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ロジカルシンキングができない人々【論理よりも感情が優先される国】

■犯人逮捕前と犯人逮捕後の対処がなぜ同じなのか?

 和歌山県紀の川市で発生した小学5年生殺害事件の容疑者が逮捕された。週明けの本日、犯人逮捕後初の登校日を迎えたとのことで、以下のような報道が為されていた。

事件の被害者が通っていた同学校の児童らはボランティアと警察官が見守るなか保護者同伴で登校しました。

 こういう悲劇的な事件が起こった後で、皮肉めいた記事を書くのは憚られるのだが、読者の良識を信じて誤解を恐れずに敢えて言わせていただくと、毎度のことながら、これはおかしいと思う。

 通り魔事件や猟奇殺人事件が起こる度に、こういう報道…と言うよりも、事後対処が為されるのだが、犯人が逮捕されたということは、複数犯でもない限り、その地域はもう安全になったことを意味する。事件が発生したということもあって普段以上に物々しい雰囲気で警察官が巡回しているわけだから、日本中で最も事件が起こりにくい安全な地域になっていると言っても過言ではない。

 そんな地域で「ボランティアと警察官が見守るなか保護者同伴で登校」というのは、よく解らない。今回の事件が、通学途中に熊に襲われたとかいう事件なら、まだ仲間の熊がいるかもしれないという危険性があるかもしれないが、事件を起こしたのは1人の意思を持った人間であり、その危険人物が隔離されたのであれば、もはや危険性はないと考えるのが普通ではないだろうか。

 もっとも、「子どもが恐がるから」という理由で保護者同伴というのは頷ける。物心付かない子どもの恐怖心を和らげるために保護者が同伴するというなら理解できる。しかし、ボランティアや警察官が見守る必要性はあまり感じられない。犯人が逮捕されていない危険な状況下であれば警護は当然のことだろうが、犯人が逮捕された後になっても、ボランティアや警察官が見守っているというのはどこかおかしくないだろうか?

犯人が逮捕される前に

「事件の被害者が通っていた同学校の児童らはボランティアと警察官が見守るなか保護者同伴で登校しました。」
これなら、筋が通っている。

しかし、犯人が逮捕された後に

「事件の被害者が通っていた同学校の児童らはボランティアと警察官が見守るなか保護者同伴で登校しました。」
これでは、筋が通らない。

 結局、この報道から分かることは、「犯人が逮捕されれば安全」という論理的事実と、「犯人が逮捕された地域は安全」という確率的事実が、全く無視されているということである。論理と確率を無視し、感情だけが優先されていることがよく分かる事例だと言える。

■確率論で考える「事件現場」と「宝くじ売場」の共通点

 少し話を和らげるためにも、別の例で考えてみよう。

 例えば、「宝くじ」というものでも、1等当選が出た宝くじ売場には、毎度、長蛇の列ができる。その理由はおそらく「1等当選が出た所だからまた当たるかもしれない」ということなのだろうが、よくよく考えてみると、これほど可笑しな話もない。確率的に考えれば、同じ宝くじ売場で1等当選が出る確率は最も低くなるはずだからだ。

 先の事件の例とは逆に、1等当選が出た宝くじ売場は、当選発表後には「最も当たらない宝くじ売場」に変化しているという確率的事実があるわけだが、これも完全に無視されてしまい、なぜか「また当たるかもしれない」という何の根拠もない感情論が罷り通ることになる。

 本来であれば、1等当選が出た宝くじ売り場は閑古鳥が鳴いて然るべきところだが、実際には逆に長蛇の列が出来上がる。このような可笑しな逆転現象が起こるということ自体が、論理や確率を無視し、感情のみが先行しているという証左でもある。

 この国では、至るところで論理や確率よりも感情だけが優先される向きがある。その感情論に敵対した意見は、どれだけの正論であろうとも、いつも感情論に否定される。どれだけ無意味な行動や対処であろうとも、感情こそが正義だと言わんばかりに。

 事件が発生した場所で同じような事件が発生する確率は最も低く、1等当選宝くじが出た場所で、再び1等当選が出る確率は最も低い。これは統計的な事実であり、残念ながら感情論が入り込む余地はない。このことが解らないというのであれば、その人物は「私はロジカルシンキングができません」と言っているに等しい。

 こんな記事を書くと、またぞろ感情論者からのご批判を頂戴しそうだが、批判する前に、まず自分の頭で物事を考えることの重要性を冷静に考えていただきたいと思う。

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