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スタバのシュルツCEOが新刊に新メディア、大統領選出馬狙い???

念のため日経テレコンで「スターバックス シュルツ 大統領選 出馬」のキーワードで過去記事を検索しましたが結果はゼロでした。いまのところ、そういう話は全くなさそう。なのに、なんでシュルツ(Howard Schultz)氏が大統領選に出るかも、などと思い付いたか。

始まりは米紙シアトル・タイムズ(Seattle Times)の「著名なワシントン・ポスト紙記者がスタバとパートナーとなるため退社へ」という記事でした。

その著名記者とはラジブ・チャンドラセカラン(Rajiv Chandrasekaran)氏というのですが、彼は昨秋、シュルツ氏との共著「For Love of Country」という本を出しました。副題が< What Our Veterans Can Teach Us About Citizenship, Heroism, and Sacrifice>とあるように、海外で戦って帰国した退役軍人にまつわる内容のようです。

これが、どうして大統領選出馬?までつながるのか。

まずはチャンドラセカラン氏のこと。彼は大学時代のインターンから一貫して20年間ワシントン・ポストで働いてきた記者で、同紙のバグダッド支局を開設するなど中東取材が長く、イラク戦争の内幕を描いた「Imperial Life in The Emerald City」(2006年)は、2010年の映画「Green Zone」の元になったほどです。そして現在はワシントン・ポストの編集局次長の要職にあります。

一方、シュルツ氏。スターバックスを世界一有名なコーヒーショップにし、前回記事で紹介したように、フォーチュン誌「世界で最も賞賛される企業50」で堂々の5位という優良企業に育て上げた辣腕経営者であると同時に、時に政治的、社会的にインパクトのある発言も厭いません。

例えば、未だに議論が残る同性婚については、本社のあるワシントン州当局が同性婚を認める法案を出した2012年に、いち早く賛成の立場を表明し、株主総会で「客が減る」というクレームに対してもシュルツ氏は毅然とした態度を取りました。

また、銃規制についても賛成の立場で、2013年9月17日の同社のブログでこう書きました。< today we are respectfully requesting that customers no longer bring firearms into our stores or outdoor seating areas>ーーお願いですから、今日から銃を持って入店しないで下さい。同性婚の時同様、株主から「客が減る」とクレームが出ましたが、そう思うならスタバの株を買わないでよろしい、と撥ね付けたそうです。

そして、2013年には戦場帰りの退役軍人とその配偶者を2018年末までに少なくとも1万人雇用すると発表、着々と採用しているようです。その一方、2012年にはロバート・ゲイツ元国防長官をスタバの取締役に招いています。

さらに、自身の家族財団から3,000万ドルを支出してOnward Veterans Fundを創設しました。そこには「彼ら退役軍人は任務を終えたが、我々の責任は始まったばかりだ」として、寄付を募っています。帰国した退役軍人たちのPTSD、脳損傷などの調査や救済に活動しているようです。

昨年11月のVeterans Day(退役軍人の日)にはブルース・スプリングフィールドら豪華なメンバーを招いて兵士を称える無料コンサートを彼自身が中心になって組織しました。

このように、イラク戦争での米軍兵士の悲惨な内情を知る老練な記者と退役軍人への深い思いを持つ二人が出会い一緒に書いた本が先に掲げた「For Love of Country」。読まずとも大体の方向は分かりますが、その書評がワシントン・ポストに載っていますので、ご参考までに。

これを機に、チャンドラセカラン氏はワシントン・ポストを3月冒頭に退社し、シュルツ氏とパートナーシップを組んで、つまり強力な後ろ盾を得て、シアトルに新たなメディアを立ち上げることになったとのことです。

シアトル・タイムズの記事によると、チャンドラセカラン氏は「スタバのPRや販促なんかじゃなくて、social-impactのあるコンテンツを発信していく」と意欲満々のよう。しかし、スタバのスポークスマンは「最初のパートナーシップは、我々の退役軍人雇用事業と関連するものに焦点を合わせる」と語っています。

冒頭では、「大統領選出馬の話はいまのところ全くないようだ」と書きましたが、実は、この動きが出る前に、ニューヨーク・タイムズのコラムニストMaureen Dowdさんが、昨年11月のコラム「A Cup of G.I. Joe」の中で、シュルツ氏の大統領選出馬の気配を感じたと記しているのです。

それは、先に紹介したように、ゲイツ元長官の招聘に加え、国防総省や退役軍人が多く入院しているWalter Reed陸軍病院、陸軍基地訪問などの活動退役軍人に関する本の出版、さらに自ら組織した退役軍人を称える無料コンサートで上映予定の映像クリップに、シュルツ氏がアーミーグリーンのダウンベストを着用し、金髪の夫人とともに現れるのを見て、そう感じたようです。(自身の財団のカバー写真でも、夫人同伴で陸軍のダウンベストを着ているようで、徹底しています)

それに加えての、新メディア発足です。社外活動にアグレッシブなシュルツ氏のことですから、パートナーシップを組んだ以上は、退役軍人の処遇問題を軸に、この新メディアを介してのムーブメントを作り出して行きそうな気配です。なにしろ、米国で最も信頼されている組織、それも圧倒的に高いのは軍隊なのですから。

なので、ここまで米軍、退役軍人問題に傾倒するシュルツ氏の行き着く先は、ニューヨーク・タイムズのDowdさんが感じたのと同じ「大統領選出馬」というのが、当方の掛け金無しの掛けということです。なんだか匂う。

そういえば、チャンドラセカラン氏が在籍したワシントン・ポストを買収したベゾス氏のアマゾンも本拠地はスタバと同じワシントン州シアトルですが、単なる地元の大物へのライバル心でメディアに触手を伸ばしたとはとても思えませんし。

ましてや、Dowdさんのインタビューにこう答えているのをみれば。

「アメリカンドリームはボロボロになった。それは機能不全の政府、正真正銘の正しいリーダーシップの欠如とリンクしている」

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