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人口ボーナス(配当)から人口オーナス(重荷)に転換した日本

日本の人口は、5年毎に行われる「国勢調査」によって年齢・性別・居住地などについて詳しく調査されます。通常、人口統計上の(demographic)生産年齢人口(労働人口:working population)は15~64歳とされていて、それ以外を従属人口(dependent population)として、年齢階層3区分の人口集計が行われます。そして、生産年齢人口100に対する従属人口の割合を従属人口指数とし、生産年齢人口の扶養負担の程度を示します。しかし、現代日本の実情に踏まえるとこの年齢階層3区分にはかなりの違和感があります。そこで、別に 0~19歳 20~64歳 65~74歳 75歳以上 の年齢階層4区分の人口集計も行われています。これは<未成年><成人><前期高齢者><後期高齢者>に相当します。<成人>以外を従属人口と区別するために<扶養人口>と呼ぶことにして、<成人人口>と<成人1人当り扶養人口(人)>の推移を見ていくことにします。

まず、過去60年(1950~2010)の国勢調査による5年毎の年齢4階層別人口の推移を<成人人口>を一番下にして重ね棒グラフにし、<成人1人当り扶養人口(人)>を折れ線グラフ(右目盛り)にしてその上に重ねてみました。

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1950年の<未成年人口>は1931年から1950年までに生まれた人たちで、いわゆる「団塊の世代」を含んで38百万人もいたので、日本の歴史の中で<未成年人口>が最大になっていました。<成人人口>は、1886年から1930年までに生まれた人たちで、<未成年人口>を少し上回るだけの41百万人に過ぎませんでした。そして<高齢者人口>は、1885年以前に生まれた人たちで、僅か4百万人しかいませんでした。これはそのころの平均寿命が現在よりもはるかに低かったからです。それでも<未成年人口>が非常に大きかったので、<成人1人当たり扶養人口>は1.02人というきわめて高い水準にありました。この頃はもっぱら沢山の子供を家族が扶養していたわけです。

<成人1人当たり扶養人口>は、1950年の1.02人から20年後の1970年には0.66人に急速に小さくなりました。この20年間は概ね「高度経済成長」時代に重なります。人口増加に伴って労働人口増加が従属人口増加を上回ることによって経済成長が加速されることを「人口ボーナス(demographic bonus)」と呼びます。これは、経済成長している国の人口動態がこのような状態になった時に経済成長がより加速(上乗せ)される傾向にあるので「人口ボーナス(配当)」と呼んでいるのであって、経済が成長していない国でも人口が増えれば経済成長が実現されるという意味ではありません。

1985年から1995年の10年間にも、<成人1人当たり扶養人口>は少しだけ小さくなりました。しかし、これは少子化による<未成年人口>の減少が大きくなってきたためで、その間の経済成長に「人口ボーナス(配当)」が働いたとは必ずしもいえません。

2000年頃に<成人人口>は79百万人でピークアウトして反転減少に転じました。少子化によって<未成年人口>も減少を続けましたが、<高齢者人口>の増加ピッチがますます速くなってきたので、1995年頃に<成人1人当たり扶養人口>はボトムに達して反転上昇に転じました。それでも日本の総人口は僅かに増加を続けて2010年に128百万人でピークアウトして反転減少に転じました。

さて、以上、過去60年の日本の人口動態を見てきましたが、今後の50年間(2010-2060)はどう変わっていくのでしょうか。国立社会保障・人口問題研究所は、5年毎に行われる国勢調査に基づいて将来推計人口・世帯数を5年毎に発表しています。最新の推計人口はやや古いですが、2010年の国勢調査に基づいて平成24(2012)年1月に発表されたものです。その出生中位(死亡中位)推計による年齢階層4区分の推計データを同じようにグラフに描いてみました。こちらは国勢調査とは違って5年毎ではなく毎年に細かくなっています。

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人口の増減には、出生と死亡の差による自然増減と流出と流入の差による社会増減があります。2012年人口推計では、社会増減である国際人口移動(migration:流出・流入差)は過去のトレンドが続くという単一の仮定を採用しています。日本の国際人口移動の実績はきわめて小さかったので、この推計人口はほぼ自然増減(出生・死亡差)のみによって変動する推計になっています。

2030年以前と以後で<成人人口>の色を変えてあるのは、2030年までに<成人人口>に加わる人は2010年にすでに生まれている人なので2011年以降の出生率の変化の影響は受けないからです。同じく、2060年までに<高齢者人口>に加わる人も2010年にすでに生まれている人だけなので2011年以降の出生率の変化の影響は受けません。したがって、2011年以降の出生率の変化の影響を受けるのは、<未成年人口>と2031年以降の<成人人口>だけになります。つまり、人口の自然増減推計は20年くらい先まではほとんどハズレることはないのです。

2015年と2025年の<高齢者人口>は色を変えて強調してあります。2015年は歴史上最大となっていた1950年の<未成年人口>(38百万人)の全てが「年金受給開始年齢」である65歳以上<前期高齢者>になって財政負担が増加するので、「2015年問題」と呼ばれます。また、2025年はその世代が「後期高齢者医療制度」適用年齢の75歳以上<後期高齢者>になって更に財政負担が増加するので、「2025年問題」と呼ばれます。

<成人1人当たり扶養人口>は、① 2012年から2016年ころと ② 2033年から2043年ころに上昇が少し急になっていますので、そこを点線で囲って強調してあります。これは1950年の<未成年人口>とその子供たちがそれぞれ65歳以上高齢者になるからです。そして、2010年の<成人人口>76百万人から「年率1.25%減少線」を目安線として加えてあります。出生率が中位推計どおりに推移すると、2041年頃に<成人1人当たり扶養人口>は1人を上回り<成人人口>と<扶養人口>は逆転します。もし、出生率がそれより高くなると、まず<未成年人口>が推計よりも増加し、それが<成人人口>になっていくには20年を要しますから、むしろ「逆転」は2040年よりも前にシフトすることになります。

以上、1950年から2040年ころまでのおよそ90年間の年齢階層4区分の人口推移と<成人1人当たり扶養人口>の推移を見てきました。要約すると、<成人人口>は、1950年の41百万人から増加を続けて50年後の2000年の78百万人でピークアウトし、その後は概ね年率1.25%の減少を続けて40年後の2040年には54百万人にまで減少します。また、<成人1人当たり扶養人口>は、1950年の1.02人から低下を続けて45年後の1995年の0.60人でボトムをうち、その後は上昇に転じて45年後の2040年には0.99人にまで上昇します。1950年生まれの人はこの90年間の激しい人口変動の浮き沈みを身を以てほとんど全部体験することになります。

<成人人口>の増加と<成人1人当たり扶養人口>の低下は「人口ボーナス(配当)」として経済成長を加速後押ししたことはたぶん間違いありません。その逆に、<成人人口>の減少と<成人1人当たり扶養人口>の上昇に対しては、「人口オーナス(onus:重荷)」という語呂合わせのような名前がつけられています。日本が「人口ボーナス」基調から「人口オーナス」基調の方向に転換したのは1995年でした。2012年から2016年くらいの間にとくに「人口オーナス」の進行が加速します。1997年から17年も名目GDPが横這い低迷を続けていて、どうしても持続的で安定的な成長軌道に乗ることが出来ないでいるのは、やはり「人口オーナス(重荷)」が重すぎるためではないかという気がしてきます。しかも、人口動態の転換から20年が経つにもかかわらず、有効な対策が講じられていないことは非常に心配になります。

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