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想像以上に減速している中国経済 2015年の展望 - 石 平

始まったばかりの2015年、中国経済は一体どうなるのか。それを占うためにはまず、昨年の中国経済の実績を見てみる必要があろう。1月20日に中国政府が発表した、7.4%という2014年の経済成長率は、今後の中国経済の暗い見通しを暗示するような深刻な数字であった。

 「成長率7.4%」といえば、先進国の中では高い数字であるが、中国ではむしろ大きく下がったと言える。政府発表の中国経済の成長率が7.5%を切ったのは実は1990年以来24年ぶりのことである。しかも、成長率がピークに達した2007年の14.2%と比べれば、7.4%はその半分程度。つまり2008年からの7年間、中国の成長率は半分ほどに下落しているわけで、その数字が尋常ではないことがよく分かる。

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(画像:istock/EyeScaTch)

経済成長率に比例しない?
電力消費量、鉄道貨物輸送量

 さらに言えば、政府の発表した7.4%という2014年の成長率が果たして本当かどうかがまず疑問である。

 一国の実体経済が伸びているかどうかを見る場合、より確実な指標の一つは、生産活動を支える電力消費量が伸びているかどうかである。この物差しで見れば、中国経済の減速は政府発表以上に深刻であることが分かる。

 たとえば2013年、中国政府公表の成長率は7.7%であったが、それに対して、関係部門が発表した13年の全国の電力消費量の伸び率は同じ7%台の7.5%であった。しかし2014年、中国全国の電力消費量の伸び率は13年の半分程度の3.8%に落ちていることが判明している。だとすれば、14年の経済成長率が依然として7%台とは疑問を抱かざるを得ない。

 2014年の中国経済の減速が政府発表以上に深刻であることを示すもう一つの数字がある。中国交通運輸省の発表によると、2014年1月から11月までの中国国内の鉄道貨物運送量は前年同期と比べると3.2%も減っていることが分かった。生産材や原材料の多くを鉄道による輸送に頼っている鉄道大国の中国で、鉄道の貨物運送量が前年比で3.2%減ということは、中国全体の経済活動がかなり冷え込んでいることを物語っている。

 簡単に言えば、鉄道貨物運送量がマイナス成長に転じている2014年、経済全体の成長率が依然として7%台を維持しているとはとても思えない。政府が発表した去年の7.4%の成長率はかなりの水増し部分があることは明らかである。

 要するに、2014年の中国経済はほんの少ししか成長していないか、あるいはまったく成長していないかのどちらかであろう。それこそが、今の中国経済の厳しい現状である。

中国経済の行方を大きく左右する不動産市場

 だとすれば、2015年の中国経済は一体どうなるのかは、火を見るよりも明らかであろう。今年の中国経済は昨年よりさらに落ちていくことはあっても、上がる要素はなさそうである。

 まずは中国経済の行方を大きく左右する不動産市場の動向から見てみよう。今年1月、中国指数研究院は昨年12月に全国百都市の不動産平均価格が前月よりまたもや下がったと発表した。しかもそれは、昨年5月から連続8カ月の下落となっていることから、私が以前から予測している不動産バブルの崩壊は確実に進んでいるように見える。

 実は昨年夏あたりから、中央政府と地方政府は「救市(不動産市場を救うこと)」と称して、久しぶりに利下げを断行したり不動産購買への規制をことごとく撤廃したりして必死に努力してみせたが、不動産市場の低迷と価格の下落を食い止めることはついに出来なかった。「政府はいつでも不動産価格をコントロールできるからバブルの崩壊はない」という中国式の神話は今や崩れつつある。

 問題は、今年どうなるかであるが、昨年末に発表された中国社会科学院の「住宅白書」は、2014年の住宅市場に関して「投資ブームの退潮、市場の萎縮、在庫の増加」などの問題点を指摘した上で、「2015年の住宅市場は全体的に衰退するだろう」との予測を行った。

