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イスラム国(ISIS)に対するツイッター利用者の攻撃と海外からの評価

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イスラム国により拘束された人質の殺害予告事件が行われ,連日メディアで報じられている中,一部のメディアでは取り上げられているが,まだあまり知られていないのが,日本人のツイッター利用者が,イスラム国の関係者と思われるツイッター利用者のアカウントに対して行った「ISISクソコラグランプリ」という『攻撃』である。

今日は,この現象について,海外,特に英字メディア等の評価を紹介する形で取り上げてみたい。

1.ツイッター上で行われている「ISISクソコラグランプリ」の概要

事の発端は,日本人拘束者の殺害予告動画をツイッター上で掲載していたイスラム国(ISIS)の関係者と思われるツイッター利用者のアカウントに対して,日本人のツイッター利用者が「#ISISクソコラグランプリ」と題したタグを付けて,殺害予告動画の一部の画像を加工して,送り付けたというものである。

この「クソコラ」というのは,糞みたいなコラージュ作品の略であり,クソというのは,「酷い」という意味で使われている。

具体的に言うと,日本人のツイッター利用者が,人質2人と「ジョン」というニックネームの黒づくめのテロリストの顔などを入れ替えたり,別の画像(例えば,アニメーションのキャラクターなど)と入れ替えたりするなどして加工し,イスラム国関係者の思われる利用者に送り付け,それが,「#ISISクソコラグランプリ」と題して,ツイッター上でイスラム国と思われるアカウントなどが炎上しているのである。

どのような画像であるかについては,以下のようなサイトに掲載されているし,ツイッター上で「#ISISクソコラグランプリ」というタグで検索をすれば,発見できるであろう。

本ブログでは著作権の侵害に当たるような画像であるため,かかる画像そのものは掲載しないが,次の2つのサイトから具体的な本件の流れは理解できるであろう。

○ ツイッターで #ISISクソコラグランプリ が流行 → イスラム国の人が洒落にならないほどキレてる

http://matome.naver.jp/odai/2142181104980381001

○ 【謎展開】イスラム国メンバーが #ISISクソコラグランプリ に参戦しだしたんだけど・・・

http://blog.esuteru.com/archives/8026850.html

私は,この行為を発見した当初,「酷い。テロリストに馬鹿が挑発攻撃できてしまう時代。とてつもないことがツイッターで行われてしまっている。」と極めて否定的に受け止めていた。

また,日本のメディアで本件を報じているものも,「不謹慎である」,「人質の命にかかわるのですぐに辞めるべきだ」などと全面的に否定的に報じる風潮である。

また,他のツイッター利用者の反応を見ても,「酷い」とか,「日本でテロが起きたらどうする」とか,「フランスでテロが起きた原因を理解していない」などと極めて厳しい評価が多く見られた。

しかしながら,この日本人ツイッター利用者達の『攻撃』を,意外にも海外メディアは全否定せずに報じている例えば,「テロにユーモアで対抗」とか「アメリカ政府すら成し得なかったことを日本のツイッター利用者が実現した」などとむしろ肯定的に報じているのである。

2.肯定的に報じる英字メディア

そこで,いくつかの英字メディア,ジャーナリストの反応を紹介する。

なお,和訳は私が簡易に仮訳を付したものであり,誤訳等があるかもしれないことを前提に読んでいただきたい。

日本のツイッター利用者がイスラム国にコラージュ画像で対抗(Japanese Twitter Users Stand Up to ISIS with...a Photoshop Meme)」と題した英字記事は,各コラージュ画像を紹介した上で,次のとおり指摘する。

いくつかのコラージュ画像をみると,ツイッター利用者が単にテロリストによる身代金要求という状況を軽視し,ふざけているだけなのかは判然としない。

他方で,日本人のツイッター利用者は,コラージュ画像で,イスラム国をからかっているように見える

人質の命を軽んじ,呑気過ぎるのではないかという懸念があるのは明白である。

しかし,日本のツイッター利用者は,恐怖を通じて人々をコントロールしようというテロリストの手法に対し,ユーモアで対抗しているのではかなろうか

(With some of the Photoshops, it's unclear if people are simply making light of the situation. In others, it does appear that they are poking fun at ISIS. The concern, obviously, is that people might seem too light-hearted about the lives of these men. Or perhaps, they're using humor to resist being controlled through fear?)

【中略】

はっきりしていることは,日本のツイッター利用者が日本政府に対し身代金を支払うように圧力をかけろというテロリストの要求に対して,それを拒否しているということである。

(What is clear, however, is that there are some Twitter users refusing to bow down to demands that they pressure the Japanese government to pay up. For now, that is.)

このように,全面否定することなく,客観的な視点から分析し,肯定的な面を指摘しているのである。

また,アメリカのNBC Newsの電子版も「日本のツイッター利用者がインターネット画像でイスラム国を嘲笑う(Japanese Twitter Users Mock ISIS With Internet Meme)」と題し,この現象を紹介した上で,次のとおり指摘する。

日本のツイッター利用者は,日本人人質事件において,全国的なコラージュ風刺画像を用いた戦いで,イスラム国を嘲笑うことで反抗している

(Japanese Twitter users are defying their country's hostage crisis by mocking ISIS with a nationwide Photoshop battle of satirical images.)

