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出産がクリスマスに多くお正月に少ない理由 出生数が乱高下する年末年始の出産で気を付けること - 勝村久司

 いよいよ今年も一年の区切りとなる、年の暮れやお正月が近付いてきました。しかし、この年末年始に出産を控えている人にとっては、それどころではないでしょう。家族や親族や友人に、出産を控えているお腹の大きな人はいないでしょうか?

 実は、年末年始は、日によって赤ちゃんの出生数が倍近くも乱高下する、非常に特殊な時期なのです。

医療機関が休みの日は赤ちゃんも生まれない!?

 前回のコラム「満月の日は、出産が多くなるのか?~統計で見る『赤ちゃんが生まれる日時』の不可思議」でもお示ししたとおり、日本では、半世紀近くにわたり、医療機関が休みになる休日の出生数は、平日に比べて、かなり少なくなっています。

 その中でも特に年末年始は、通常の土日に加え、大晦日とお正月の三箇日が続けて休みになるほか、12月23日には天皇誕生日、1月の第二月曜には成人の日もあります。医療機関が休みになる日がとても多い時期なのです。


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 【図1】をご覧下さい。このグラフは、2012年12月16日から、2013年1月16日までの出生数の変化を示したものです。天皇誕生日を含む年末の三連休の2日後に全国で3668人の赤ちゃんが生まれているのに対し、お正月の1月2日は、その約半分の1837人しか生まれていません。


図2 拡大画像表示


図3 拡大画像表示

 【図2】は、その1年前の2011年12月から2012年1月にかけて、【図3】は、さらに1年前の2010年12月から2011年1月にかけての出生数の変化を示したグラフです。

 これらを見ると、今年の年末は、12月23日の休日が火曜日であることから、24日、25日のクリスマス頃にピークになり、例年通り、大晦日と新年のお正月の三箇日が少なくなるような出生数の変化のグラフをほぼ予想できてしまいます。

出生数の乱高下は病院も診療所も同じ

 厚生労働省が統計を公開している中で最も新しいデータである昨年(2013年)12月の出生数をグラフにしたものが【図4】です。2013年の1年間に全国で生まれた全ての赤ちゃんの数は102万9816人で、1日あたりで平均すると約2821人になりますが、やはり平日と休日等では出生数が大きく異なり、年末に近付くほど、その格差は拡大しています。


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 この内、病院(ベッド数が20床以上の医療機関)で生まれた赤ちゃんは54万8744人で全体の53.3%、診療所(ベッド数が19床以下の医療機関)で生まれた赤ちゃんは47万1419人で全体の45.8%になり、合わせて99%以上になります。2013年12月の出生数を病院と診療所で分けたものが【図5】と【図6】です。


図5 拡大画像表示


図6 拡大画像表示

 病院も診療所もグラフの形はほとんど同じであることがわかります。

出生数の乱高下の原因は何か?

 本来の自然な出産は曜日を選ばないはずです。このようなグラフができる理由は、本来の出産(陣痛)が始まる前の平日に、何らかの医療の介入によって出産が早められているからですが、その医療介入には二種類あります。

 一つは、帝王切開の内、あらかじめ日時を決めておこなう予定帝王切開。もう一つは、子宮収縮薬(陣痛促進剤)などによって陣痛を起こさせる陣痛誘発です。

 帝王切開率は、前回のコラムで示したとおり、2011年のデータで病院は24.1%、診療所が13.6%で、その中の、緊急帝王切開の割合はそれぞれ、41.6%、36.0%ですから、あらかじめ日時を決めておこなう予定帝王切開の割合は、全ての出産の内、病院で14.1%、診療所で8.7%になります。

 少しややこしいですが、これらを計算すると、予定帝王切開のためにできる平日と休日の出生数の差は、概ね、病院では210人、診療所では160人くらいまでに収まるはずです。しかし実際は、その2倍以上、3倍近くの差ができています。

 その原因は、子宮収縮薬やメトロイリンテル(風船状のものを挿入して器械的に子宮口を広げることで陣痛を強める)や人工破膜(人工的に破水をさせて陣痛を強める)などによる分娩誘発です。少し前までは、「計画分娩」と呼ばれて、全ての妊婦に子宮収縮剤等を使用する医療機関が少なくなく、事故が多発する原因になっていると指摘されていました。そのために今も、使用する必要がない妊婦に使用して、事故に至っているケースが報告されています。

 子宮収縮薬については、1992年頃から事故の多発を受けて、その使用方法等を定めた添付文書の内容が、最大使用量をそれまでの半分以下に制限したり、筋肉注射で一気に投与することを禁じたり、他の子宮収縮薬や分娩誘発法との併用を禁じたり、など、これまでに再三大きく改訂されてきました。

 そして、さらに、2010年6月にも以下のような改訂がされたところです。

○母体及び胎児の状態を十分観察して、本剤の有益性及び危険性を考慮した上で、慎重に適応を判断すること。特に子宮破裂、頸管裂傷等は経産婦、帝王切開あるいは子宮切開術既往歴のある患者で起こりやすいので、注意すること。

○本剤の感受性は個人差が大きく、少量でも過強陣痛になる症例も報告されているので、ごく少量からの点滴より開始し、陣痛の状況により徐々に増減すること。また、精密持続点滴装置を用いて投与すること。

○患者に本剤を用いた分娩誘発、微弱陣痛の治療の必要性及び危険性を十分説明し、同意を得てから本剤を使用すること。

事故防止のために注意すべきことは?

 予定帝王切開術では、専門の麻酔科医がいるかどうか、また、術後の血栓のリスクと対応について説明されるかどうか、等が大事になってきます。説明がない場合は、納得できるまでの説明を求めるべきです。

 また、予定帝王切開がされる事例では何らかのハイリスクがある可能性が高いわけですから、新生児科医や最新の新生児蘇生法の講習を受けたスタッフがいるかどうか、輸血のリスクや対応について説明されるかどうか、等が大事です。また、診療所では、いざというときにどこに転送されるのか、などの説明も聞いておくべきでしょう。

 子宮収縮薬や、メトリイリンテル、人工破膜などは、いまだに十分な説明をせずに、行っている医療機関があることが報告されています。特に、子宮収縮薬については、その『必要性』と『重篤な副作用』について十分な説明が文書によってなされなければいけません。「妊婦さんとその家族は必見 安全なお産のために『陣痛促進剤』について知っておこう」や、「出産時の事故から身を守る 重度脳性麻痺とずさんな医療」をご覧になった上で、ぜひ、事前に妊婦本人や家族が子宮収縮薬の使用について、事前に主治医に尋ねておくことが、漫然と事故が繰り返されることを防止するためにとても重要だと思います。

【関連記事】
満月の日は、出産が多くなるのか?
妊婦さんとその家族は必見 安全なお産のために「陣痛促進剤」について知っておこう
出産時の事故から身を守る
妊婦さんとその家族は必見「子宮破裂」と「クリステレル」の事故例から分かったこと
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