は全員私の味方です」として、久美子社長には社内の支持がないと主張。2月25日に勝久氏が行った記者会見では、ひな壇の後ろに幹部社員をズラリと並べたほか、幹部社員の“血判状”まで集めた。

 発行済み株式数の3%を持つ従業員持ち株会の議決権については、通常、会社側提案に賛成するが、今回は、会員の意思に応じた自主投票とすることを決めた。結果、議決権の35%が株主提案(勝久氏)側、25%が会社提案(久美子氏)側、4割が棄権した、とされる。保有株数の多い幹部社員が会長側に賛成し、株数の少ない若い社員は社長側を支持したため、社員の員数でいえば、社長側が多かったのではという見方もある。いずれにせよ、持ち株会の結果を見ても、勝久氏が社内を完全に掌握していたというのは、勝久氏側がメディアに流したイメージだったということになる。

久美子社長:記者会見に幹部社員を動員したり、署名を集めるなど、騒動の渦中に社員を巻き込んだことは、本当に残念で、申し訳ないことだと思っています。ですから、私は社員には一貫して「総会が終わったらノーサイドなので、お客様を向いて仕事をして欲しい」と訴えてきました。就業規則に故意に違反するような活動をしていた場合は別として、今後、会社のために誠心誠意働いてくれるという気持ちがある人たちについて責任を問うようなことはしないつもりです。

 大塚家具は4月1日付で人事異動を行う。営業の最前線である店長については、積極的に勝久氏を支持した1店舗の店長は交代させるものの、他は当面手を付けないという。もっとも、昨年7月に久美子氏がいったん社長を解任されて以降、3月の総会までは店舗運営は勝久氏や勝之氏の指示で行われてきた。当面は、これを昨年7月以前の“久美子流”に早急に戻すという。

 具体的には、入店時に顧客情報を登録してもらい、担当者を付けて店内を案内するという勝久氏が強くこだわっていたスタイルを、気軽に顧客が店舗に出入りできるような仕組みに変えていくという。

久美子社長:今年1月末に私は社長に復帰しましたが、総会までは前会長が営業部門を統括し続けていましたので、実際には前会長の方針による店舗運営が続いていました。広告宣伝も既に4月分まで会長の方針で決まっています。残念なことですが、騒動の影響もあり、経費をかけた割には来客数、売り上げは伸びておらず、第1四半期である1~3月期はかなり厳しい状況です。早急に営業体制を立て直して、挽回したいと思います。名称は決めていませんが、ご心配をおかけしたお客様へのお詫びと感謝の気持ちを込めたフェアなど販売の企画も考えています。年間を通しては、まだまだ取り返せると思います。

今後の焦点は「勝久氏の処遇」

 骨肉の争いと注目された今回の騒動だが、当初は、経営方針を巡る対立が強調された。会員制による高級路線に固執する勝久氏と、店舗のオープン化による比較的カジュアルな路線への拡大を目指す久美子氏、という構図だった。だが実際には、最初に社長に就任してから解任される昨年7月までの5年間、久美子氏が社長として打っていた手は、ことごとく否定されていたのだという。

久美子社長:昨年7月に社長を解任されて以降、私が進めてきた事業はことごとく廃止されました。通販サイトを閉鎖したり、富裕層向けの「プレミアムクラブ」という顧客サービスも、この3月末で廃止になってしまいます。前会長は高級路線でいくといっていたはずなのですが……。ご迷惑をおかけしているお客様には、本当にお詫びの言葉もありません。

 もっとも、総会の結果を受けて、まず「プレミアムクラブ」については復活させる方向で、担当部門での再検討が始まったという。

 株主総会で久美子社長を中心とする取締役体制が固まったことで、ひとまず経営の混乱は収まるとみられる。一方で、勝久氏が18%超の株式を保有する筆頭株主であることには変わりはない。株主総会で予想以上の大差が付いたため、再び、同じような株主提案を繰り返すことは難しいとみられるが、このまま騒動が終結するとも考えにくい。

 実際、勝久氏はこれまでのインタビューで、「(総会で負けても)創業者は会社に行くことができる」と発言しており、大塚家具に関わり続ける意欲をみせていた。

久美子社長:今回のような騒動を大株主として起こすやり方は、会社のことを本当に考えているのなら、あり得ないことだと思います。こんな騒動を今後も繰り返すようだと、本当に会社はダメになってしまいます。総会で株主の皆様から審判をいただいたのですから、前会長には、その結果を真摯に受け止め、当社の企業価値向上という共通の目標に向けてご協力いただけると期待しています。

 今後は、創業者で大株主でもある勝久氏の処遇がひとつの焦点になりそうだ。総会前に、久美子氏は創業者として相応しい名誉職を用意したいと語っており、社会貢献活動などを行う財団を設立することなどを考えている模様だ。こうした処遇を勝久氏が受け入れるかどうかだろう。

「もはや株主さんに判断していただく他ない」「大株主さんは判断を間違えないと信じています」と会見で語っていた勝久氏。その株主の判断を尊重するのであれば、これ以上の泥仕合を演じることはできないだろう。

磯山友幸執筆者:磯山友幸

1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト。著書に『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)などがある。
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