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「日雇い労働の街」から「高齢者福祉の街」へ:東京「山谷」地域で見た、日本社会の未来

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山友会の活動について伺った

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事務所のスペースにて、本日街をご案内してくださった油井さんから、山友会の活動について伺いました。

山友会は1984年に、無料診療所の運営をメインに活動をスタートしていた歴史ある団体です。代表はカナダ人のルボ・ジャンさん。もともとはカトリックの宣教師として来日したという背景があります。朝日新聞にも記事があるので、よろしければこちらも合わせてぜひ。

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現在の活動は「無料診療事業」「生活相談事業(医療、福祉、年金、債務など、生活困窮状態にある人の相談に乗る)」「配食事業(いわゆる炊き出し)」「宿泊支援事業(緊急一時宿泊、ケア付き宿泊施設の運営)」の4つ。

事業に関する資料をいただいたので転載させていただきます。精神科から内科、皮膚科、鍼灸など幅広い診察が実施されているのが印象的です。

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ともすると「甘やかしだ」という無理解な批判を受けがちな「炊き出し」。多くのホームレス支援団体と同様に、山友会は路上生活を送る人々との接点、信頼関係を得るために炊き出しを行っています。年間実施回数は約90回、総配食数24,000以上とのことです。

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彼らは地域生活が困難な高齢の単身男性を対象に、ケア付き住宅施設「山友荘」も提供しています。利用料は月に139,000円。これは生活保護費から支払う流れとなっています。食事付き・全室個室はもちろんのこと、24時間の見守り、生活サポートなども提供されています。

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「山友荘」は、周辺地域にある医療機関や介護事業所と連携しながら運営されています。2008年には「『山谷』地域ケア連携をすすめる会」が立ち上がり、全国的にもいち早く「地域ケア連携」がスタートしています。

「命を守る」から「居場所・生きがいを作る」へ

油井さんの話のなかで印象的だったのは、山谷支援のあり方のフェーズが変わっている、というお話。

彼らが支援を始めた30年前を振り返ると、かつては暴動が起きること、凍死者が出ることもありました。困窮している方々を支援する上では、何よりもまず「命を守る」という使命が最優先でした。

それから長い時間が流れ、今では地域の人々や社会保障制度の助けによって「命はなんとか守られる」というフェーズにまでは進むことができました。

しかし、人間というのは、命があれば十分であるわけではありません。油井さんは、あのマザー・テレサが山谷地域を訪れたときに残した言葉を紹介してくださいました。

この世で最も貧しいことは、飢えて食べられないことではなく、社会から捨てられ、自分なんてこの世に生まれてくる必要がない人間であると思うことです。

その孤独感こそが、最大の貧困なのです。

日本にもたくさんの貧しい人たちがいます。

それは、自分なんて必要とされていないと思っている人たちのことです。

「命」が守られることは最低限。本当の意味で貧困から脱出するためには、「居場所・いきがい」も必要だということです。

山友会も、サポートのあり方を一歩前に進める数々の取り組みを行っています。そのひとつが、2015年1月現在、クラウドファンディングで資金を集めている「ホームレスの人を対象にしたお墓」をつくる取り組み

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事務所には、かつて山友会のコミュニティとつながりがあった方々の遺影が数多く飾られていました。亡くなったあとも、こうして居場所を用意しているわけです。

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しかしながら、ここで亡くなった方の多くは「無縁仏」として合祀されてしまっている現状があります。そこで山友会は、生前親しかった仲間とのつながりを感じていられるう、“山友会”というコミュニティによって維持されるというタイプのお墓を作ることを始めました。

この取り組みによって、家族との縁が途絶え、無縁仏となってしまうホームレスの方々が、無縁仏とならずにすみ、お亡くなりになった後も生前親しかった仲間とのつながりを感じていられることができると思います。

そして、何より無縁状態にあるホームレスの人々にも、人としての尊厳を保ちながら旅立つことができるという希望を届けたいと思っています。

無縁仏となってしまうホームレスの人々が入れるお墓を建てたい!(油井 和徳(NPO山友会)) - READYFOR?

居場所を作るという意味において、「お墓」というのは究極的なものです。「自分が生きている間はもちろん、死んだあとにも居場所があるんだ」という認識は、その人が今を人間らしく生きる上で重要な礎になると言えるでしょう。

「日雇い労働の街」から「高齢者福祉の街」へ

油井さんは「ホームレス支援はある意味『究極の課題』です。最も社会やコミュニティから排除されてしまっている…とも言えるホームレスの方々を包摂できる社会というのは、ホームレスに限らず、困難を抱えた多くの人を支えることができると考えています」とも語っていました。

民間で無料の診療所を作るところから始まり、炊き出しを通して困窮者とつながり、彼らを福祉につなぎ、安心して住める場所と、コミュニティと役割を与える。30年という時間をかけて、「山友会」はここまで進んできています。彼らが身をもって証明しているとおり、社会から孤立し、困窮した人を救うことは十分に可能なのです。

社会保障費が膨れ上がるなかで、これから日本は、困窮した高齢者を支えることがますます困難になっていくでしょう。山谷で行われている困窮者支援・高齢者福祉のあり方は、日本社会が歩むべき道を提示してくれているように感じます。

[ビッグイシュー・オンラインより]

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