記事

経済統計の数字だけで経済を語るなかれ~20年遡って修正されるGDP統計

またまた予想外の下方修正となりました。
「内閣府が8日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)の改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比年率1.9%減と、11月に発表した速報値の1.6%減から下方修正となった。速報値の推定よりも企業の設備投資や公共投資が少なかった。マイナス成長は2四半期連続で、前期からの減少幅が大きくなり、4月の消費増税後の景気のもたつきが一段と鮮明になった」(8日付日本経済新聞「GDP1.9%減 下方修正」)
今回「民間予測の平均値では今回の改定値が年率0.5%減に上方修正されると見られていた」実質GDPの2次速報値が下方修正されたのは、「速報値の推定よりも企業の設備投資や公共投資が少なかった」からだと報じられています。

確かに「公共投資(公的固定資本形成)」は1次速報の24兆33億円から22兆7630億円へと1兆2403億円下方修正されています。しかし、「設備投資(民間企業設備)」は「実質で前期比0.4%減で速報値から0.2ポイント下がった」(同日本経済新聞)にも関らず、金額ベースでは71兆2462億円と、1次速報の70兆5986億円から6476億円上方修正されています。

「設備投資」が1次速報から「0.2%下方修正された」にもかかわらず、実額ベースでは増加しているという捻れが生じたのは、GDP統計が過去にさかのぼって修正されたからです。8日に発表されたGDP2次速報と1次速報を比較してみると直近の2014年7-9月期だけでなく、同じ「平成17年基準」で算出されている1994年1-3月期まで全ての統計結果が修正されています。

GDP修正額

今回「設備投資」が1次速報値から6476億円上方修正されながらも前期比で0.4%減となったのは、前期4-6月期の「設備投資」が7-9月期の6476億円を上回る7618億円上方修正されたからです。

政府は「景気回復基調に変化はない」と繰り返していますが、第2次安倍政権誕生前の2012年10-12月期と比較すると、実質GDPの増加額は1次速報の8兆6389億円から7兆3863億円まで、1兆2526億円の下方修正となり、実質GDPベースでのアベノミクスの効果は、駆け込み需要のあった1-3月期の3.71%から1.43%まで急速に萎んで来ています。

2012年10-12月期との比較でアベノミクス効果が萎みつつあるなかで、今回の改定でアベノミクス効果を下支えしたのは「設備投資」と「民間在庫品増加」の2項目です。「民間ではGDP統計が設備投資や在庫の増減で改定されやすく、政府の推計にも問題があるとの指摘が出ている」(同日本経済新聞)とも報じられているなかで、民間の見通しの誤りを小さくしてくれたのは「設備投資」と「在庫の増減」だというのは何とも皮肉なことです。

日本のGDP統計には「確定値」というものは存在しません。公表されるのは「1次速報」と「2次速報」ですが、その後は四半期統計が公表されるたびに修正されていきます。ここが、日本の10倍の人口とドルベースで2倍の経済規模でありながら、日本や米国よりも早く一発で「確定値」を出す「世界第二の経済大国」との大きな違いです。「一発で確定値を出す国」と「20年前の統計まで遡って毎回修正される国」のどちらがいいのかは定かではありませんが。

今回の2次速報において実質GDP実額の修正幅が最も大きかったのは、偶然かもしれませんがアベノミクスがスタートした2013年1-3月期で、GDP総額は2兆6000億円ほど上方修正されています。一方、アベノミクス2本目の矢である「機動的な財政政策」に伴う「公共投資」は、アベノミクスが本格化した2013年以降下方修正幅が大きくなっており、7-9月期の下方修正額は1兆2400億円になって来ています。

今回最も修正幅が大きかった2013年1-3月期GDPの1次速報が発表された2013年5月16日以降どのように修正されて来たかのかその変遷を見てみると、今回の修正幅が2.6兆円と際立って大きかったことがわかります。時間の経過と共に修正を要する新しい情報は減っていくはずのなかで、1年半前のGDP統計に突然大きな修正がなされたことには違和感を覚えます。

2013-1QGDP.jpg

GDP統計の算出方法は公開されていませんから、どうしてこのような大きな修正が加えられたのか、その理由は定かではありません。言えることは、推計が難しく、何時どのような理由で修正が加えられるかが予想出来ないGDP統計で景気状況を判断するのは危険だということです。日本もそろそろ表面的な経済統計の数字だけで景気を語るのはやめ、米国のように「経済の質」に目を向ける必要がありそうです。

あわせて読みたい

「GDP」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    クロ現「日本の防衛」報道に驚き

    中村ゆきつぐ

  2. 2

    テレビの報道が信頼されないワケ

    メディアゴン

  3. 3

    麻央さんに関する記事表題に苦言

    中村ゆきつぐ

  4. 4

    加計で総理批判する国民に疑問

    青山社中筆頭代表 朝比奈一郎

  5. 5

    笹子トンネル事故に"新事実"判明

    週刊金曜日編集部

  6. 6

    共産党と公明党「因縁」の歴史

    蓬莱藤乃

  7. 7

    石破氏「暴言は人間性の問題」

    石破茂

  8. 8

    田原氏語る共謀罪強行採決の理由

    田原総一朗

  9. 9

    菅元総理が維新の二の舞と苦言

    菅直人

  10. 10

    小林麻央 2年8ヶ月ガンとの戦い

    渡邉裕二

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDまたはYahoo!IDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。