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人工知能に対抗する『人間ならでは』を探求する

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■川上氏の危機意識

(株)KADOKAWA・DWANGOの川上量生会長はこのところ人工知能に強い関心を抱いていると見えて、自分で研究するだけではなく、研究所を設立するなど、人工知能が席巻するであろう未来への対処方法を真剣に考えている様子が伺える。そして、しばしば強い懸念を口にしている。近頃人工知能について懸念を表明する著名人は増えて来ているが、川上氏の場合は、『2045年』のようなロングレンジの話だけではなく、5~10年程度で確実に起きてくるであろう現実に対する懸念にも言及し、かつ対処方法としての自らの事業/ビジネスの展開についても併せて語るため、切迫した危機意識がより現実味を持って伝わって来る。ごく最近のインタビュー記事も、タイトルからしてかなり刺激的だ。

人間は終わるんですよ、その中で生きていくしかない - ロボット - 日経テクノロジーオンライン

それとは別に、総務省主宰の『インテリジェント化が加速するICT(情報通信技術)の未来像に関する研究会』という研究会でも熱弁をふるったようだ。

総務省、「2045年の人工知能」の研究会で激論  :日本経済新聞

総務省|インテリジェント化が加速するICTの未来像に関する調査研究会|インテリジェント化が加速するICTの未来像に関する調査研究会第1回研究会資料

■これからなくなる仕事

その研究会には、日本のインターネット界の大御所、慶應義塾大学環境情報学部学部長の村井純氏や、人工知能の研究者で、川上氏が設置した『人工知能研究所』の客員研究員も勤める東京大学工学系研究科准教授の松尾豊氏らもメンバーとして参加している。松尾氏のプレゼン資料は公開されていて読む事ができるが、これがまた非常にわかり安くまとまっていて、最近雨後の筍のように出始めた解説書等とは一線を画す素晴らしい内容と言えるのだが、この資料の中の『これからなくなる仕事』は、従前の類似のまとめよりさらに一歩踏み込んで具体的であり、非常に迫力に満ちている。

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実際、巷ではこれを裏付けるかのように、どんどん人工知能の応用例が出て来ている。明らかにそのスピードは加速している。

裁判証拠を自動で見つけるPredictive Coding

人工知能やIoT分野で飛躍する日本企業、ビッグデータ規制を緩め支援を 〈東京IT新聞〉|dot.ドット 朝日新聞出版

作曲する人工知能「ラムス(Lamus) 」

超展開すぎる・・・作曲する人工知能「ラムス (lamus)」:DDN JAPAN

非常に高いAI(人工知能 Appier DSP)技術を活用している広告サービス

AI(人口知能)を活用した広告サービス「Appier(エイピアー)DSP」とは? | フィードフォース全力ブログ

全産業に関わる問題だけに、どの業種の仕事に従事しているのであれ、誰も避けて通れない深刻な問題と言わざるをえない。想定される仮説を真剣に研究して、どのようにこれに臨むのか、誰もが考えないわけにはいかないはずだ。

■Googleのような米国企業の強さ

ただ、この問題について調べ始めるとすぐにわかることだが、日本企業はGoogleのような米国企業に大きく遅れをとっていて、このままでは、時間が経てば経つほどその差が決定的に広がってしまう恐れがある。川上氏は、この点について次のように述べている。

川上氏は「コンピューター棋士はディープラーニングのような先端技術を使っているわけではない。あくまで既に成熟している技術の発展形だが、それでもプロ棋士に勝っている。プロじゃない人なら負けてしまうレベルにまで達している」と述べて、人工知能関連技術の現状がかなり進んでいるとの認識を示した。

 そのうえで川上氏は「人工知能に関連する人材もお金も、Google(グーグル)を中心とした米国企業に集中しすぎている。最新の研究に基づく成果が日本の産業に配分されないのは大きな問題だ」と強調した。

人間は終わるんですよ、その中で生きていくしかない - ロボット - 日経テクノロジーオンライン

では、どうすればいいのか。米国企業の前になす術もなく主導権を握られてしまうのか。何か、日本らしい反攻の手段はないのか。

■日本的ソフトパワーの探求

これまですでに何冊か参考になりそうな文献等にはあたってみたが、ありきたりの技術書や、Google等の米国企業の解説本では、ヒントを見つけることは難しい。少々意外に思われるかもしれないが、マーケティングを深く理解した著者によるユーザー/市場分析、企業論等の方が参考になる。というのも、Google等の米国企業が如何に高度な技術力を駆使してきたとしても、少なくとも商品やサービスを日本の消費者に選考してもらうにあたっては、技術力だけが決め手になるわけではないからだ。

そもそもこれまでに成功してきた日本企業も、その強さの源泉は大発明でもなければ、単純な技術力でもない。日本的ともいえるソフトパワーにこそあったはずだ。21世紀の成熟市場に臨むにあたって、あらためてこれを問い直すことは、米国企業が最新の技術を持ってきても、機械(人工知能)が跋扈するようになっても対抗しうる日本ならではの強さ、そして、もう少し普遍的な、人間ならではの創造性、直観、高等感情等を再発見していくきっかけ(入り口)にもなりうる。

■技術も必須

但し、技術力ではないと言っておきながら、いきなり矛盾したことを言うようだが、情報系の技術(ICT、人工知能等)には最大限、真剣に取組むことは大前提だ。今後は市場に参加したければ技術の理解は避けて通れないと知るべきだ。特に、人工知能を利用したビッグデータ分析の分野等、いかに先端企業に遅れをとっていようが、二番煎じだろうが、それぞれの立場で最善を尽くしておくべきと考える。

近い将来、人工知能が現実に最も大きな成果を生む可能性があるのは、ビッグデータ分析の分野だと私は確信している。成果の種類はその企業なりに異なるだろうが、従来では見つけることができなかった、ビジネス上の『法則』やユーザー行動の『原則』等が次々と明らかになり、それは間違いなくイノベーションの源泉となっていくだろう。残念ながら日本企業がこの分野で唯一無二の勝者となる事は難しいだろうが、ここにこれから述べるような日本企業ならではの取り組みを被せていく事で、独自のポジションを維持して、勝ち味に転じることは必ずできると信じる。

■参考図書

今回は、(株)インフォバーン代表取締役Co-CEOで、日本版ワイアードの初代編集著でもある小林弘人氏と、日経ビジネスチーフ企画プロデューサーの柳瀬博一氏の対談集、『インターネットが普及したら、ぼくたちが原始人に戻っちゃったわけ』*1(以降、『原始人』と略称する)より、3つの論点を援用して、上記の問題(人工知能の技術を駆使するGoogle等の米国企業への対抗策)への解決の糸口の一端について述べてみたい。

無論、これで終わりではない。むしろこれはきっかけに過ぎず、探求はここからもっと広く、もっと奥へと進めていく必要がある。本書はこれ以外にも縦横無尽に現状の日本企業の問題点等について語られているのだが、たまたま上記の問題を考えている最中に読む進むうちに、驚くほど私自身の日頃の問題意識とも重なる論点があり、事例としてもわかりやすいので、参照し援用させていただくことにした。文中、私自身の見解と多少混線する部分もあるが、どうかご容赦いただきたい。

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