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刑務所育ちのプログラマーを世に出そう!

ということで、刑務所内で受刑者向けにコンピュータープログラミング講座のクラスを始めたのは、米カリフォルニア州のサンクエンティンSan Quentin)刑務所です。

この刑務所のことはちょうど1年前にも紹介しました。世界でも珍しい受刑者自身による刑務所新聞「San Quentin News」(20ページ、1万1500部)を発行し、州内17の刑務所に配達されているという話。

同刑務所は全米最古、最大級だそうで、学位の取れる大学まであるというユニークな存在ですが、今度は、サンフランシスコで、コンピュータープログラミングのboot camp(短期集中講座)を行っているHack Reactorの協力を得て、今年10月から始まっています。

Code7370ー7370は標準産業分類のコンピュータープログラミングのコード番号ーと名付けられてこの新プロジェクトには18人が選ばれ、週4日、朝の6時半から午後2時半まで8時間、6か月に亘って、みっちり授業を受けるそうです。

この刑務所の受刑者は重罪が殆どで、長期間、勾留されていますから、インターネット革命とは縁遠く、グーグル検索やフェィスブックへの投稿とも無縁な人ばかり。18人中6人はコンピューターに触ったこともないそうです。授業は、マウスやキーボードの使い方から始めることになったとか。

そこで、通常なら3ヶ月コースで1万7千ドルもするHack Reactorの講座を、6ヶ月かけて行うことになったようです。授業は、Hack Reactorの教務主任が本校からGoogle Hangoutを使って、教室正面のスクリーンに登場して進め、教室にはHack Reactorのインストラクター二人が個別指導にあたるという充実した体制でJavascript、CSS、HTMLなどを学びます。

コース終了は来年4月になりますが、受講者がそのまま出所できるわけではありません。出所までに、折角、身につけたスキルをどう維持し、活用するかが課題になりますが、同刑務所では所内カンパニーを立ち上げて外部から比較的容易なプログラミングの仕事を受注して行く方針だとか。

co-Existの記事によると、その時間単価は、世間並みの40−70ドルほどを想定し、その40%が受刑者に配分されるようだと書いています。USA Todayによれば、刑務所内の仕事は自動車のナンバープレートや州政府関連庁舎向けの家具作りなどだそうですから、それよりはずっと割がいいことになりそうです。

ただし、出所したあとに、その経験を活かして6ケタ、つまり10万ドル以上という美味しいプログラマーの仕事につけるかどうかは全く未知数です。

この点で辛辣なのはArs Technicaの見方です。こう書いています。「Code7370の目標は高邁だが、幼児のころからコンピューターを操ってきた若いプログラマーとの競争になる。そういう手強い競争相手とどう差別化できるのか」

ただし、受講者が前向きなことも伝えています。30年近く前の殺人で勾留されていて、2016年に出所するという男性は言います。「7370で得たことは私の人生の軌道を変えるだろう。この機会を得たアドバンテージを活かして一生懸命働くつもりだ。出所が待ち遠しい。この気持、言葉じゃ言い表せないよ」

また、co-Existの記事でも、釈放まで3年半という男性の言を伝えています。「(高望みせず)junior developerになりたい。3人の子どもたちはクールだって喜んでくれてるよ」

こうした、受刑者を前向きにさせるプロジェクトを仕掛けたのは、シリコンバレーで成功を収めたベンチャーキャピタリストで、シリコンバレー流で受刑者の社会復帰を助けようというNPO「The Last Mile」を興した Chris Redlitz氏とその妻 Beverly Parentiさん。

ここで成功すれば、州内の他の刑務所にもこのプロジェクトを広めたということです。また、シリコンバレーでの人脈を活かして、7370コースを受講した出所者には有給のインターンシップをスタートアップ企業に紹介するプランもあるようです。

なんだか、入る刑務所によって運不運があるような気がしないでもないですが、いずれカリフォルニア州を超えて全米に広がるかも知れません。日本の刑務所内で作られる家具の展示会を見たことがあって、出来栄えに感心しましたが、家具作りなどだけでなく、日本でも、The Last Mileのような仕掛人が出てくれば、もっと素晴らしいのですが。

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