 そして同じく昨年末の12月29日、中国国務院発展研究センターの李偉主任が人民日報に寄稿して、2015年の経済情勢について「長年蓄積してきた不動産バブルは需要の萎縮によって崩壊するかも知れない」と語った。国家直属のシンクタンクの責任者が「不動産バブル崩壊」の可能性を公然と認めたのは初めてのことだが、前述の社会科学院白書と照らし合わせてみると、どうやら中国経済をよく知る人たちの間では、不動産バブルはそろそろ崩壊してしまう、という共通した認識が既に定着しているようである。

 今のすう勢から見ると、本格的なバブル崩壊はまさにこの2015年に起きる可能性が大であるが、それが現実に起きてしまえば、中国経済全体は一体どうなるのだろうか。

 今まで、不動産業は中国経済の支柱産業と呼ばれてきた。たとえば2009年の1年間、土地の譲渡や住宅の販売などによって生み出された不動産関連の経済価値の総額は7.6兆元に上るという試算がある。それは、当年度の中国のGDPの33.5兆元の2割以上を占めている。09年からも不動産投資の伸び率はずっと経済全体の伸び率の倍以上を維持してきたから、GDPに占める不動産業の比重は今でもそう変わっていない。しかし今後、バブルの崩壊に伴って不動産業が「全体的に衰退」となれば、中国経済の受ける打撃は成長率の1、2%の低減という程度のものでないことは明々白々である。

内需拡大も絶望的

 不動産バブルが崩壊して「支柱産業」としての不動産業が衰退してしまうと、今まで不動産業の繁栄にぶら下がってきた鉄鋼やセメント・建材などの基幹産業がいっせいに沈没するのは避けられないであろう。不動産投資低減のマイナス効果は、今でも既に不況に陥っているこの一連の産業の低迷に拍車をかけることになるからだ。

 実際、中国国家統計局と中国物流購入連合会が2月1日に発表した今年1月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、前月に比べて0.3ポイント低下して49.8となり、景気判断の節目となる50を2年4カ月ぶりに下回った。不動産バブルの崩壊が始まる中で、製造業全体の衰退はすでに鮮明な傾向となっているが、今後、バブル崩壊がより本格化していけば、中国経済の土台となる製造業の沈没は必至のすう勢となろう。

 製造業が沈没すれば、それに支えられている雇用は大幅に減り、よりいっそう失業の拡大が予想される。しかも製造業全体の業績不振の中で従業員の賃金水準がさらに下落することも考えられる。それがもたらす致命的なマイナス効果はすなわち、中国政府が経済成長率の失速に歯止めをかける役割を多いに期待している内需の拡大がますます不可能となることだ。失業が拡大して賃金水準が下がってしまうと、今後の国内消費は縮小することがあっても拡大することはまずない。

 しかも、不動産バブルの崩壊は別の側面においても中国の消費拡大に大きな打撃を与えることとなる。今後、不動産価格が大幅に落ちていく中で、不動産を主な財産として持っている富裕層や中産階級はその財産の多くを失うことが予想される。しかし財産が失われた後でも高いローンだけが残る。中国政府が内需拡大の主力として期待しているのはまさにそういう人々であるが、彼らがこのような苦境に立たされると、中国の内需拡大はますます絶望的なものとなろう。

 とにかく、経済成長の失速がすでに鮮明となっている中国では、バブル崩壊が現実となってそれに伴う一連の悪影響が現れてくると、中国経済は実質上のマイナス成長に突入してもおかしくないような状況となってくるのである。

 さらにいえば、今やGDP規模の約4割に相当する融資規模に膨らんだシャドーバンキングが今後一体どうなるのかは、中国経済にとってのもう一つの時限爆弾である。昨年10月1日掲載の私のコラムで指摘しているように、中国のシャドーバンキングの中核的存在を成している「信託投資」は、実はその半分程度が不動産業への貸し出しとなっているから、今後、不動産バブルの崩壊が本格化して不動産業へ投じられた「信託投資」の多くが回収不可能となると、「信託投資」そのものはいずれか破綻してしまい、「信託投資」の破綻はすなわちシャドーバンキング全体の破綻に繋がりかねない。

 そして万が一、シャドーバンキングが破綻して全国的金融恐慌となると、中国経済はもはや成長するかどうかどころではない。

【関連記事】
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