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被災地の地方創生に必要なのは“ビジネス”、そのハブは信用金庫?

勝負の年となる、2015年の被災地

2015年3月11日で東日本大震災から丸4年となりました。5年目をむかえる今年は、5年間の「集中復興期間」の最後であり、ある意味勝負の年と言えます。

そんな折、復興庁の方や被災地の信用金庫の方が参加し事例共有をするイベント「わがまち基金シンポジウム」に参加し、被災地のビジネス支援について学んできましたのでまとめます。

「わがまち基金」とは、地域の金融機関が地域コミュニティにおけるビジネス支援として融資や各種サポートをするプロジェクトのこと。金融機関のネットワークや経営ノウハウを使い、借り手にも貸し手にもメリットのある仕組みを作り、地域が地域を支えるスキームを構築することが大きな目的となっています。

今回のシンポジウムでは、東北被災3県の5つの信用金庫から理事長が参加し、また復興庁による情報共有などを含めて事例発表が行なわれました。今回の5信用金庫の理事長の言葉として共有していたのは「復興の土台がやっとできた」という点。とにかく、インフラ整備に時間がかかったが、やっと復興に本格的に取り組めるようになった、と。現場で実際の活動をしていらっしゃる方々の声は非常に参考になりました。

本稿では被災3県(岩手・宮城・福島)、特に福島の復興と地方創生についてまとめます。

東日本大震災の現状

まずは、被災地の復興状況を簡単に確認しましょう。

現在の避難者数約23万人、災害瓦礫処分は岩手・宮城ともに100%で福島は95?%、医療施設・学校施設復旧は95%以上、ライフライン・インフラ整備は80%前後が完了しており、ハード面の整備はそれでもこの4年で整ってきているそうです。その半面、住宅再建や、福島の除染や避難における原発関連問題はまだまだ課題があり、整備が思うように進んでいないことが改めてわかっています。(復興の現状|復興庁、2015年3月10日発表資料より

また、福島県避難指示区域の約8万人に対して行ったアンケート調査によれば、住民の20%から最大58%の人々は「もう戻らない」と回答しています。(復興の現状と課題|復興庁、2015年1月発表資料)これらの数字から推測するに、特に福島の原発周辺エリアの復興はとても大きな問題をはらんでいるように思います。

私は、先日、特別な許可をいただき福島第一原発に取材にいってきましたが、(参考:原発の中で考えた、東日本大震災と企業の社会的責任 )地震・津波・放射能という3つの被害があった福島東部、特に原発周辺のエリアは、復興どころではなく、そもそも立ち入りが禁止・制限されている場所でした。

原発問題により引き起こされている、労働人口減少や、放射能の影響による子どもの減少。ハード面が整えば良いという単純な話ではないことが現場を実際に見てみるとわかります。除染が進んでいるとはいえ、まだまだ「ホットスポット」と呼ばれる放射線量が高いポイントも点在しています。

私の原発取材は原発までバスでの移動でしたが、ホットスポットの微量ながらもグングン上がる計測器の数字にはぞっとしました。ほんの数秒で、数分前の何倍にも線量が上がるのですから。これを知っているであろう、地元にいた人たちは果たして戻りたいと思うのかどうか…。

今回の「わがまち基金」シンポジウムでは、福島県から、ひまわり信用金庫(いわき市)と、あぶくま信用金庫(南相馬市)の理事長が参加されていましたが、変な話、原発関連の話はほとんどありませんでした。シンポジウムの趣旨が違うといえばそれまでですが、「福島の復興」と「原発問題」は別の課題ではあるものの、密接な関連性があり、そのあたりの情報開示があまり進んでいないことがそもそもの問題なのかもしれません。

もしかしたら情報開示はされているのかもしれませんが、少なくとも首都圏の方はマスメディア情報による「汚染水問題」くらいしか現状を知らないと思います。

ビジネスモデルの発掘

冒頭でスピーチを行なう、日本財団・尾形武寿 理事長
今回のシンポジウムで何度か取り上げられた“被災地の企業が求めているもの”はズバリ「売上・販路」だそうです。

今は助成金などの支援があっても、未来永劫あるわけではありません。まだまだ復興に莫大な費用がかかるものの、その予算が満足にないとしたら・・・自分たちで作り上げるしかありませんよね。農業・漁業などの一次産業も盛り返してきているものの、なかなか販路が開けていない事業も多いそうです。

ここで思ったのですが、それって別に被災地でなくても、日本の中小企業350万社の多くが課題にしていることだと。政府のいう地方創生がどのレベルで実行されるのかはわかりません。しかし、地域に根ざしたビジネスを始めとして、首都圏在住者を顧客とする物販・流通などまでトータルで考えても、一番重要なのは「売上」です。これがなければ何も始まりません。

特に震災から4年がたち、ハードはそれでも整ってきているものの、ソフトとしての地域コミュニティへの貢献が問題となっているというのです。結局「売上・販路」を作ってビジネスをまわさないと、地域に経済効果も新規雇用も生まれません。となると復興に必要なのは、地元企業の支援です。

ビジネスを盛り上げることで雇用を生み出す。雇用が生まれることで地域に人が戻ってくる。人が戻ってくれば、復興につながる。今後、福島原発の一時帰宅エリアが解除になる地域が出て来たとき、その時に仕事がなければ人は戻ってきたくても戻れませんから。

そういった視点でみても、被災地に必要なのは「復興」ではなく、普通の「ビジネス」なのでしょう。前述したように、日本中の地方と大きな仕組みは変わりません。地元企業のビジネスを支援するスキーム、ノウハウ、ネットワーク、アイディアなどが改めて必要になってきます。そして、そのハブとなるのが、ネットワークやリソースのある地域の信用金庫だと。このシンポジウムで地域の信用金庫の重要性を改めて感じました。

復興は前代未聞の地域活性化プロジェクト

復興支援は、まさに地方創生そのものなのかもしれません。

現場に物理的なリソースがない中で、どうやって復興をしていくのか。これは、言い換えれば、超巨大エリアで行なわれる前代未聞の地域活性化です。ここ数十年で誰も経験のしたことがないこの命題をクリアできたとき、そのノウハウは、日本全国の過疎化地域に応用できるものとなるでしょう。実際には、各地方が復興支援資金などの大規模な資本を使うことはできないですが、そのビジネスの作り方は非常に参考になると思います。

ビジネスが盛り上がらないと、地域は盛り上がらない。これは絶対そうなのだと思います。そんな中で「わがまち基金」プロジェクトは、助成という形ではなく融資という形をとった今回の取組みは非常に興味深い事例なのだと思います。ノーベル平和賞受賞者・ムハマドユヌス氏の、貧困層に小資本を融資するという「マイクロ・ファイナンス」モデルの、まさに日本版とも言えるかもしれません。

今後は今回の取組みのように、地域のハブになる信用金庫などの支援組織がどこまでビジネス支援できるのか、ということがポイントになることは間違いないでしょう。個人・企業問わず、今後も復興支援に関わっていくという方々は、寄付や助成だけではなく「どうやってビジネスをしてくか」を中心に考え・実行してくことが重要となりそうです。

■参考リンク
わがまち基金プロジェクト
被災地の元気企業40-創造的な産業復興を目指すフロントランナーたち|復興庁
復興の現状と課題|復興庁 

(取材協力:日本財団)

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