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【書評】一億総ツッコミ時代/槇田雄司

一億総ツッコミ時代 (星海社新書)

一億総ツッコミ時代 (星海社新書)

内容(「BOOK」データベースより)

ツイッターで気に入らない発言を罵倒し、ニコ生でつまんないネタにコメントし、嫌いな芸能人のブログを炎上させる。ネットで、会話で、飲み会で、目立つ言動にはツッコミの総攻撃。自分では何もしないけれど、他人や世の中の出来事には上から目線で批評、批難―。一般人がプチ評論家、プチマスコミと化した現代。それが「一億総ツッコミ時代」だ。動くに動けない閉塞感の正体はこうした「ツッコミ過多」にある。「ツッコミ」ではなく「ボケ」に転身せよ。「メタ」的に物事を見るのではなく「ベタ」に生きろ。この息苦しい空気を打破し、面白い人生にするために!異才・槇田雄司(マキタスポーツ)による現代日本への熱き提言。

ご存知、マキタスポーツこと槇田雄司による著書。出版からすでに2年半あまりたっているが、いまさら読んでみた。

本書は、テレビのバラエティ番組での(松本人志を中心とした芸人の)口真似で他人を評価する人=「ツッコミ」が増加した反面、「ボケ」に回る人が少ない「ツッコミ高ボケ低」の状況を指摘。それが過剰になっていった先で、「ツッコミ」が自分が攻撃されない位置から他者を攻撃するためのツールとかし、結果的に社会にギスギスした閉塞感が生まれていると訴える。そうした上で、ボケとして生きること、ボケとしての自分を肯定することを勧めている提言の書だ。

なるほど確かに、一昨年の夏頃に連日のように盛り上がっていた「バカッター」騒動などを振り返っていると、他罰傾向が強くなっているような気がする。それを「ツッコミ」とネーミングしたあたりが、実はこの本最大の功績だったんじゃないだろうか。

昨年は「変な人」が豊作だったが、変わった人は見つけ次第訴状にあげろみたいな空気はちょっと息苦しかったし、「誤ったら死ぬ病」にかかってしまう人なんかも、もしかしたら「ボケ」方を知らないから謝れないのかもしれない。

それから、「ツッコミ」の問題とはちょっとズレていると思うのだが、以下の指摘も膝を打つものがあった。

 一般の人でも「ハードルが上がっちゃった」なんてことを普通に言う。これもお笑い界のテクニカルタームが流出したものです。そんなことは別にいいわなくてもいい。「ハードル上がっっちゃったから、やりづらくなっちゃったな」なんて言わなくてもいいのに、今日の日本人は言わずにはいられない。特に、酒の席レベルなどで、おちゃらけたい人、面白い人だと思われたい人に顕著です。

 誰でも「面白い人」であることにしがみつきたい瞬間があると思います。でも、そういうときはお笑いのことは気にしないほうがいいのです。

p.27(強調原文ママ)

このお笑いを「気にする」という表現。ぼくのように酒席で「おちゃらけたい人、面白い人だと思われたい人」にはクリティカルヒットする。

読みながら、そうだよなぁ……でも、ついつい、やっちゃうんだよなぁ……と思ってしまった。

そうした頷ける部分がある一方で、ページを進むに連れて「西洋文化はツッコミ文化」など、議論を拡大しすぎて雑に感じてしまうところも否めないのだが……。

読んでいて思ったのは、「ツッコミ」増加の背景にはネットの普及がデカいということ。

一部の人が個人サイトをゴリゴリ立ち上げて何かを発信していたような時代でなく、とくにはてブやTwitterなど多くても百数文字という短文によるカウンター型のコミュニケーションが可能になったことがあるんじゃないだろうか。

つまり「ツッコミ高ボケ低」の状況は、「表現の民主化」の副産物にも思える。

民主化によってのプレイヤーの増加は当然「ツッコミ」界隈全体のレベル低下も招く。

【ISILイスラム国】twitterで何も調べずに安倍政権を批判している人の知能指数がよくわかるツイート「日本にイスラム人入国させんとって。てゆーか阿部やめろ」:ハムスター速報

頭はよくないし才能もないけど、でも何かを発信したいという人が「ツッコミ」に回ろうとして失敗するパターンもちらほらある。

現実の「ツッコミ高ボケ低」が難しいのは、これが最終的には調和のとれた1つの作品にすることは至上命令の「テレビ番組」とは違うというところだ。

実際の番組だったら、他の人と被った「ツッコミ」をすれば、MCなどのそれを遡上にあげられる。そこには、番組をよりよいものにするための協調の姿勢が必要だからだ。

でも、ネット上にはMCのような全体のとりまとめ役がいない。というかそもそも、その場のプレイヤーはそんな共同の目的を持っているわけではない。

だから、このイラストのような事態も起こりえる。

[画像をブログで見る]

出典はイラストレーターのあきまん氏のtwitpic

頭がよくなく、また何かを表現する力もない人にも、それでも平等に「ツッコミ」という権利が与えている。

それが、「総表現社会」と言われている現代の袋小路なんじゃないだろうか。

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