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価値観の多様性と、新しい働き方を提示する「Good Job展」

「インクルージョン」。あなたは、この単語を聞いたことがありますか?

「インクルーシブ」や「インクルージョン」といった言葉は「様々なものを包み込むこと」を意味します。例えば、「ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)」と言えば、「すべての人が孤立・排除されたりしないよう配慮・援護し、社会の構成員として皆で支え合う社会」という意味になります。

昨今の社会的な流れでいえば、内閣府などが押し進める「女性の活躍推進」(女性活用)や、経済産業省などが主導する「ダイバーシティ」(多様性)が、近い概念と言えるでしょう。

しかしながら、企業の中で働くビジネスパーソンにおいて、どこか福祉的なイメージのあるインクルーシブな世界は、とっつきにくいというのが現実だと思います。

そんな疑問をもっていたのですが、先日、渋谷ヒカリエで行なわれた展示会「Good Job展」で、様々な事例を見てヒントを得てきましたのでまとめます。

そもそも「Good Job展」とは、障害のある人たちとともに豊かな生活を実現するためのプロダクトや、新しいはたらき方を紹介する展示会。アート、ビジネス、福祉の分野を超えて、新たな出会いと仕事の融合の場でもあります。

展示品(一部抜粋)

○[ステア]障害者という言葉をなくすために全ての人々が旋風を巻き起こすきっかけマガジン(株式会社LITALICO)




○Tabio × H TOKYO × Able Art Company(タビオ株式会社)






○aiai esprimo × taisetsu product(たいせつプロダクト)






○ぽんめのこ(ぽんめのこ)







Good Job FIlm

「“働き方”に人を合わせる」ではなく「“人”に働き方を合わせる」


今回は、主催団体である、一般財団法人たんぽぽの家/常務理事の森下静香さんにインタビューさせていただきました。

ーー「Good Job展」を始めたきっかけは?

森下静香さん(以下、森下):「Good Job展」は、奈良に拠点を置く、たんぽぽの家が主催しています。私たちは40年来、障害のある方たちの、アート活動支援などを行っています。障害のある方たちが社会参加をしていくお手伝いです。

1996年から行っているトヨタ協賛の「トヨタ・エイブルアート・フォーラム」は7年間・63都市でセミナーを開催したり、日本における障害のある方のアート活動活発化に貢献できたと思っています。

様々な活動をしてきたので、次のステップとして、それをアート(芸術)としてだけではなく仕事にもしていきたいという想いがありました。

ーープロダクトして作品を売るビジネスということですか?

森下:もちろん、それもあります。アート作品として美術館に収められたりするのは、それはそれで価値があるのですが、もっと社会に活かすための接点を模索すると、結局仕事としてどこまでできるか、という点が出てきます。こういった視点の可能性を今感じています。

アート作品を売るだけではなく、企業やデザイナーなどの方々と一緒にプロダクトを作ることで、新しい仕事を社会に提案できるのではないでしょうか。自分1人ではなく皆で作っていく、そうした方向性を考慮し、商品開発を企業としたりしています。

ですので、今回の「Good Job展」では、全国で広がってきたそういったコラボレーションした作品を一堂に会して展示しようと。企業の方、福祉関係者、デザイナーの方などに見てもらい、何かを感じていってもらえれば、と思っています。

こういった活動を知ってもらい、来てくれた方が新しい何らかのアクションを起こしてくれればうれしいです。昨年度は3都市、今年度は、北海道、東京、愛知、福岡、兵庫の全国5都市で開催することになっています。

ーー企業と実際にコラボレーションした事例はありますか?

森下:靴下メーカーの「Tabio 」さんと一緒に靴下のデザインをさせていただきました。2010年からこれまで100種類上の商品デザインをしていまして、おかげさまで毎回ほぼ完売しています。

売上が見込めるからこそ継続できる、というのはあると思います。また、企業側にも、社会に開かれた会社であるというブランドイメージの向上といったメリットがあると思います。

他には、化粧品メーカーの「HABA 」さんとの事例はユニークかもしれません。最初は、HABAさんの社会貢献活動的なもので、冊子の表紙にアート作品の提供をしたのがきっかけだったと思います。

その後、活動が発展していき、知的障害・発達障害のある方を対象としたメイク教室を行ったりしました。その後も単発で終わらせることなく、2009年から累計で50回以上開催しています。

障害のある方は、普段、メイクやスキンケアをしない(できない)場合も多く、とても喜んでくれます。あと企業側のスタッフの方には、普段あまり接しない方々とのコミュニケーションを通じ、会話のスキルアップや社会貢献のあり方を考えるきっかけになっているそうです。人材教育の一環ですね。

ーー今後、企業にこうなってほしいという希望はありますか?

森下:企業の現場ですぐに福祉がどうこう、というのは難しいかもしれませんが、例えば、メーカー系企業ならば、今まで開発したことがなかったアート・デザインを取り入れたものを作るとか、伝統産業・伝統工芸など分野の企業で言えば、担い手としての障害のある方々の可能性というのも十分にあると思っています。

また、私たちの活動を通じて、福祉に今まで興味がなかったビジネスパーソンの方にも、「インクルーシブ」(包括的な)という考え方をぜひ知ってもらいたいです。

日本のワークスタイルは「“働き方”に人を合わせる」という考えが多いと思いますが、「“人”に働き方を合わせる」という考え方も重要だと思います。組織の柔軟性というか。

これは障害のある人だけに限らず、高齢者であれ、女性であれ、外国人であれ、多様性を認める文化形成につながると思っています。そういった価値観こそが、豊な社会を形成していくのではないでしょうか。

ーー勉強になりました。ありがとうございました。

取材を終えて

福祉。多くのビジネスパーソンにとって、この言葉が日常生活の延長線上にないという人も多いでしょう。しかし、今回の森下さんがおっしゃっていたように、「インクルーシブ」(包括的な)な働き方やプロダクトは数多く日本に存在します。

社会には、多様な考え方や多様な人がいるということをまずは知ることが重要だと思います。企業内でも、インクルーシブやダイバーシティといった視点から、まずは女性活用を始めようという企業は多いと思いますが、人材活用という面でもっと広い視野を持つ必要があるでしょう。

もちろん、業種・業態によっては、障害のある方には困難な業務もあるとは思います。無理に障害者雇用数を増やしても、離職率が高ければ当然意味はありません。

また、視点という点では、誰もがいつか障害を持つ可能性があるということです。障害者を排除することで、自分の将来を排除する可能性があると思えば、多様性の考えが無視できないのはご理解いただけると思います。

いきなりコラボレーションというのは難しいかもしれませんが、まずは、柔軟な人事制度を作る、従業員としてもサプライヤーとしても障害者を排除しないなど、できることから企業が動いていけばいいですね。

GoodJob!展2014-2015 
たんぽぽの家 

【取材:2014年11月、協力:日本財団】

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