記事

「ディスるな!したたかに社会を変えよ!」、若き起業家たちの手法に学べ

僕が若かった頃のことだ。「国を、社会を変えたい」という志を持つ若者がたくさんいた。彼らは、革命を目指して学生運動に燃え、ジャーナリストや物書きになる、というのが常であった。しかし、いまの若者は、昔と比べだいぶ変わってきていると、最近感じるのだ。

そのような志を持ついまの若い世代は、何が違うのか。まず彼らは、起業することで、つまりはビジネスを通して、社会を変えようと考えている。もちろん適正な収益は目指す。だが、がむしゃらに稼ぐのではなく、社会全体の利益を重視するのだ。ソーシャルビジネスである。

その先駆けは、駒崎弘樹さんだろう。彼は、NPO「フローレンス」の代表だ。フローレンスでは、一般の保育園があずかってくれない、病気になった子どもをあずかる「病児保育」をおこなっている。

なぜ、そんなことを始めたのか。ベビーシッターの会社に勤務していた駒崎さんの母から、お得意さんが会社をクビになった話を聞いたという。そのお得意さんは双子の母親で、子どもたちが熱を出したため会社を長く休んだのだ。そのために彼女は解雇された。

駒崎さんは耳を疑ったという。子どもが病気になるのは仕方ないことだ。そして、親が子どもを看病するのもまた当然のことである。この経済大国日本では、そんな当然のことが許されないのか、と。それをきっかけに、駒崎さんは「病児保育」に行きついた。さらに、いまは「待機児童」の問題にも取り組んでいる。マンションの一室や一軒家を借りて、「おうち保育園」という、小規模保育にも取り組んでいるのだ。

「僕らの世代は、社会をディスることに限界を感じているんです」
駒崎さんが僕に言った言葉だ。彼から聞いて初めて知ったが、「ディスる」とは、批判するという意味なのだそうだ。いままさに、船が沈みゆこうとしている。そんなときに「この船長、だめじゃん」とディスってもどうしようもない。それよりもトンカチと板を持って、沈まないように努力すべきだ。駒崎さんは穏やかな笑顔で語るのだ。

これまでの起業家と比べると、駒崎さんはまったく違うイメージだ。テレビや新聞は、国や政府を「ディスる」ことに心血を注いでいる。だが、駒崎さんをみていると、批判からは何も生まれない、と改めて感じるのだ。

「LINE」社長の森川亮さんは、「儲けは追わない。闘わない」と言い切った。儲けを追ったり、闘うことが目的になると、「ユーザーは気づいて離れていく」と森川さんはいうのだ。彼はスマートフォン上で、「水のように使えるサービス」を目指し、LINEを作り上げた。だからLINEは無料だ。広告もない。代わりに、ゲームやスタンプといったコンテンツをユーザーが買う。それぞれの単価は安い。だが、多くのユーザーが少しずつお金を使うことで、結果として収益が出ればよいのだ。

森川さんの発想は、学生時代にやっていたジャズからきているという。
「スポーツは負ける人がいます。でも音楽は、聴く人も演奏する人も一緒にハッピーになれる。ビジネスでも社会でも、同じことができるといいな、と」
森川さんには、勝ち組、負け組という発想はないのだ。

チームラボの猪子寿之さんは、デジタルアートで社会を変えようとしている。彼は、さまざまなデジタルアートを生み出している。そのなかでとくに僕が感激したのは、「お絵かき水族館」である。子どもたちが紙に魚の絵を描く。すると描いた魚たちが、目の前の巨大な水族館で、泳ぎ出すのだ。描いた魚に触ることもでき、エサをあげることもできる。なんと夢のある技術だろう。

猪子さんはこう述べる。
「シリコンバレーは未来を全面的に肯定しているけど、日本は未来を否定している」
猪子さんは、日本は過去に縛られているというのだ。だから、こうもいっている。
「儲からない分野でこっそり楽しく生きていく。その中で未来へのヒントを出せて、いつか日本が気づいてくれれば本望」

彼ら若い世代の起業家たちに会って、僕は大いに刺激を受けた。彼らは一見おとなしく、自己アピールも強くない。けれどじっくり話を聞いてみると、発想は強烈かつユニークだし、個性も強いのだ。ただ表に出さないだけで、真剣に社会について考え、自分のすべきことを大胆に実践している。日本の将来はまだまだ暗くない、と僕は強く思う。

あわせて読みたい

「企業経営」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    太川の会見で文春砲の価値は暴落

    中村ゆきつぐ

  2. 2

    居酒屋通う高校生への批判に疑問

    赤木智弘

  3. 3

    がん判定でAIが医師に「圧勝」

    市川衛

  4. 4

    藤井市長の判決は政治に悪影響

    ビデオニュース・ドットコム

  5. 5

    「獺祭」社長 生出演で悲痛激白

    AbemaTIMES

  6. 6

    大相撲の内輪もめが長引くワケ

    文春オンライン

  7. 7

    外食産業の鬼才「中国人見習え」

    AbemaTIMES

  8. 8

    イオンに忍び寄るAmazonの脅威

    NEWSポストセブン

  9. 9

    休むと会社が困る…は自意識過剰

    かさこ

  10. 10

    堀江氏 タクシー乗車拒否に怒り

    女性自身

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。