【中略】

ソーシャルメディア分析会社のTospy社によると,「ISISクソコラグランプリ」という日本語のフレーズは,この1日,2日で,6万回以上もツイッター上で言及されているという。これらのつぶやきでは,イスラム国の様々な人質映像の一部を切り取り,面白おかしく日本のゲーム文化の画像などとともに,多くが加工されている。

(The phrase, which loosely translates to "ISIS Crappy Photoshop Grand Prix," has been mentioned more than 60,000 times over the past few days, according to social analytics company Topsy. These tweets include screengrabs from various ISIS hostage videos photoshopped in comical ways, and many of the images reference Japanese gaming culture.)

このとおり,アメリカの大手メディアも必ずしも否定的には報じていない。

さらに別の英字メディアは,「日本の馬鹿げたイスラム国のプロパガンダに対する対応は,アメリカ政府でさえ成し遂げられなかったことをやってのけた(Japan's silly response to ISIS propaganda did what the U.S. government couldn't)」と題し,次のとおり指摘する。

今週,日本のインターネット利用者は,団結してイスラム国を嘲笑うためにコラージュ画像を用い,馬鹿馬鹿しく,軽蔑した画像をテロリストに送り付けるという戦いを展開した。

この努力は人質の救出には繋がらないであろうが,将来のテロを防止するという点において,少なくとも役立つものである。

(This week Japanese Internet users rallied together to mock the Islamic State (a.k.a. ISIS or IS) with a Photoshop battle that shows the terrorists in a series of  absurd and contemptuous images. This effort won’t save the hostages, but it could, in at least a small way, help prevent future terrorism.)

【中略】

アメリカ政府は,イスラム国のネット上でのプロパガンダに対し,反論のためのプロパガンダ技術を駆使してきたが,これまでのところ,アメリカ政府の試みは失敗に終わっている。

アメリカ政府の手法は,ジャーナリストに反イスラム国のメッセージを送ったり,粗末に作られたビデオを作成したりするというものであって,時代遅れであり,いずれもパッとしないものであった。

アメリカ国務省の前顧問であるShahed Amanullah氏もガーディアン紙に対し,アメリカの戦略はイスラム国のグループを強くしてしまったに過ぎないと認め,「イスラム国は彼らの支持者に対し,『見てみろ?我々はすべてにおいて力がある。アメリカがそれを証明している。』と言わせてしまっている」と述べている。

(The U.S. government has tried counter-propaganda techniques by engaging with IS online, but has failed thus far. Their methods, which include sending anti-IS quotes to journalists and creating poorly produced videos, are dated and lackluster. In a piece for the Guardian, former State Department advisor Shahed Amanullah says that America’s tactics have only made the group stronger: “They turn right around to their followers and say, ‘See? We’re every bit as powerful as we say we are, the US government is proof.’”)

では,なぜ今回の日本での出来事が貴重なのであろうか。それは,アメリカ政府が失敗してきた試みを効果的にやってのけたからである。

(So, why is Japan’s response so valuable? Because it was effective where America's attempts have failed.)

プロパガンダに対する反論を展開する上で重要なのは,相手の効果を減殺することにある。イスラム国についていえば,武装グループは,自らが正義であり,かつ,獰猛であると見せたいのである。

しかし,イスラム国のプロパガンダを間抜けなアニメのキャラクターと合成することで,日本のインターネットユーザーは,イスラム国自身が馬鹿げた存在であるように見せることに成功したのである。

テロリストグループに参加しようとする人々を,テロリストを世界の指導者が強く警戒しているということを知り,テロリストが自らの正義のために闘っているということが,参加を促すものとなってしまっている。

しかし,日本のツイッター利用者は,テロリストを取るに足らないものとして描写し,弱体化させることで,テロリストが発するメッセージの重さを破壊したのである。

(The point of counter-propaganda is to undercut the other side's efforts. In the case of IS, the militant group wants to look righteous and fierce. By combining IS propaganda with goofy anime characters, Japanese Internet users in turn made IS look silly. Those looking to join the terrorist group know that it is admonished by almost every world leader, which is part of the draw—standing up for what they see is right. But, emasculating these terrorists and depicting them as anything but serious subverts the gravity of their message.)

これは,小さな勝利かもしれない。しかし,テロリストが参加者を増やすことで力を増していることを考慮すれば,日本人がイスラム国に対する完璧な武器を用いて,世界に,そのメッセージを発したことが,新たな参加者を妨げる唯一の方法となるだろう。

(This may sound like a small victory, but considering that a terrorist group is only as powerful as its number of recruits, and it can only draw new fighters through the strength of its messaging, the Japanese may have just provided the world with the perfect weapon against IS.)

このとおり,全面的にこの現象を肯定的に捉えているものもあるのである。

実際、この現象が続く中で,いかなる理由かは不明であるが,いくつかのイスラム国関係者と思われるツイッターのアカウントが凍結されている。

確かに,この現象極めて不謹慎であるようにも思うが,英字メディアの指摘は必ずしも的外れの指摘とは切り捨てられない説得力があることは否定できない。

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